幼馴染のVTuber配信に出たら超神回で人生変わった

【一章】幼馴染がVTuberになっていた ④

 俺は相手のアツヤが召喚アイテムを掲げている最中に、遠距離からブラスターを連射していった。すると相手のアツヤは一瞬だけひるんだ後、またアイテムを掲げるモーションを行う。その間に次に放ったブラスターがまたヒットし、アツヤはひるんで動けなくなる。そしてまたアイテムを掲げて…………以後ループ。


「ンなあぁぁあああっっ!? ちょっ、るい! ハメでしょこれ!!」

「レイがアイテム取らなきゃ、こんなことは起こらなかったのに」

「どっ、どうやって抜けるのっ!?」

「俺のBボタンが効かなくなるのでも、祈っとけばいいんじゃない?」


【草】

【草】

【草】

【草】

【これは草】

【wwwwwwww】

 ま、このままブラスターを続ければ、タイムアップで俺の勝ちになるが……流石さすがにそんなダルいことはしたくない。俺はそこそこダメージがまったところで、アツヤを開放してやった。


「あぁ、やっと抜けれた! やったぁ!」


 なんか自分で抜けられたと勘違いしてるけど……まぁ黙っといてやろう。


「さて……反撃開始といくよ、召喚ッ!」


 そして邪魔が入らなくなったアツヤは、やっと召喚が出来たみたいで。その召喚アイテムから出てきたキャラは……サイコパス料理人『ヤマザキ』だった。


「いっけぇえええヤマザキ!! 全ていつくせっ!」

「作る方だろ」


 冷静なツッコミを繰り出しながら俺は、ヤマザキの投げてくる皿をけ続けた。


「あはははっ! この弾幕、近づけないでしょ!」


 言いながらあやはヤマザキと一緒に攻めてくるが……やっぱり詰めが甘いんだよなぁ。俺はルンバルが持っている必殺技『リフレクト』を繰り出した。

 この技は相手の飛び道具を跳ね返す技……要するにヤマザキの投げまくる皿が、ダメージ倍率を上げて相手に反射することになるわけで……後はお分かりだろう。


「……えっ、んきゃぁぁぁああ──っ!!」


 急に跳ね返された皿に対応できず、それはあやのアツヤに命中した。そしてダメージがまっていたアツヤは、ものすごい勢いで場外まで吹っ飛んでいくのだった……その後、画面中央には『ゲームセット』の文字が。

【流れが完璧過ぎる】

【草】

【これもう芸術だろ】

【笑いすぎて涙出たわ】

【wwwwwwwwww】

【神回過ぎる】


「……」

「……レイ?」


 ガクガクと身体からだを震わせているあやに、俺はおそるおそる声を掛ける……そしたらあやは今日一番の大きな声で叫んで。


「……うぬああぁあ────っ!! ああ、もう今日の配信は終わりっ! スパチャ読みは今度! じゃあね、レイガール達!!」


【乙】

【おつレイー】

【おつれい】

【草】

【レイボーイ忘れんな】

【マジで神回だったなw】

【面白かった~~~!】

 あやは少し間を置いた後……配信終了のボタンをクリックしたのだった。


「おい……終わったのか?」

「……」


 あやは無言でうなずく……あちゃー。流石さすがにやり過ぎちゃったか? でも撮れ高作るためには、あれぐらいする必要あったよなぁ……と俺が脳内で反省会をしていると、あやは俺の肩をガッシリとつかんできて。そして屈託のない笑顔で、こう言ったのだった。


「ホントに……最っっっ高だったよ、るい!」

「…………えぇ?」


 ──そして配信が終わった後、俺らはおのおのスマホをイジっていた。俺は適当にソシャゲをやっていたのだが、どうやらあやの方はエゴサをしていたみたいで……。


「ねぇ、るい! 放送の反響がすごすぎてトレンド入りしてるんだけど! 次のコラボいつですかってコメントもめっちゃ来てる! こんなの初めてだよっ!!」

「ええ……?」


 俺はスマホから顔を上げ、困惑の声を上げる。いや別に配信の感想とかはどうだっていいんだけど……俺なんかとコラボして、話題になって大丈夫なの? 普通に嫌じゃない?


「いやレイ……じゃなくてあやあやはそれでうれしいのか?」

「えっ? そりゃーうれしいよ! だってこんなにもたくさんの人が見てくれたんだからさ! ……あ、なんかデータ取ってた人によると、今回の放送が初配信の次に人が多く集まったんだって!」

「ええ……?」


 VTuberの初配信は注目されるから、同接同時接続者数が多くなるのは何となく知っているが……その次が俺とのコラボって。やっぱりそれ、ファンから怒られない?


「えーえーばっかり言わないでさ、るいも感想見てよ! みんな面白かったーって言ってくれてるから!」

「はぁ、分かったよ……」


 しぶしぶ俺は、あやから配信に付けられていたハッシュタグを教えてもらい、『つぶやいたー』でそれを検索してみた。どれどれ……?


「『超神回だった』『ルイ君とまたコラボしてほしいわ』『めちゃくちゃ楽しかった!』『レイちゃんは知らん男とコラボしないでほしい』……だとよ」

「そっ、そういう人もたまにいるけれど……大体は好意的な感想ばかりでしょ?」

「まぁーな」


 わざわざハッシュダグまで付けて、感想を書き込むくらい熱心なファンなんだから、優しい人が多数なんだろうけど……つぶやいてないだけで、俺とのコラボをよく思っていなかった人もきっといるだろう。俺はその先まで見えてるんだ……。


「……それでさ、るいはどうだった? 配信、楽しかった?」

「楽しかったって…………まぁ、久しぶりにあやと遊べたのは楽しかったよ。配信とかは関係なしにな」

「……ふふっ。そっかそっか、それなら良かったよ!」


 俺の言葉を聞いたあやは、昔から変わることのない無邪気な笑顔を見せてくれた。……俺はこの笑顔を見るために、あやに色んなことを教えたりしていたんだよなぁ…………はっ、いかんいかん。何をノスタルジックに浸っているんだ、俺は。


「でさ、るい! 次のコラボはいつにする? 明日とかはどうかな?」

「おいおい……さっき俺が言ったこと忘れたのか? 放送に出るのは今回だけ……それに明日からはバイトが入っているから無理だ」


 あやは今夏休みだろうが、バイト戦士である俺にはそんなものは無いんだ……それで俺の言葉を聞いたあやは一瞬だけ悲しげな表情を見せたが、すぐに元に戻って。


「そっか……じゃあまた今度ね! 一緒に遊ぼ?」

「ああ、それは別に構わないけど……他に遊ぶ相手いないのか? 俺なんかより、他のVTuberとかとからんだりすればいいのに……」

「……るいの鈍感」

「え?」

「……ううん、何でもないよ。それじゃあーまたね、るい?」

「ああ、また」


 少し気になる発言はあったが、特にそれには触れずに……荷物を持って、俺はあやの家を後にした。


 あやの配信に出演して、数日がった。その間、俺は何事もなく過ごしていたのだが……。


「……ん?」


 ある日のバイト終わり。俺のスマホにはあやからの着信と、ひとつのメッセージが届いていた。メッセージを開いてみると『大変なことが起きたから、早く折り返して!!』とだけ書かれていて。


『大変なこと』というあやの大雑把な説明に、少し嫌な予感がしたが……まぁ、これを無視するわけにはいかないだろう。思った俺はあやに電話を掛けた……そしたらすぐに応答してくれて。


『もしもし、るい!?』


 あせったようなあやの声が聞こえてきたんだ。


あや、何かあったのか?」

『うん! あのね、すっごいことが起こったんだよ!』