1:8.6周年記念SS
エイティシックス8.6周年記念SS 貴族if3
前回までのあらすじ:保護者の大貴族一同から仮装用ドレスを送られたエイティシックスが、素敵な衣装にテンションあがってギアーデ皇国ごっこをしているよ!
「ここであったが百年目、今日の剣術の授業でこそ決着をつけてやるぜ、ライデン卿! いざ尋常に勝負!」
「おう、かかってこいトール卿! 今日も返り討ちだ!」
尚武の国の貴族服を模したとはいえ、仮装なのでさすがにサーベルは付属していない。
よって、適当なハタキを剣に見立ててトールは言い、ライデンもまたホウキを構えて応じる。二人の衣装は奇しくも、肋骨飾りにサッシュ飾りがエキゾチックな異国の軍服風の仕立てで、ライデンが暗い赤の地に黒のモールの、トールが濃いマゼンタに鈍い金のモール飾りの重厚ながらも華やかな仕立てだ。共に長身の少年たちに、強い色彩の組合せが鮮やかに映える。
衣装に引っぱられた獰猛な笑みを浮かべて、ライデンは言った。
「学園ものなんだな、これ」
「いや、だってお貴族さまの詳しい生活とか知らねえし」
つい、ツッコんでしまったライデンに、小鳥の生態とかよく知らないし、と同じくらいの淡い困惑でトールも首をかしげる。
ちなみに二人が向かいあっている場所は学校の廊下で、他の教室でも講堂でも階段でもなんならこの廊下の別の場所でも、仮装姿の仲間たちによる謎のごっこ遊びが進行中である。
「つか、ライデンも意外と乗るんだな、こういうの」
「楽しむとこだろ。服カッコいいしよ」
普段ならまず選ばない色でデザインで、それが意外にも似合っているからライデンとしてもまんざら悪い気分ではない。孫が世話になっているから、と自分やセオたちにも衣装を揃えてくれたノウゼン候家は、どうやら大変腕のいいデザイナーを抱えているようだ。
その衣装で、ほら、とライデンはノリノリでホウキ剣を構え直した。にっと笑んだトールがハタキ剣で応じる。
ジャキィィィィン! と、幼子のチャンバラを見守る顔で一部始終を見ていたリヒャルト少将が、とりあえず声で効果音をつけ加えてやった。



