第二部 『DAY プラス1~2 サトウとスズキとタナカの通話』
第一章 『録音』
第二部 『DAY プラス1~2 サトウとスズキとタナカの通話』
第一章 『録音』
スズキ
「と、まあ……。録音は以上になります」
タナカ
「……スズキ‼ テメエ……、自分が何をやったか……、分かってんのか……⁉」
スズキ
「分かってますよ‼ 偶然、似たような人殺しを見つけ、そいつと電話で話をした。他にありますか⁉ タナカさん!」
タナカ
「そうじゃねえ‼ アホか‼ ――テメエは、オヤジさんのことをべらべらと喋って、オヤジさんのみならず、俺達と、計画を危険に晒したんだぞ! 晒してるんだぞ! それが分かってねえのか⁉」
スズキ
「だから分かってるって言ってるでしょう‼ でも、聞いたでしょう⁉ ヤツだって俺達と同じ、銃を使って悪人を殺したことがある人ですよ! しかも三人も! それでアメリカに逃げた! まだ事件になっていない! 俺達のことを警察に言えるわけがない!」
タナカ
「向こうは、もう五年も前の話だ! 証拠も出てない! 書いてあったことも……、それもどこまで本当か分からねえ!」
スズキ
「イモトさんの捜査手帳に、嘘デタラメでも書いてあったって言うんですか! なんのために⁉」
タナカ
「知るか‼」
スズキ
「それに、聞いたでしょう⁉ あの男は、俺達の行動をかなり推理して当ててきましたよ! ビックリですよ!」
タナカ
「それがどうした⁉」
スズキ
「少なくとも、気付くヤツは気付くってことが分かったじゃないですか!」
タナカ
「そんなのは予想できた! そこに至っていない警察がボンクラなだけだ! そんなことのために、結果的にオヤジさんを狙われることになったんだぞ⁉」
スズキ
「だからこうして、恥を忍んで全てお知らせしたじゃないですか‼」
タナカ
「アホか! スズキ、テメエ……、電話でなければ数発ブン殴っていたぞ……?」
スズキ
「電話で良かったですね? 一発目をワザと食らっておいて、暴行の現行犯で逮捕してやりましたよ?」
タナカ
「このクソが‼」
スズキ
「ええクソですよ‼ 俺もあなたも、クソじゃないですか‼」
サトウ
「はいはーい! そろそろ、僕も会話に参加していいかなー? スズキ君、タナカ君」
スズキ
「もちろんっす!」
タナカ
「テメエが楽しそうに言うな! ――すみませんオヤジさん。でも、ココでコイツを叱っておかないと――」
サトウ
「うんうん。もう叱ってくれたね。ありがとう」
タナカ
「え? あ、いや……」
サトウ
「だから僕からは叱らない。二人で一緒に叱るのは良くないからね」
タナカ
「…………」
スズキ
「ちょっと、スズキ君と話をしていいかな?」
タナカ
「もちろんです。自分は、しばらく黙っていますので」
サトウ
「ありがと。――じゃあスズキ君」
スズキ
「はい……」
サトウ
「まああれだ、いろいろ功を焦ったね。うんうん、焦った焦った」
スズキ
「…………。サトウさん……、申し訳、ありませんでした……」
サトウ
「でも、イモト君の手帳でそんなビックリ情報を見つけたら、そいつと話をしてみたくなる気持ちは、分からないでもないね」
スズキ
「そ、そうですね……。あの……、すみませんでした!」
サトウ
「『よくやった!』とは言えない行動だけど、やってしまったものは、しょうがない。時間は巻き戻せない。それは僕達が、誰よりも知ってることだからね。さあて、だからここから、どうやってどうしようか考えよう。今までみたいに、みんなで知恵を出し合ってね」
スズキ
「はい……」
サトウ
「タナカ君も、じゃあそういうことで、再び会話に参加してもらおうかな。――みんな、トイレ休憩とかは大丈夫?」
スズキ
「俺は大丈夫です」
タナカ
「自分も」
サトウ
「そいつはよかった。寒いとはいえ、朝も早い。水分補給は忘れずにね。そして、行きたくなったらいつでも言ってね。――さあてさて、僕には、君達二人にまず言っておきたいことがある。とても重要なことだから、心して聞くように」
タナカ
「はい」
スズキ
「はい」
サトウ
「ちょっとトイレに行ってくる」
スズキ
「ぶはっ!」
タナカ
「オヤジさんっ! 前から思っていましたけど、突然に笑いをぶち込んでくるの、やめてもらえませんか! 笑っちまいますよ!」
サトウ
「だって笑ってほしいんだもん。笑いは、いいものだよ。実に、いいものだ。記憶から消せない辛いことに心を支配されている、ブラックジョークみたいな僕達の人生にだって、笑いはあっていいと思うんだよね。たくさんね」
スズキ
「そうですね……」
タナカ
「オヤジさん……。突然にシリアスをぶち込んでくるのも、やめてもらえませんか?」
サトウ
「わはは。人生、楽しんでいこうね。こうして生きてるうちはね! さあて、作戦会議を続けようか!」
スズキ
「え? サトウさん……、トイレは?」
サトウ
「大丈夫。もう漏らしたよ」
スズキ
「ぶはっ!」
タナカ
「オヤジさーん……」
サトウ
「うそうそ。最初から、もよおしてないよ。――さて、会議するも何も、録音を聞き終えたばかりだし、今分かっている状況をまとめようか」
スズキ
「はい」
タナカ
「はい」
サトウ
「いつも通り、証拠になるから録音もメモもダメだからね。頭に叩き込んでね」



