C3 ‐シーキューブ‐
第一章 「布団に移るものを知らない」/ "Night of Rubik's Cube" ③
その笑顔の下で、持っていた
「うーむ、なんでこんな緊張感のあるメシになってるのかわかんないんだが……とりあえず簡単な紹介でもしとくか。こいつはフィア、例の
肉じゃがの肉だけをガバリと取りつつ、このはがフィアに目を向ける。フィアは完全無視。
「んでこっちはこのは。何て言ったらいいのかな……庭にある離れの部屋に住んでて、クラスは違うけど高校の同級生で、昔からの
「──そして、人ではない」
するりとフィアが言葉を奪った。
「……そういうこと。ここでの、お前の
「ふん、そうだろうと思ったわ。でなくては鍋が勝手に壊れるものか。人化できるほどの
「あなたは? と聞いたら素直に教えてもらえます?」
笑顔の問い返しにフィアは鼻息で答えた。
そしてしばらく、
「前例があるから信じられるだろう、と言いたかったわけか。さっきは」
「あ……ああ、そういうことだ。このはは昔からバイトとか人助けとか一生懸命やってたぞ」
「そうですね。もうほとんど、わたしの呪いは解けていますよ」
「ほとんど、か。完全に呪いが解ければ私
「一般的な呪い道具は、呪いが解けたら普通の道具に戻るだけなんだが。親父の言うところによると……人化できるようになった
「ふむ……道具に戻るわけではないのか……そうか」
「正直、不勉強なんで詳しいことはよくわからん。親父が帰ってきたら聞きゃいいよ」
それを聞いているのかいないのか、フィアは「そうか……うむ。そうか」などと
皿に残った最後の料理を口に運びつつ、フィアはさらにこのはを見やる。
「……春亮はさっき、十何年か前からの付き合い、と言った。やはりそれくらいかかるのか」
「元々どれだけ
「モノであった我々をヒトでもあるように変質させるほど蓄積された呪いは、そう簡単に忘れられるものでも、打ち捨てられるものでも、償われるものでもない……あなたには色々気に食わない部分もありますが、その点だけは共通理解が発生するものでしょう。
フィアは何かを言いかけ、しかしぷいと視線を
「……気に食わない部分があるのはお互い様だ」
「まあ、気長に頑張るといいですよ。特に協力できることはないと思いますけど」
それから
「そだ、別に今日でなくていいんだけどさ。いらなくなった古い服とかこいつに持ってきてやってくれないか? サイズは合わんだろうけど、ないよりましだろ」
「……小さくて悪かったな!」
「具体的な部位のことは何一つ言ってないっ!」
テーブルの向こうから飛んできた空の湯のみを
「はぁ……仕方ないですね。じゃあ近いうちに」
「頼むよ」
「そう言えば今夜はどうするんですか。寝るところとか」
「え? いや別に……ここの空いてる和室とかに」
「こ、ここに泊まるんですかっ? そ、それはまずくないでしょうかと思ったりしますですけども!」
「だって離れの部屋は空いてないだろ。
アパート的な造りの離れには二つの部屋があり、このはの隣の部屋にも実は同居人がいる。月の半分ほどは別の場所で寝泊まりしているため、あまり同居人という感じはしないが。
「そうだ、私の
「償い?」
聞き返すと、案の定
「忘れたとは言わさんぞ! お前、私の、私の
いや待て、あんときのお前はただの箱だったし!? と春亮が反論しかけたとき、ごとん、と音がした。見えるのは
「うあああああん! 二人はもうそんな関係ぃっ!?」
顔を押さえたまま、このははどたばたと居間を走り出ていく。
玄関が乱暴に閉められる音。フィアが満足したように
「何か知らんが勝った。気分が良い」
◆
無機色の
そこから感じるのは無変化と
ただ、冷たい寒い暗い冷たい寒い暗い冷たい寒い暗い冷たい寒い暗い冷たい寒い暗いと。
囁き続けた──
目覚めた。暗い和室には何もない。与えられた
夢の
冷たく──寒く──暗い、と思ったのだ。
彼女は静かに
少年が寝ていた。不可思議に腰を
彼女は白い
誰かの、ぬくもり。
それは、たぶん、初めて触れた。
◆
翌日の昼休み。弁当箱の



