C3 ‐シーキューブ‐
第一章 「布団に移るものを知らない」/ "Night of Rubik's Cube" ⑥
首を
「……。……。……。はっ。こんなことをしている場合ではない」
ふと我に返って
「なんとまあ、派手だな。これくらいやらんと
洗濯機は山のように泡を吹いていた。しかも
ともあれ、洗えば干さなくてはならない。洗濯機に沈んでいた服を
「これで最後、と……おう。
自分の銀髪の向こうで、洗濯物がぱたぱたと牧歌的にはためいている。この光景を作り出したのは自分なのだ。そう思うと不思議な満足感が胸の中に生まれてきた。
だが、完全なる作戦の成功を確信して
一枚のタオルがふわりと舞い上がった。追いかけるが手が届くはずもなく、それは家の屋根に着地。顔を
「……ええと……その、なんだ。服は風が吹き乾く。つまり高いところのほうが早く乾く。大局的には、むしろあのほうがよい……ような気がするな、うん」
無理矢理自分を納得させ、枝の先端ではためく服を見ないように家のほうへ向き直る。
すると、そこで視界に入ったのは──
まずは居間。
何かが屋根から落ちるのに気付いて見上げれば、それは砕けた
時ここに至り、初めてフィアは思った。不可思議なことに、いろんな部分が掃除の前より散らかっているように見える。有り
「ひょっとして……私の仕事はあまり
その問いに対する答えは、家の外から聞こえてくる二人分の足音。
フィアはゆっくりと縁側に上がり──
ポルターガイストと宇宙人。はたして説得力があるのはどちらだろう。
そんなことを考えながら、冷たい縁側に額をつけてうつ伏せた。
◆
「うーむ。ベタすぎる気がしないでもないが、やっぱあれは、そういうことなのか……?」
庭の木に引っ掛かってはためく洗濯物を見ながら、
「遊びじゃあ、洗濯機にちゃんと洗剤なんて入れないですよ……量はともかく。見てくればわかりますけど、今はカニさんみたいにぶくぶく言ってます」
かに、とこのはは頭の横で指をチョキにする。春亮はルービックキューブを拾い上げた。
「ったく。どっから見つけたんだ、こんなの」
「あの、春亮くん……覚えてます? わたしがここに来たときのこと」
「まぁ、なんとなくは。お前も最初は色々変なことやったよなぁ」
彼女がここにやってきたのは、春亮が小学校に入るか入らないかの
「やっぱり。忘れててほしかったんですけど……今は、それでよかったかなと思います」
「なんで?」
「ふふ。昔のわたしに対して言ったのと同じことを、フィアさんにも言ってあげればいいんですよ。それで万事解決です」
「覚えてないぞ。なんて言ったっけ……?」
「まぁ春亮くんは昔から変わってないので。深く考えずに思うままを言えば大丈夫ですよ」
それからこのはが片付けを手伝う提案をしてきたが、丁重に断る。それは自分一人がやるべきことのような気がしたのだ。彼女もそれ以上食い下がることはなかった。
このはが離れの部屋に帰っていくと、春亮はルービックキューブを置いた。天井を見上げる。
「やれやれ。どうすっかなぁ……」
そしてその夜。
「おい。起きてるか」
「うるさい。寝ておる」
「返事できるなら起きてるじゃねーか」
「うるさい黙れ。
「はいはい。で、なんだ、何か
数秒の間があり、「あるものか」と吐き捨てる言葉が返ってきた。それならいいけどさ、と春亮は息を吐く。まったく、意固地というか何というか。
「お前はともかく、俺にはちょっとだけ言うことがある。まぁその……悪かったよ」
返事はない。仕方ないので一方的に
「わかってたけど、忘れてた。お前は人みたいだけど、人じゃなくて──でもやっぱり人だから、最初は苦労するんだと思う。わかんないことがあって、色々失敗しまくって、
「何だかわからんが、あのウシチチと一緒にするな。不愉快だ」
「へいへい。つまりだな……
その数分後、フィアの部屋の障子が音もなく開く。しばらく様子を
袋の中身は服。多少大きめではあるが、厳密なサイズにあまり左右されないワンピースが中心だった。さらには新品であろう、ビニール袋に包まれた下着も。そこでひらりとメモが落ちる。『お子様には下だけで充分ですよ』……
「死ぬれ!」
反射的にメモを
最後まで読まずに
紙袋に入っていたのはそれだけではなかった。昼間に見た立方体の
「……おせんべ」
腹が鳴った。昨日食べつくしたと言っていたから、春亮がわざわざ買ってきたのだろう。
「ふ……ふん。
ぶつくさと言いつつ、手は包装を破っている。口元からは
「ぬ。
暗い部屋に二つの音を響かせながら、フィアは思っていた。
仕方がない。ここは



