扉の外
第1章 ⑦
生徒のほとんどは、和泉の行動に疑問を持ったようだった。
その後、生徒たちから残りのダイヤの十ポイントを、クラブカードに交換してくれと意見が出た。
当初ぎこちなかった生徒たちの表情は回復している。カードを
また、意外なことに、カードをもらっていない紀之に気づいて、生徒たちは食料を分けてくれた。
「よかったじゃないか。これで絶食の心配はなくなった」
壁に寄りかかりながら
「氷室が言ってくれたんだろ」
紀之が言うと、氷室はにやっとした。
「まあ、クラスメイトで助け合うのは当然だからな。例え、その腕輪を外したってさ」
「いいこと言うじゃないか。和泉に聞かせてやりたいよ」
「あの態度はないよな。もともと
和泉は画面を調べることに
「それにしても、いつまでこうしてるんだろ」
氷室はパックのドリンクを飲みながらため息を
紀之は氷室から渡されたパックを飲んでみると、スポーツドリンクのような酸味の効いた味がした。
「メニューが多すぎるよな。あれだけ
食べ物だけでも百種類ほどもある。紀之は先ほど
ダストシュートがそのまま外に
「メニューには睡眠薬なんかもあったよ」
「ここじゃ、眠ることぐらいしかやることがないか」
紀之はうんざりとそう言ったが、それは間違いだった。
しばらくした後に、シートにもクラブカードが使えることが判明したのだ。
シートに備え付けのヘルメットを
しかし、紀之はそのシートの機能を使うことはできなかった。カードは氷室から一枚もらったのだが、使えなかったのだ。理由は腕輪のようだった。腕輪を着けていない人間には、シートのシステムが反応しないのだ。
十二時間後、部屋に強烈なブザー音が鳴り響き、二回目の収入の時間になった。
画面の操作は同じく
和泉は万が一のためにダイヤのポイントを
生徒たちはすでに現実を受け入れていた。
カードで食料や生活用品を買い、シートを操作して時間を
支給のカードは三十枚。十二時間で三十枚は不便のない生活が送れることが分かった。
ふと見ると、ほとんどの生徒がヘルメットを
紀之はシートに横になりながら
紀之はシートから立ちあがり、画面の前に進んだ。画面にはマップとトランプマークがある。マークにタッチしてみたが反応せず。やはり、腕輪を持っていない人間は、操作することができないのだ。
マップの上にある二つのスペードと、ここの場所を表現する青い丸。ソフィアは、この場所をひとつの国といった。この場所は、最も小さな国なのだ。
しかし、その国の中で自分の存在は何なのだろう。紀之はそんなもやもやとした考えを振りまきながら薄暗い部屋を眺めた。
現在の時刻は五時だった。午前か午後なのかは分からない。しかし、ほとんどの生徒がシートの上で静かにしている姿を見ると、午前五時である可能性が高いと感じる。
紀之は首を振った。この時計の時刻さえ疑わしいではないか。五時であることを証明する
紀之は静まり返る室内を見て思った。何故、パニックにならないのか。何故、生徒はこの状況を受け入れるのか。
この状況は、これまでの教育の
しかし、外から開けることはできないとも説明された。ソフィアの言うとおり、もしも扉の外に何もなかったら。そして、扉がロックされたとしたら。
「外に出るつもりなの?」
振り向くと、販売機の前に
「出ないよ」
「外の様子を見てくるのも悪くないと思うわ。出ることのできるのは、ブレスレットを外した人間だけだから」
「で、何もない場所で
「
和泉の口調は冷静だった。
「モルモット代わりか?」
紀之は和泉を
「そんなつもりはないわ。私はこの状況の打開策を考えているだけよ」
「じゃあ、おまえが出ていけよ。内側から扉を開ける役は
「そんな言い方はないと思うわ。ブレスレットを外したのは、千葉君の意思だった。責任はあなた自身にある」
和泉は販売機を見つめ、紀之から視線を
和泉は販売機にカードを
「何か必要なものがあるのなら言って」
和泉はちらりと紀之を見た。
「これを買ってくれ。それでどう使うか教えて欲しい」



