営業課の美人同期とご飯を食べるだけの日常
営業課の美人同期とご飯を食べるだけの日常 ④
おい、俺の足を蹴るな秋津。おおかたサバの
ゲシゲシと蹴られる足を無視しながらサバの
魚特有の匂いは
白米を口に運ぶ手が止まらない。途中三人の話を聞いて黙々と食べていたら、視線を感じてそちらを向く。いつものように優しく笑った秋津がそこにはいた。
どうやら後輩ズは席を外しているようだ。
「あんた、ほんと
そう言うと彼女は俺の皿にだし巻き玉子を一切れ置き、交換条件とばかりにサバを奪っていく。
固い玉子焼きではなく、
「ん〜やっぱりサバも
「知らん。営業課で打ち上げにでも行ってくれ。俺たちはお前たちのおかげで、もといお前たちのせいで無限残業編が始まるんだから」
「わかってるわよ。ごめんって」
いつになく素直だな。こういう時、こいつは緊張している。まぁ明日社運をかけた大口案件があるんだから、さすがのエース様も緊張するか。
励ましの言葉を
「わかってるから、ありがとう」
今回は俺の負けだな。こいつにどきっとさせられるのももう慣れたもんだ。まぁ慣れないから心臓が早鐘を打っている訳だが。
◆ ◇ ◆ ◇
一夜明けて金曜日、いやもう実は土曜に差し掛かっているんだが。なぜこんな時間にオフィスにいるかと言えば……本日の大口案件は2件とも受託となったからだ。めでたい! いや俺の
後輩二人とお子さんが熱を出した相澤さんは帰宅、俺と先輩の小峰さんだけはこの無駄に広い事務部屋でひたすらに書類を
後輩には基本的に事務仕事を任せており、俺と小峰さんは本来企画担当である。しかし、こういうイレギュラーな際は事務にかかりっきりになるのである。
まぁ俺担当のイベントは来期だし今はまだ耐えている。下準備もとい根回しは済んでいるしな。
「鹿見ぃ〜さすがに疲れた、休憩行こうや」
伸びをしながら小峰さんが話しかけてくる。事務エリアから二つ階を隔てた休憩スペースへと向かう。実はうちの会社はフリーアドレス制を導入しており、社内に散りばめられたフリースペースでゆったりと仕事をする社員も少なくない。
だが事務に関しては営業から急ぎの案件を振られたりするため、すぐに捕まる場所にいて欲しいとの願いから同じ場所に集まって仕事をしている。社内チャットの意義が消失している。どんだけ割を食わされるんだ俺たちは。
通りかかった経理課も電気がついている。まぁ彼らも俺たちと同じ境遇だよな……なんだったら決算期や期末は泊まり込みも普通らしいし。
ガコンッと自販機から缶コーヒーが吐き出される。100円でリフレッシュできるなら安いものだ、とプルタブをあけて喉に液体を流し込む。
「はぁ〜〜〜〜」
張っていた
「来週も今日の処理が続きそうですね」
「そうだな……今週よりはマシだと信じようぜ」
「じゃあ来週に飲み会セッティングしますか。お子さんいるし来られないとは思いますが、相澤さんにも声掛けときますね」
「すまんな、頼むわ」
何食べようかと話しながら事務部屋に戻るが、二人とももう頭が正常に働いていない。
さて、ただいまの時刻は4時28分。まだまだ始発は動かない。机にだらしなく
そういえば営業課は今日(昨日)は飲み会だっけか。会社を挙げての豪華なお祝い会(経費持ち)は別にするが、とりあえずの祝杯をあげたようだ。あいつちゃんと自分の家に帰ってるよな……酔うと俺の部屋に転がり込むんだよな。
なんか21時くらいにスマホが鳴っていた気もするがもう記憶の
なんとか週末は休めるところまで仕事を進めると、パタンとPCを閉じる。時刻は6時と14分。電車ももう動いているだろう。
まだまだ起きない小峰さんの近くにアラーム付きの時計をセットする。7時には爆音で目が覚めるはずだ。
「お先に失礼しま〜す」
小声で
まずは寝て、昼過ぎにフレンチトーストでも作るかと考えながら地下鉄へ続く階段を下りた。
自室の鍵を差し込んでがちゃがちゃと回す。キーホルダーにぶらさがったクラゲともう一つの似た鍵が揺れる。
扉を開けてすぐに違和感に気付く。あいつ、酔ってこっちに帰ってきやがったな……!
黒いパンプスを横目に部屋に入ると今日も今日とて自動で照明がつく。
荷物を置きさっさと手洗いとうがいを済ませて冷蔵庫をチェック、よし、何も
二徹明けの
寝室を
別に彼女がお酒に弱い訳ではない、弱い訳ではないがアルコールの魔力というものは不思議なもので、判断力を鈍らせる。
お調子者なあいつは酒が入れば入るほどにさらに酒を飲むのだ。永久機関か?
ここ数時間コーヒーしか口にしておらずお
徹夜明けの重い
冷凍庫を開けて、以前時間がある時にささがきにしたゴボウを取り出す。豚汁と言えばこいつは外せない。ごそごそと奥から里芋を救出するのも忘れない。
後は豚肉か、休日にまとめて買って冷凍しておいたものを解凍する。
残業しすぎで危うく
「豚汁なら和食だよな〜」
独りごつと冷蔵庫の中身と
半月切りにしたニンジン、冷凍里芋、ゴボウのささがきを油を引いた鍋に入れる。野菜は先に
軽く火を通すと豚肉を広げながら投下する。肉にも火が通りそうな頃、だし汁を入れていく。
豚汁を作っている間にキッチン備え付けのグリルに



