第ニ話『百眼』――ジャガン――

7-6.

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 途中で公園のトイレによって、重ね履きしていた下着を衝動的に脱ぎ捨てたのち(締め付け具合が気に障っていた)。

 先輩と別れて家に帰り着いて真っ先にしたことは、新しい下着を身に着けることではなく、ネットで邪眼について調べることだった。

 ソース確認はともかくも、なんとか調べることはできた。

 邪眼とは、世界各地に存在する民間伝承で、基本的には超常の害を与える恐ろしいもので、邪眼から身を守るもっとも有効的な方法は、性器――とくに女性のもの――を邪眼に見せること、らしい。


「いやいやいや」画面を見ていて声が出た。

「いやいやいやいや」


 そういえば、確かに先輩、ぼくの目が邪眼っぽいとかいっていたけれど、でも、だからって、いやいやいやいや――

 つまり先輩は、ぼくの目が『邪眼』だと本気で信じていて、だから失敗したと思っているのか? 

 ぼくの目が本物の『邪眼』だから、先輩のソレを見たことで『邪眼』が『破れ』て、それで『儀式』が失敗したと――? 

 いやいやいやいやいやいやいやいや――

 どっと疲れ、深く背もたれに寄りかかる。

 つまり先輩は、……またも『儀式』は失敗したけれど、や『儀式』そのものの有効性については疑っていないということなのか? 

 つまり『儀式』自体も、今回が最後にはならないということか――帰りがけにぼくのことを(あの揶揄するようなイントネーションで)センパイと呼んでいたし、そもそもぼく自身今回はまったく手ごたえなかったわけで、そうじゃないかとは思っていたのだが――

 脱力し、ため息をつく。

 まぁでもこれなら、本当に、怒っていないと考えてもよさそう――? 

 そう考えている間に、先輩からメッセージがきた。

 内容は、無事帰宅したことを告げる報告と、期末テストへの激励と――

 ――次の『儀式』に、ついて。

 再度ため息をついて、返信の内容を考えつつ、ベッドに横たわる。

 どんな気持ちがそのため息をつかせたのか、考えることは、放棄して。



 その日はそのまま夕食まで眠ってしまい。

 下着を脱いでいたのを忘れていて、結局お風呂に入るまでノーパンで過ごさなければならなかったが――かけらも興奮しなかったが――

 久しぶりに夢は、見なかった。