たかがアイドル! ~されど、やっぱり顔はいい~
第3話 凛として美しく ⑥
「大家をやってる高校生であれば、少なくとも、悪い奴の一味ってことはないでしょうし」
グループがいきなりブレイクして、芽野社長は人手が足りてなくて、今でも困っている。でも、求人をだして経験者を募集したりせず、新しく入れたのはバイトの俺だけだ。
「内部に入りこませない、って意図のような気がしますね」
俺は夜野と一緒にバイクに乗り、暴走タクシーに追いかけられたことを思いだす。きっと、相手はカプセルプラネットの価値をわかっていて、手段を選ばない連中だ。
どうすればいいんだろうか。なんて考えていると――。
「一徹さん、本気で彼女たちを守りたいんなら、一家の力を使えばいい」
小虎はいう。
「力ずくでわからせてやればいいんですよ。彼女たちに、二度と手をだしたいと思わせないように」
「それは――」
一瞬、それもいいかもな、って思いかけて、俺はあわてて首を横に振る。
「いや、ダメだって。そういうのは――」
「時代じゃない、ですか?」
小虎がいって、俺は、「ああ」と、うなずく。
「力ずくでわからせるとか、そういうのはよくないよ。世の中にはルールがあって、みんな、それを守ってちゃんと生きていく。どんな事情があったとしても、腕っぷしでなんとかしようとしちゃダメだ。そんなやつらがいたら、みんな恐いだろ」
はみだしものとか、アウトローとか、そういうやつらの居場所がなくなって、それを嘆く風潮もある。昔は余白があってよかった、みたいな。でも、俺は、それはちがうって、本気で思っている。
社会は、正しく生きる人たちの居心地がよくないといけない。努力した人が報われて、理不尽になにかを奪われるようなことなんて、あっちゃいけない。
だから、はみだしものたちの肩身が狭くなるのはとても正しいことだ。
「そんな時代の流れをわかってたから、親父も一家を解散したんだろ」
小虎はそれについてはなにも話さず、ポケットから煙草を取りだして、火をつけようとしたところで、ここが駅のホームだと気づいて、いそいそとポケットに戻してからいう。
「じゃあ、カプセルプラネットのお嬢さんたちが、危ない目にあいそうになったら、一徹さんはどうするんですか?」
「困ったことがあったら……俺はちゃんとルールにのっとってやるよ」
「そうですか」
小虎はいう。
「そういえば、中野に表向きは運送業者で、裏では人さらいを請け負ってる業者があるんですけどね。風の噂じゃあ、社長も社員も全員、怪我して病院送りになったらしいです」
「…………」
「腕の立つ集団で、業界では有名だったんですけど、誰がやったんですかね?」
小虎が横目で俺をみる。俺は明後日の方向をみる。
「まあいいや」
それよりも、と小虎はいう。
「バイク屋の親父から連絡がありましてね、俺が大事にしてたバイクと同じ車種が、ぶっ壊れた状態で持ち込まれたらしくてですね。大切にするって約束で誰かさんに、おさがりであげたと思うんですが」
「あ、電車きた」
俺はそそくさと乗りこんでいくのだった。



