C3 ‐シーキューブ‐
第二章 「どこに、なにを、なにか」/ "When contents of the cube are exposed" ②
「そう、反社会的で有名なお方。ドナスアン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド
そう言って、後部座席の客はまた笑った。何が面白いのかは運転手にはわからなかった。
「日本へは観光ですか」
「いえ。仕事のようなものですわね」
「それはご苦労様です。ええと、どのようなお仕事を?」
奇妙な姿の美女が顔を上げ、ミラーを介して運転手に
その目を見た瞬間、今までの会話で
逃げたいという気持ちがアクセルを踏ませる。ああ、やっぱりだ。こんな人間がまともであるはずがない。こんな、楽しく虫を踏み
「
◆
一人で家に残されて、数時間。テレビにはすぐに
「ふぅ。
昨日と同じ
「……つまらん」
顔を
「なんというか、不公平ではないのか?
ぶつくさ
「そうだ。
思いつきに独りで
「さて。どうする……?」
なんとなく空を見上げながら考える。そしてふと、答えがさりげなく用意されていたことに気付いた。にんまりと笑う。
そこに見えていたのは、空と──その広がりを視界の端で
じゃんけんに負けてジュースを買いにいった
「どした、泰造?」
「なぁ、春亮よぅ……
「な、何言ってんだお前……」
春亮がきょとんとした目を向けると、突然に泰造はその首を絞めてきた。
「なんで! お前! ばっかり!」
「グぇ、ごほっ!? こら
「自分の胸に聞いてみろ! 貴様、このはさんだけでは
「だから何のことだか俺にはわからブヒュュェッ!?」
「うわ汚っ!」「こら
春亮は
「おい、さっきの男。案内してくれるのではなかったのか……っと、ここにいたのか」
平然とした顔でフィアが歩いてくる。しかもなぜか制服を着ていた。
「ふふふ。来てやったぞ、春亮」
胸を張り、自慢げに彼女が言うと──教室の空気が一瞬で停止。
「フィア!? なんでお前がここにいるッ!?」
「なんでも何も、お前、『学校に来るな』とか『外に出るな』とか一言も言わなかったではないか。ならばどこに行こうと私の勝手だろう」
「当然すぎて言わなかっただけブハ!」
横に座っていた渦奈が、春亮の頭を適当に
「うわー、うわー! 超キレー、超
「むが。おい女、気安く触れるな」
「
「どういう関係……なのだろうな。大まかに言えば、今私はこいつの家に滞在していて」
「
「
「ほぅ……一緒に住んでいる、というわけか。それは……学級委員長として、いくつか確認せねばならないことができたな……!」
ゆらり、と妙な気迫と共に
ぐったりしつつ、春亮はとりあえずアイコンタクトで「余計なことは言うな」とフィアに伝える。フィアも
ともあれ、フィアを囲んだ騒ぎは当然のように廊下にも届く。
「ああーっ!?」
声のほうを見ると、顔色を変えたこのはが
「ど、どうして?」
「勝手に来やがったんだ。
「任せられても困りますっ!?」
そんなとき、このはの登場に人格を変えた男が一人。
「はっ……このは、さ、さんっ。こ、こんにちはっ。うちのクラスにようこそ! 男が半分もいてむさ苦しいところですがお気になさらず! ど、どんな
このはは
「えと、
なるほどわかりましたお任せを! と、期待通りに泰造はフィアを囲む輪を崩しにかかった。ぶーぶー発される文句を気にも留めず、強引に生徒
「ん──何だ、お前もおったのか。来なくてもよいものを」
このはの
「ほら机机。二人分プラスだ」
「あ、おい泰造。俺達は……」
「え? 一緒に食うんじゃないのか? 俺とか
「昼飯か。私は別に構わんぞ。弁当箱を見つけたので詰めてきたのだ」
勝手にフィアが答えてしまった。ここで「どうしても三人だけがいい」と拒否するのも怪しいだろうか。けれども、こうなった以上は一瞬なりとも
春亮は席から立ち上がり、さりげなくフィアの頭をロックして歩き始めた。
「案内がてらジュース買い直してくるよ。席作っといてくれ。このは、行こうぜ」
「あ……はい。すいませんけど、これ」
持っていたカツサンド×3を泰造に渡し、このはも春亮の後をついてくる。廊下に出ても、当然のようにフィアに視線は集まってくるが──とりあえずそれは無視だ。
「お前なー、何考えてるんだよ」
「うん? だから言ったであろう、来てはいけないと言われなかったから来た、と。やっぱり
「わたしだって最初から学校行ってたわけじゃありませんよ……」
「まったく……いろいろ常識とかで問題があるから、まだ外に出るのは早いってはっきり言っときゃよかったのか」



