営業課の美人同期とご飯を食べるだけの日常
営業課の美人同期とご飯を食べるだけの日常 ⑧
ブルーベリージャムの蓋を開ける。パンを一口分ちぎるとスプーンでジャムをこんもり塗っていく。ブルーベリーって青いのに甘いの、なんか
そんなことを考えながらパンを口にする。やはりあのパン屋は最高だ。
このジャムも相澤さんが家族旅行のお土産でくれたものだ。実家に帰省するし事務課にも何か買ってこよう。
ゆっくりと朝ご飯を
◆ ◇ ◆ ◇
帰省二日目。昨日は実家のねこ様と
ねこって時間を溶かす魔法でも使えるんじゃないだろうか。
なぜか妹に秋津のことについて聞かれたけど、何だったんだあれは。というかどうして俺とあいつが同じ会社で働いていると知ってるのか。言ってないよな? 俺。
「おう、久しぶり」
集合場所に行くと高校時代からの友人、
「久しぶり、去年の夏ぶりか?」
「そうだな、あれから会ってないのか。……あ!」
何かに気が付いたのか井波がこちらを見て手を合わせる。
「すまん鹿見。直前に言うことじゃないんだが……」
何やら
「元々男三、四人で飲む予定だったが、それを聞きつけたクラスの女性陣何人かが合流することになったんだよ……元々女子は女子で飲む予定だったらしくてさ」
「なんだそんなことか、全然構わん。久しぶりに会う人もいるしな」
ほっとしたのか井波は俺を手招きしながら店へと入った。
連れてこられたのは
前まではちょっと高級なワインの店だったり、逆に300円出せば一品食べられるカジュアルな鳥さんの貴族の店だったり、はたまたパスタの種類が無限通りあるイタリアンだったりしたのに……。
またああいう店にも行きたいな。
とりあえず男衆が先に来ているようで四人でテーブルに着く。元々このメンツで飲む予定だったんだ、と息巻いてビールを四つ注文する。
ビールと同時に運ばれてきたのは
人生で食べたことは数回あるかどうか。それはそうだろう。
見た目は黒焦げだが中の豆はツヤツヤと鈍く光っていた。ぱくっと一口、普通の枝豆のみずみずしさや塩っけは無いものの、香ばしい野菜本来の
これは……! これはビールが進む。井波を含めた三人も同じなようで、無心で枝豆をつついては金色の液体を喉に流し込んでいる。
一瞬で空いたグラスを見回し笑う。やってることが学生なんだよな。
さっさとメインでも頼むかとカツオやチキンを注文する。
最近の話や結婚した同期の話、学生時代の話に花を咲かせる。
「そういえばお前ら彼女いんの? 結婚してないけど」
唯一の妻帯者である井波が話を振る。というか井波の奥様は俺たちにとっても高校の同期だ。高校時代に付き合ってそのまま大学卒業後
こいつらとは高校を卒業してからも年に一、二回は会う間柄である。そういう話をしないことのほうが多いため、井波以外の話も聞いておきたい。
「いや、俺はいないな。そろそろ婚活でもするか」
茶髪の
こんなところで張り合いたくねぇよ……。
「俺はいるぞ。というかこの前婚約した」
ふぅー! と声が上がる、というか言えよ。こいつは
言えよ〜と野次が飛ぶ。
「すまんすまん、二ヶ月くらい前くらいにな。今日言おうと思ってたんだよ」
「なら許す! 結婚式は呼べよ!」
勝手に井波が許可を出す。まぁ許すが。
「そういえば鹿見は? 大学時代は彼女いたよな?」
「あぁ、まぁでもそれっきりだなぁ。今は仕事忙しいし」
「俺たちももう27だしそろそろ俺と一緒に婚活しとくか?」
茶化すように西崎が笑う。やめろ、お前とは年収が天地の差なんだよ。
「そういえば鹿見、秋津さんは? 高校の時仲良かっただろ?」
なぜこんな時まであいつの名前が出るんだ。
「あ〜秋津な、大学時代はほとんど会ってないからなぁ」
「高校の時は皆の人気者だったよな。今は何してるんだろうなぁ」
瀬野のつぶやきに井波が気まずそうに目をそらす。
理由を問いつめようとした時、いつものあの声が聞こえる。
「みんな久しぶり! 元気してた?」
そんな気はしてたよ。なーにが「りょーかい!」だ。
バッチリ私服を来てメイクしている、よそ行きの秋津がそこにはいた。
彼女の後ろからゆっくりと二人歩いてくるのが見える。
「久しぶり、
秋津のことは置いといて、二人に挨拶する。
「久しぶり、鹿見君。元気してた? 前結婚式であった時よりげっそりしてない?」
「してるよな! 俺も思った」
井波夫妻に
今回合流してきたのは井波さん、大槻さん、そして秋津の三人である。秋津を含めるのは
話を聞くところによると、三人は昼過ぎから一緒に遊んでいるらしい。井波から飲みの情報を聞きつけた奥さんが秋津と大槻さんを誘ったとのこと。
確かに三人でよく一緒にいるのを見た気がする。
井波夫妻は隣に、大槻さんは俺と瀬野の間に、そして秋津は俺の前に座った。
席に着いたのを見計らったのか店員さんが注文をとりに来てくれる。
驚くことに三人ともビールとのこと。
「ちょっと暑かったしね」
クール系の大槻さんがにこやかに話し出す。最近はフリーランスのWebデザイナーとして働いているらしい。
「毎日在宅とかカフェで作業できるのはいいけど、人と話す機会は減ったわ。そういえば西崎君もWeb系だっけ」
「いや、どっちかと言うとハードにぶち込む方だな」
「そっちはそっちで大変そうね……チームでしょうし」
俺たちには皆目見当もつかない会話が繰り広げられている……くそ、俺の会話デッキじゃ付け入る隙がない。
「瀬野、お前結婚式いつなんだよ」
「多分今年の冬だな。日付確定して呼べるようになったらまた連絡する」
そうか、冬か。残業ないといいが……。それもこれもうちの営業にかかってるな。
女性陣のビールと共に運ばれてきたのは、カツオのたたきだった。
乾杯するや
ぱくっと一口、カツオの皮目が
魚の脂が酒を促進する。何もつけなくても
「お前ら、同じ顔して食べるよな。夫婦かよ」
井波に指摘されて秋津と顔を見合わせる。
まぁあれだけ一緒にご飯を食べていたらこうもなるか。認めたくは無いが。
「有くん、私日本酒飲みたい」
こいつ……。面の皮が厚すぎる。今日は高校同期の前だからか。会社では絶対そんなこと言わないくせに。
「わかった、他にも飲むやついるか?」
ちらほらと手が上がる。やっぱこのカツオ食べたらそうなるよな。
運ばれてきたお
舌の上が
日本でとれた魚が日本酒と合わないわけが無いのだ。日本酒とカツオの



