1:8.6周年記念SS
エイティシックス8.6周年記念SS 貴族if4
前回までのあらすじ:保護者の大貴族一同から仮装用ドレスを送られたエイティシックスが、素敵な衣装にテンションあがってギアーデ皇国ごっこをしているよ!
「あたし、クレナ・ククミラ、狩猟が趣味のおてんば令嬢! この貴族学園を卒業したら、見聞を広めるべくグランドツアー? に出るの! ゾウとかトラと戦うんだ!」
装飾としてあえて外側につけたコルセットベルトに足首が見えるくらいのスカート丈、足元は可愛らしい編みあげブーツで固めた、上品ながらも絶妙に活動的なドレスを翻してクレナはポーズをとってみる。
近くにいたクロードを、そのままの勢いで手で示した。
「学者さんを目指してるクロードも、えっと、魔術の触媒を探すのに一緒に行くの!」
「いきなりファンタジー設定が生えたな!?」
あと学者設定は確実に眼鏡だ。
クレナを含め、裸眼連中はいったい眼鏡を何だと思っているのかとクロードは思う。
けれどクレナはけろりと言う。
「だって服、魔法使いっぽいし。クロードそういう服似合うね」
夜空めいた濃い青に金の刺繍を散らしたフロックコートである。クラシカルなゆったりとした仕立ても相まって、なるほど、魔法使いっぽい。
「あー……」
あんまり平然と、何の気なしに「似合う」などと言われたものだからクロードは少し言葉に詰まる。
衣装の青に映える赤い髪を軽く掻き回してから、大仰に気障な表情とポーズと作ってみた。
「ありがとよ。……おてんばなのはいいけどな。あんまりレディ・グレーテを心配させるもんじゃないぜ、レディ」
全力で出してみた無駄にいい声に、今度はクレナがちょっと顔を赤くして言葉に詰まった。
で、「よっし!」とガッツポーズをとるとかいう台無し行動をしたせいで、次の瞬間クロードは抗議の消しゴムを投げつけられた。
もちろん、額のど真ん中にみごと命中した。



