陰キャの俺が席替えでS級美少女に囲まれたら秘密の関係が始まった。

二章「秘密を知って動き出す」 ③

 そりゃ俺としても、このままいちきらわれたままでは席でごこが悪いからはっきりさせたい気持ちもあるが……まさかやまのやつ、俺にいこと言っていちが一人で何やっているのかていさつさせようとしてるとか……?

 いや、それはさすがに俺の考えすぎか?

 半信半疑になりながも、俺はとなりまちの駅の商業せつ内にある大きめのゲームセンターに足を進める。

 ここのゲーセンは俺が小学生のころ、母が毎週セパタクローをやるためにとなりまちまで通っていたことがあり、それについていってはよく遊んでいたおくがある思い出の場所だ。

 何かと思い出深いゲーセン……ここにいちがいるなら早いところ捜して目的を果たそう。

 ま、ギャルがゲーセンに来る理由なんてどうせプリクラとかだろ?

 そんなへんけんを持ちながら、俺はまずプリクラのエリアへと向かう。


「おお、ここが……プリクラコーナー」


 最近はコスプレをしながらる『コスプリ』なるものが女子の間ではっているらしく、プリクラコーナーにはプリクラだけでなくコスプレしようのレンタルコーナーもあった。

 プリクラのコーナーに入っていくのはかみの色が明るいギャルJKばかり。

 いんキャの俺にとっては場ちがい感がはんない。でも、いちはここにいるかも……。

 俺はギラギラと目を光らせながら、しばらくプリクラコーナーの前で出待ちしていたが、いちは一向に姿を見せない。

 そろそろつうに怪しいやつだと思われてもおかしくないので、一度その場からはなれることにする。

 でも、よく考えたらプリクラを一人で楽しむわけないか……。

 それにプリクラなら、くろやまさそって行くだろうし。

 そう考えると、いちが一人でゲーセンに来ているのは、があるからこそなんじゃないかと思えてくる。


「はぁ……分かんねえ」


 そもそも何で俺がこんなに考えなきゃいけないんだよ。

 あー、もういい。全部どうでも良くなってきた。

 明日、やまにはいなかったと言っておこう。

 でもせっかく160円の電車賃をはらってとなりまちまで来たんだ、遊んでから帰るとするか。

 俺はそのまま近くにあったUFOキャッチャーのエリアへと移動する。


「そういやSNSでウマJKの新作フィギュアがにゆうしたとか言ってたような……」


 せっかくならそのフィギュアをってから家に帰ることに──っ?

 UFOキャッチャーのコーナーの角を曲がろうとしたそのせつ、曲がり角の方向に見覚えのある女子生徒の姿が目に入った。

 明るいくりいろかみやまに負けていない豊かな胸とスカートからかいえるでっかい太もも。

 あの胸と太ももはちがいない。いちだ。

 どうやらいちはUFOキャッチャーをやっていたようだ。

 一人でゲーセン来てUFOキャッチャーって……いんキャとやってること変わらんぞ。

 俺は別のUFOキャッチャーのかげで身をかくしながら彼女の様子をうかがう。


「……ちっ。全然くいかない」


 どうやらかなり苦戦しているようだ。

 しばらくすると、いちさいから1000円札を出してりようがえ機の方へ行ってしまう。

 俺が見つけてからも10回近くやってるし、あそこまでぎ込むくらい何がしいんだ?

 いちりようがえで退いたことで、やっていたUFOキャッチャーの景品が見え……。

 は? うそだろ……? なんで……ギャルのいちが、これを。

 それはあまりにもギャルに似つかわしくない、

 長方形の黄色い箱に女の子のキャラが印刷されており、その箱には──『ちようぜつばくにゆう美女アニメ・ちちきゅんプライズ限定美少女フィギュア』と書かれていた。


「ばっ……ばば、ばくにゆう!?」


 ちようぜつばくにゆう美女アニメ・ちちきゅんは土曜深夜にやってるしんしゆくじよ向けの激エロR17・9999のアニメであり、常に水着姿の美少女たちが国の存亡をかけてまんばくにゆうなぐいをするというカオスな内容で、えんばん売り上げは令和最高を記録した名作(意味深)だ。

 どうしてこんな、大きいお友達しか興味のない激エロフィギュアの台で、いちはUFOキャッチャーをやっていたんだ?

 まさか……いちは、このフィギュアを転売しようとしていた?

 確かにちちきゅんは昨年の夏アニメクールでけんにぎったちよう人気(エロ)アニメだ。

 しかし作品の人気と関係なくプライズのフィギュアなんて転売したところでせいぜい1000円から2000円くらいだろう。

 それに対していちは、すでに3000円近くこの台にぎ込んでいる。

 利益にならないのはいちもくりようぜんなのに、果たして意味があるのだろうか。

 全く理由が分からない。こんな水着のばくにゆうきんぱつ美女のフィギュアを手に入れたところで、いちに何のメリットが──。


「ちょいあのさ。そこはあたしがやってた台……でって」


 前のめりになるくらいUFOキャッチャーの中をのぞき込んでいた俺の真横には──。


「「あ」」


 生まれてこの方十何年。

 これまでも色んなことがあったが、ちがいなく人生で一番気まずいことになった。

 ゲーセンのさわがしさが一気に静まる。

 周りのそうおんが聞こえないくらい、俺はこのじようきようきもを冷やした。

 となりにいるのは、俺の目の前にあるばくにゆうフィギュアにも負けずおとらずの豊満なむなもとと太もものムッチリ感を持つ美少女。


「なんで、あんた……」


 オタクとギャルは〝水と油〟の関係であり、たがいに交わることがないはずだった。

 それなのにオタクは、『ちちきゅん』のばくにゆう美少女フィギュアを前にしてはち合わせてしまったのだ。

 いや、はち合わせただけならまだ救いはあったはずだ。

 オタクの俺がこのフィギュアをねらっていたというじようきようなら、こうしていちはち合わせても『オタクまじキモい』と言われて終わりだっただろう。

 だがいちは、俺を見かけて開口一番に『そこはあたしがやってた台』と自白してしまった。