1:8.6周年記念SS
エイティシックス8.6周年記念SS 貴族if5
前回までのあらすじ:保護者の大貴族一同から仮装用ドレスを送られたエイティシックスが、素敵な衣装にテンションあがってギアーデ皇国ごっこをしているよ!
「悪い遊びを覚えたものね、セオト卿。お父さまのエルンスト卿が泣くわよ」
鳥籠型のペチコートで贅沢に膨らませながらもくつろいだ印象の、胸元の開いた夜会ドレス。黒く染めたエキゾチックなダチョウの羽の扇(羽はフェイク)を揺らして、悪い笑みでアネットは言い。
「そっちこそ、アンリエッタ嬢。ご友人のレーナ嬢が知ったら、どんな顔をするかな」
ウエストコートの上から鮮やかな五色の唐草柄の、異国情緒漂うドレスガウンを着こなしたセオが冷ややかに嗤う。
灯を絞り、厚いカーテンも閉めて暗くした室内(学校の視聴覚室)。テーブルを挟んで向かいあう二人の間には真新しいトランプの一揃いが山札と捨て札に分かれて積みあげられ、二人の手の中にも配られた手札の数枚。
貴族階級の退廃的かつ浪費的遊戯、――賭博である。
なお掛け金がわりのコイン型チョコレートはちょうど切らしていたので、お互い手持ちの適当なキャンディ類を積みあげている。宝石や砂金の大粒でも賭けているみたいで、これはこれでそれなりに雰囲気が出ていたりする。
こういう場につきものの煙草は二人とも吸わないので、口寂しくなるとたまに包みを破って食べていたりするのはさておくが。
ルールに則って何度かカードを交換し、扇状に広げた手札を撫でて、最後にアネットとセオはいかにも悪辣な笑みを交わした。
「覚悟はいいわね、セオト卿。――いざ!」
「ショウダウン!」
…………。
「……いや、あのさアネット。こういうのは運だってわかってるけど。……3のワンペア?」
「そっちこそ、それフォーフラッシュでしょ。役できてないじゃないの」



