幼馴染のVTuber配信に出たら超神回で人生変わった

【一章】幼馴染がVTuberになっていた ③

【レイボーイはいいのかよ】

 おお、すげぇウケてる。まぁ、なんだかんだあやも面白いこと言えるもんな……そんなことを思いながら、俺は緑まりも(とうてきアイテム)を後ろにくっついて走っている、まりピオのマシンにぶち当てるのだった。


「んキャ─────────ッ!!」

「うっさ」


【うるせぇ!!】

【鼓膜破壊された】

【パソコンから音出なくなったんですけど】

【怨  霊  注  意】

【草】

 あやは叫んだ後、コントローラーに付いているホームボタンを連打してゲームを中断し……そこから別のゲームを開始させた。


「ふ、ふふふっ…………さっきまでのはお遊びだよ、るい……!! 私が本気を出せばるいなんか、ボッコボコなんだからね……!?」


【きたあああああああああああああ!!】

【闇ちレイキタぁ!!】

【初めて生で見れて感動してる】

【これは切り抜かれるなw】

 またコメントが盛り上がってるけど、次は何が起こったんだ……?


「レイ、どうしてコメントが爆速になったんだ?」

「あっ、それは私が闇レイに変身したからで……」

「えっ? どこが変化したんだ? 絵も何も変わってないじゃないか」

「いや、そ、そういうことじゃなくてね……?」


【説明させられてるの草】

【こーれは恥ずかしい】

【やめたげてよぉ!】

【なんかいつの間にかスマファイに変わってて草】

 書かれたコメントを見てゲーム画面の方を向くと、そこには人気対戦アクションゲーム『スマッスファイターズ』(以下「スマファイ」)のタイトル画面が映っていた。

 このゲームも説明不要だと思うが、スマファイは様々なキャラクターがぶっとばし合う愉快なパーティーゲームで、非常に人気のある作品である。もちろんエンジョイ勢だけでなく、ガチ勢からも支持されているゲームだ。


「とにかくっ、次はこれで勝負だよ! これだってめちゃくちゃ練習したんだからね! 今、魔法学校で一番スマファイ強いの私なんだからね!!」

「あ、そう……」


 どれだけ俺からボコボコにされようと、ロールプレイは忘れていないらしい。あやって意外にこういうところはりちなんだよな……そしてあやはルールを選び、キャラクター選択画面まで移動させた。


「じゃあ早速やるよ! 私の使うキャラは……『アツヤ』だっ!」


【草】

【うわでた】

【容赦ねぇなレイ】

【魔法使いキャラ使えってwww】

 あやがキャラを選ぶだけで、コメントは盛り上がりを見せる……ちなみにあやの選択した『アツヤ』は格闘ゲーム出身のゴリゴリのパワーファイターで、即死コンボも狙える凶悪なキャラクターである。それゆえ、かなりヘイトの集まるキャラなのだが……もうこいつ、俺に勝つことしか考えてねぇな。

 まぁ別にそれはいいんだけど。VTuberのキャラ的に、もっとわいいファイターを使うべきなんじゃないか……ってのは俺の余計なお世話か?


「じゃあ俺も」


 それなら負けじと、俺も『アツヤ』を選択した。


「おっ、同キャラかぶせ……かぶせていいのは、かぶせられる覚悟のあるやつだけだよ!」

「別にレイ、俺の持ちキャラ使えないだろ」

「……うしゃー、いくよー! れでぃーとぅーふぁいとー!!」

すな」


 そしてあやはバトルスタートを押して、対戦を開始させた。あらかじめステージもあやが選択していたようで、『オメガ』という何の障害物も置かれていない、へいたんなステージが現れたのだった。

【オメガちゆうきたああああああああ】

【もう別ゲーだろこれ】

【原作でやれ】

【オメガでミラー対決は熱い】


「いくよ!」


 試合開始の合図であやのアツヤは、俺の方へ近づいてくる……だが遅い。俺は特殊なコマンドで無敵の付いたステップを繰り出し、相手の攻撃を無効化した。


「ええっ!?」


 そして俺はアツヤをつかみ……下投げからコマンド技『最速氷結拳』で相手を凍らせ、その凍った隙に地面へたたとし、また『最氷』で相手の動きを止めたのだった。


「えっ、ちょっと、待って待って待ってって!!」


 俺は冷静にそのコンボを繰り返し、ある程度ダメージがまったところで……。


「おらぁっ!」


 豪快なアッパーを繰り出し、当たった相手のアツヤは星になって消えていくのだった。

【上手すぎるwwww】

【完璧過ぎて草】

【こーれはやり込んでます】

【ボコボコで草】


「え、ねぇ、ちょっと、るい! さすがにヒドくない!?」

「あははははっ!」


 あまりにもれいに決まったので、思わず俺は笑ってしまう。

【ゲス笑い助かる】

【緊張もほぐれてきたみたいだなw】

【闇ちしたのはルイ君の方だったか】

【レイ虐助かる】


「クソー! 次こそは……って、ああっ!?」

「見え見えだ」

「あ…………やっ、やめろ──っ!?」


 そして復活台から降りてきたアツヤをつかんで、また俺は完璧な即死コンボを決めたのだった……ちなみにここが一番コメントが盛り上がっていたらしいよ。


 それから何回か対戦を行った。結果はまた全部俺の勝ちだったため、俺には大きな縛りが設けられることになった。


「はぁっ……次はハメなし、即死なし、アツヤ禁止、アイテムは全部こっちのものね……?」

「どんだけ勝ちたいんだよお前」


【これってレイが勝つまで終わらないやつ?】

【朝まで続きそう】

【耐久配信ってここで合ってますか?】

 このままズルズルと配信を続けても構わないけれど、もう二時間はったし……視聴者のことを考えると、そろそろ終わっておくのが丁度いいだろうな。


「レイ、次で最後にしよう。泣きの一回も無しな」

「分かった……絶対に勝って終わらせてやるからねっ……!?」


 いまだに闇レイ化しているあやは、変なしやべり方でキャラを選択した。変わらずキャラはアツヤ。アツヤを禁止されている俺は、高いジャンプ力が強みの鳥キャラ『ルンバル』を選択した……まぁアイテムありなら、あやにも勝機はあるだろうか?

 ステージも変わらずオメガ。そして試合開始の合図が鳴るなり、あやの扱うアツヤは俺のルンバルに向かって突進してきた。


「だぁあああっ! 私のダッシュ攻撃をらええええええっ!!」

「見え見えなんだって」


 俺はそのキックをジャストガードして、アツヤをつかんで空中に上げ……お手玉コンボを決めていった。


「だぁああ──っ! コンボなし!!」

「無茶言うな」


【こんなレイ見たくなかった】

【ルイ君が冷静すぎてウケる】

【コンボなしはさすがに草】

 そしてルンバルのコンボ中、召喚アイテムが落ちてきたのを見たあやは叫んで。


「アイテム私ね?」

「……」

「アイテム私ね!?」

「聞こえてるって」


 どこかで聞いたことがあるやり取りに笑いながらも、俺はコンボを完走し、ノーダメージで相手の残機をひとつ減らした。


「くぅーっ……! 次はコンボなしだからね……!?」


 言いながらあやのアツヤは復帰台から降りて、のそのそと召喚アイテムを取りに行こうとした……が、もちろんこのアイテムにも欠点はあって。それはお助けキャラを召喚する間、一定時間の硬直が必要になるというところだ。つまりその間は無防備かつ、キャンセルも不可能……だからこんな悪用も出来るわけで。


「……今だな」