孤高の電波美少女と恋で繋がったらギガ重い

第二章 真剣勝負はファミレスで ④

 はなした態度は本音かうそか、いまいち読み取ることが出来ない。だが、まさおみには少し雲雀ひばりさびしそうな顔をしているように思えた。理解してもらえないから仕方ないのだ、と自分に言い聞かせているようで。

 こいもうもくという言葉がある。思い込めばクロでもシロになるというある種の精神世界だ。雲雀ひばりが自分の電波的な一面を信じ切っているのと同じように、まさおみ雲雀ひばりを信じ切ることが出来れば、ずいする事の正誤はさして重要ではないのかもしれない。そう考えると、少し物事をシンプルにとらえられるような気がした。


「何か、証明は出来るもんなのか? その、ダイブだか何だかいう」

「出来ないわね。──いえ、出来ると言えば出来るのだけど……結局信用の問題だから」

「いいぜ、やってみてくれ」


 まさおみそくとうした。

 手段があるというのなら、何にせよ見てみなければどうしようもない。全て脳内で完結していると言われればお手上げだが、うそきらいだという雲雀ひばりが不可能と断定していないのだから、信用という担保はまさおみが負えばいいだけの話──とそこまで考えてから、おや? 内心で首をかしげた。

 ──何か俺、結局前向きになってないか?

 当初はうそこくはくをどうして終わらせようかと考えていたはずなのに、今は雲雀ひばりの電波を信じる手段を講じている。あいまいで不確かですきだらけのくつに、しんぴようせいを求めている。ただ、雲雀ひばりがそう言ったから、それだけの理由で。

 ──どうせ無理なら、から、無理じゃなくするには、ってか。

 どう転んでもどうでもいい、心の奥底でそう思っていたのはちがいない。スタートからしてちがいなのだから、それがリセットされても元にもどるだけ。まさおみ退たいくつへいぼんな世界にもどり、雲雀ひばりは精神ともうそうの世界にひたる。たがいに平行線を引き直してさよなら。

 だが、ばつゲームのネタばらしをする気なら、昨日の放課後、二人で話をした時にやっている。雲雀ひばりでさえクーリングオフという破格の示談を提示していたのだ。けいへの事後報告もすっぽかして、それっきりにしないことをせんたくしたのはもちろんまさおみで、だったら最後までその努力を続けなければならない。せっかく日向ひなたに査定までしてもらったのだ。男のけんの半分は有言実行に対する意地。もう半分はに他ならないが、意地と、十代がける青春としては実に結構なことだとまさおみは思う。

 それがつうの高校生だ、と。


「あなた、全然つうじゃないわね」

「……失礼だな。俺ほどつうを目指している男もいないというのに」


 実に心外な話だった。

 そう感じてしまうことを、つうじゃないと言われているのだろうか。つうとは難しい。


「大体決まってヘラヘラ近づいてきて、少し話を聞かせてなんて思ってもいないことを言って、いざ聞いたら聞いたで気味悪そうにする。デートみたいなこともしたけど、私の話を聞いただけで頭をかかえるか、こんなはずじゃなかったって逆切れするか、トイレに行くふりしてそのまま帰るかするのに。昨日も今日も、あなたはいたって真面目な表情のまま──こうしてまともに話を聞く姿勢の時点で……どう見ても危険な相手に、証明してみろなんて発想になるのは、本当、つうじゃない」


 そのかがやかしい戦歴はおそらく実話なのだろうが、彼氏だとか電波だとか以前に、つうの人としてやっちゃいけない対応集みたいな感じさえする。分かりづらいが一応、められているのだろうか。


「ナンパやごういんな口説き方ではなくて、呼び出して告白なんていう、今時めずらしいくらいのまっとうな手段で私を口説いたのはあなたが初めてだけど、そうね……」


 雲雀ひばりいくばくか迷う様子を見せていたが、まさおみが茶化すわけでもからかっているわけでもないことをさとると、不安とあんこうけるのうためいきして、


「じゃあ、今から私は少し気を失ったように見えるけど、気にしないで。多分──十分もすればもどるわ。それまで、だまって見ていて」

「分かった」

「あと、もう一つ。これはとても重要なことなんだけど。本当に信用の問題だから、あなたを信じているから、こうするのよ?」


 ちらちらとうわづかいをして、言うのを躊躇ためらうような仕草にどうねる。もしかしなくても雲雀ひばりの容姿は美人だ。だがこんな彼女は美しいというよりも、わいい。

 こんな表情が見られるなら、真夏のきようだって、決して悪くないと思うくらいには。


「何だよ改まって」

「──私がダイブしている間、変なことしないでね」


 あくこごえるしようでそう言うやいなや、雲雀ひばり身体からだがぐらりとかしいだ。

 まさおみが面食らっている間に、テーブルにやんわりとして、それきりまるで動かない。尻尾しつぽのようにかみが垂れた背中はまるでアスリートがぜんりよくしつそうでもしているかのように浅いかんかくで上下しているが、本人のがお(?)はいたってへいおん。もちろん呼吸が止まったわけでもない。本人が宣言していた通り、これがダイブしている、という状態なのだろう。

 見た目には、古文の授業中にせんりやくてきばくすいを決め込むけい日向ひなたぼっこ中のかすかのねむ姿すがたと何も変わらないように見える。この程度をこんきよ精神界アストラルサイドとやらを証明するには、ややなんなものではないか。それとも、他に『そうである』証明が出てくるのだろうか。

 それともう一つ、まさおみにとっては男のけんてきにどうしようもない問題がある。


「カップルでファミレスに来てて、彼女にばくすいされる彼氏ってはたにはどうなのかね。つう……じゃないだろうな、たぶん」


 もしかしてこのしゆうプレイを見通しての、『あなたを信じている』発言なのだろうか。

 貴家雲雀さすがひばり。文字通りさすがの女である。





 これが学校の休み時間ならまばたきでもしてれば過ぎるものだが、ただその場に居るというだけで十分という時間は意外に長い。この状態の雲雀ひばりを置いてトイレに行くのも何なので、ジャケットだけかけてやった後はだまってながめているしかないのだが、本人がダイブとやらで何をしているかは不明な上に、その外側の世界であるまさおみとファミレスには何の変化もないのだ。

 仕方なくスマホでニュースアプリでも立ち上げて流し読みを始める。『デキる男は時事ネタに強いんよ』という日向ひなたなぞあおもんによりしぶしぶ入れたアプリだったが、こうしたかんつぶしには格好のツールである。

 いわく、今年の夏の流行ファッションは〝シノビ〟! 和装束であの子への忠誠心を示せ!

 いわく、なぞの人体傷害事件発生。白昼堂々の悲劇に、FBIちようのうりよくそうかんいどむ一部始終。

 いわく、絶品スイーツ! シロップオンシロップで、胸焼けするくらい甘々な夏を!

 いわく、かんしや増加中のCCD。そのはつせいけいこうりんしようやくりようだいびよういん研究者が提示。

 いわく、あれから一年。あの事件の後を追え。未解決事件ファイルだいだん。交通事故編。

 いわく、いわく、いわく────

 ニュースというよりゴシップ誌のネタコラムみたいなのも混じっているが、二つ目のトピックの事件現場のうちの一つは何とここ、くつ──のとなりばきである。確かけいとかすかがその辺に住んでいたはずなので、あまりごとでもない。今度うわさでも聞いてみようかと思うが、ちようのうりよくそうかんに任せておけばきっとだいじようだろう。何と言ってもちようのうりよくだ。雲雀ひばりの言う精神界アストラルサイドよりは現実的なのかもしれないし、少なくともまさおみが出しゃばる理由はない。

 次のスイーツ画像は、これはもうダイレクトに胃をあぶるようなかんテロで、ホットケーキがシロップのまんきつしているようなものだった。女子といえばスイーツなのだから、雲雀ひばりもそれなりにたしなむかも……と期待したのがアホらしくなる。彼女のとう尿にようそくしんする彼氏になどなるわけにもいかない。きやつ


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