4:2024年 台湾サイン会のお礼SS
シェア・アンジュとダスティン
「痛っ、いった、いたたたたたたた……!」
まあ、よく考えるまでもなく〈レギンレイヴ〉の操縦が体に良いわけもない。
なにせ多少上等なだけのアルミの棺桶、正規軍人さえぶっ壊した誉れ高き搭乗者クラッシャーだ。エイティシックスは耐えられるというだけで、負荷は相応にかかっているのだろう。
「や、ちょっ、そこも痛いっ、痛い痛い痛い痛い痛い」
それにしたって普段はおっとりと、そして泰然と構えた大人びたアンジュが、もう見る影もなく小さな子供みたいにキャーキャー騒いでいるのはなんというか、とてもかわいい。
並んで足のマッサージを受けている、足湯とマッサージのお店である。傍らで涼しい顔で無言でいるダスティンに、ゆったりリクライニングして座っているので顔は見えないが恨めしげにアンジュが言う。
「だっ、ダスティン君は痛くないの……!? ぜんぜん平気そうじゃない……!」
まあ実際、部屋の向こうの方ではどこぞの編集者らしき人物がマッサージを受けながら楽しげに談笑しているので、平気な人間は平気なのだろうが。
ともあれ涼しい顔のままダスティンは答える。
「アンジュ、……実は俺もすごく痛い」
なにしろ正規軍人さえぶっ壊した誉れ高き搭乗者クラッシャーに、エイティシックスでもなく乗っている唯一の共和国人なのである。主に体幹部に相当する部位がそれはもう痛い。
ただ、何か男のプライド的なものと、隣のアンジュがかわいいのとで、ずっと我慢しているだけで。
「それにこう、……終わったら全身すごく軽くなるんだろうなって実感が今からしてるから」
「それはたしかにそうよね。先にマッサージしてもらった頭とか肩とか、すっきりしてるもの……いったぁい!」
「あ痛っ!」
つられて結局、ダスティンも悲鳴を上げた。経絡ー、とマッサージ師さんが笑う。



