扉の外
第1章 ⑧
紀之は販売機の生理用品のボタンを指差した。
「最低ね」
頭に思い描いたのはセーラー服の女子の姿。
愛美は
彼女は今どうしているだろうか。この状況に
そこまで考え、紀之ははっとした。果たして、このシェルターに存在するのは、この二年四組だけなのかと。別のグループもいる可能性があるのでは。この整備されたシステムが、ひとつのクラスだけのためにあるとは考えにくい。
紀之は考えをめぐらせた。何か今の考えにリンクするべき事項があったはずだ。しかし、頭に浮かんでしまった愛美の顔に思考はストップした。
紀之はシートに戻り、頭に焼きついた愛美の笑顔に
あの時計が地球の時計と同じスピードで時刻を刻んでいると信じるなら、すでに四日が過ぎた計算になる。
混乱は起きていない。いうなら安定していた。
室内の生徒たちは、安定した生活を送っている。記号化された生活だった。
食料を食べ、ひたすらシートに寝て時間を
紀之は昼だか夜だか分からないこの空間で、必死に自分を保っていた。
紀之は給水タンクで水を飲み、そのまま顔も洗った。このところ、生徒たちが分けてくれる食料は減っていた。
この生活はいつまで続くのか。
紀之はため息を
ふと思う。
もしかしたらソフィアはそれが目的なのかもしれない。このように人間に考えることをやめさせ、管理しやすくするのだ。
思った。それはすでに現実の世界で実行されていたのかもしれない。ネットワークなどは世界の生活を進化させ便利にする代わりに、人間から様々なものを奪った。コミュニケーション能力や思考能力など。それらの能力はなくても、コンピューターが代わりにやってくれるではないか。
時計の針が十二時を指したのだ。
周囲の生徒はその合図で体を起こした。すぐに生徒のひとりが画面へと進み、ダイヤをクラブカードへと代えた。そのカードは三十人で平等に分けている。
カードを受け取った
「大丈夫かよ」
「うん、ずっとロールプレイングゲームをやってる」
亜美は暗い笑顔を作って答えた。
そんな
「ねえ、みんな少し話し合いましょう。映画やゲームばかりしていないで」
「ただ時間を
部屋は和泉の言葉に重々しい沈黙が流れた。
「これからのことって?」
前の方に座っていた生徒が、重い声で返答した。
「……今後どう生活していくかとか、議題は
「なあ、やめようぜ。無理に話し合ってもしょうがない」
販売機の前にいた
紀之は思った。皆現実に気づき始めているのだ。このいつ終わるか分からないシェルター生活に。それを考えないようにするため、シートに横になりヘルメットを
「今後って、ずっとこれが続くのかな」
亜美がそんなやり取りを見ながらつぶやいた。部屋の前方では、
「考える必要ないって。亜美は経験値を上げてボスを倒すことだけ考えていればいい」
「
「腕輪がないと
「そっか。
亜美は自分のシートを調べる
「ねえ、一緒に寝れば大丈夫じゃないかな。映像とか見えるかもしれないよ」
亜美が手招きをした。
「それに頭は二つも入らないだろ」
紀之は言いながらも、亜美のシートへと移動する。
「二人で横向きになってさ、頭は入らなくても、映像とか音が聞こえるかもしれないじゃん」
紀之はシートに横になりポジションを工夫する。亜美も紀之と向かい合うように体を横向きに動かした。
「ちょっと無理だな」
「そうだね」
ふたりは体を密着させながら
鼻先にある亜美の髪からは、塩っぽさに混じって
亜美はもぞもぞと体を動かし紀之の胸に頭をつけた。
紀之は亜美の背中に手を回して抱きしめる。バスケット部のわりには
胸の中の亜美が視線を向けている。紀之は引き寄せられるように亜美の唇にキスをした。お互いの歯がぶつかりカチッと音をたてた。亜美は小さく声を
室内では、
紀之の耳には、亜美の
死という概念がある人間は何事も区切りたがる。
目標を定め、それに向かって突き進み、また別の目標に向かって突き進む。
しかし、このいつ終わりが来るか分からない状態は、
だから、こんな状態なのだ。ただ
紀之は静まり返った部屋を見つめていた。この生活が始まってから一週間ぐらい



