陰キャの俺が席替えでS級美少女に囲まれたら秘密の関係が始まった。

二章「秘密を知って動き出す」 ②

「だってあい、マジでおごってもらえるとは思ってなかったから。あんなの口約束だしにされちゃうかなーって」


 おいおい、全然信用されてないな俺。

 いくらいんキャだとはいえ、俺は絶対に約束を守る人間なのに。


「てか、さっきから思ってたんだけどー」

「ん?」

「なんかあいたち見られてない?」


 ふと周りを見回すと、確かにじやつかん男子たちから殺気としつのこもったまなしが俺に向けられている……まぁ、こうなるよな。

 やまは自覚がないみたいだが、やまあいにはアイドル的人気があり、この高校内に多くのファンがいる。

 そんなアイドルがいんキャの俺と向かい合って飯食ってたらスキャンダルどころじゃない。

 グッバイ、俺のへいおんなスクールライフ……。


「おーいりよう? 聞いてる?」

「えっ! ひゃ、ひゃいっ!?」


 俺が周りに気を取られていると、やまから話しかけられる。


「もぉー、無視とかサイテー」

「ご、ごめんなさい。許してください何でもしますから」

「そんなガチ謝りしなくても……ま、いいや」


 やまはスプーンでごうかいにカレーを食べながら話を始める。


「今朝の話なんだけど」

「う、うん」

りようと何か話してなかった?」


 げっ……あれ見られてたのか。

 やまは止まることなく口の中にカツカレーをほおり、しやくしてゴクッと飲み込むたびに口を開く。


「話してたというか、軽く会話をわしただけというか……でもなんでそんなこと聞くの?」

「ああ、りようって1年のころは他の組だった? なら知らなくても仕方ないか」


 ど、どういう意味か全く分からない。


ってね、1年のころから男子とはめつしやべらないの」

「えっ? そう、なのか?」

「うん、だからりようと話してるとこ見かけてびっくりしたー」


 あのいちが男子とはめつに話さないなんて……。

 いちはギャルだしつうかれとかいると思っていたから意外だ。


とは何の話してたの? もしかしてムフフな話だったりー?」

ちがう! 俺はいちに『覚えたから』と言われて……」

に? どゆこと?」


 それはこっちが聞きたいんだが……。


「うーん、覚えたからって何だろうね?」

「俺もできれば知りたいけど……ちょっと……」


 ダウナーギャルのいちいんキャの俺が話しかけるのはあまりにハードルが高すぎる。


「それならの親友であるあいから聞いてあげてもいいけど?」

「ほんとか?」

「あ、でもタンマ! やっぱそれじゃおもしろくないから」


 やまはカツカレーを完食すると、手を合わせながら俺の方にまたお得意のウインクをする。


「今から特別に教えてあげるから、りようからに直接聞いてみなよ」

「い、イイコト……!? イイコトって、一体……?」


 なまつばを飲み込みながらきんちようしたおもちで聞き返す。


ってさ、高校だと基本、あいたちといつしよにいるでしょ?」

「え? ああ、そういえばそうかも」

「それだと朝のことを聞きたいりようにとっては不都合だよね? だってあいたちが近くにいたら、りようは朝の話を切り出しづらいじゃん? あいちゃんがとなりにいたら、りようと話しにくいっしょ?」

「そ、それは……確かに」

「そこで! りようと話すためにも、が一人でよく行くあいが教えたげる。りようはそこに行ってに直接聞いてみたら?」


 なるほど、イイコトってそういう。

 仮にそれを聞いたとして、最底辺いんキャの俺がギャルと一対一で話すのはハードル高いって。

 イイコトっていうから期待したのに……こんなことならいちのスリーサイズ教えてくれよ。


「あー! 話すのは無理って顔してるー!」

「だって現に無理だし」

りようは朝言われた『覚えたから』の意味が知りたいんでしょ? それならと一対一で話すしかないよ」


 それはやまの言う通りかもしれないけど……やっぱ話せる自信がない。


りようさぁ、せっかく近くの席になったんだし、みんなで仲良くしよーよ」

「で、でも。俺はやまたちみたいな存在とは真逆で」

「あのね、りようはどう思ってるか分からないけどさ、少なくてもあいは昨日、りようと話してりようと仲良くなりたいって思ったよ?」


 やまはグイッと俺の方に顔を急接近させながら言う。


「だからにもできればりようと仲良くしてしいっていうか……とにかく険悪な関係には絶対になってしくない、から」


 やまの言葉が俺に重くのしかかる。

 あのやまがそんなことを気にしていたなんて……。


「それならなおさらやまが俺といちの間に入ってくれればいいんじゃ」

「それはつまんないからイヤ」

「は、はあ?」

「さありよう! と仲良し大作戦するよ!」


 ええ……なんか、やまに遊ばれている気がするのは俺だけだろうか。


☆☆


 その日の放課後。

 俺は電車に乗ってやまに教えてもらったとうちやくする。

 ここが……いちが一人でいるというとなりまちのゲーセンか。


『最近は水曜日にとなりまちのゲーセンに一人で通ってるみたいでね? 水曜日はいつもノリが悪いの!』


 やまからいちが一人になる場所タイミングを聞いた俺は、放課後にとなりまちの駅まで電車で移動した。

 そこまでしていちから放たれた言葉の意味を知りたいわけではないが、俺といちがギクシャクした関係だとやまいやらしい。