1:8.6周年記念SS
エイティシックス8.6周年記念SS 貴族if8
前回までのあらすじ:保護者の大貴族一同から仮装用ドレスを送られたエイティシックスが、素敵な衣装にテンションあがってギアーデ皇国ごっこをしているよ!
学舎の中央にはひときわ高くそそり立つ時計塔があって、校舎から直接はあがれないが、屋上を経由して入口に至る通路がひっそりとある。
その、ただ一つの通路に自分を迎えるように立つ双影に、かっちりと体に添う近代的なフロックコートを纏った少年、リトは足を止める。
「……はじめまして、先輩がた」
応じるのは、長身に映える白と銀の騎士服のユートと、焦茶の瞳を際立たせる濃緑に金のデイドレスのミチヒだ。どちらも格調高く、そしてどこか権威的な服装である。
「君が新入生か、話には聞いている。……ようこそ、後輩」
「リュストカマー学園生徒会〈時計塔〉はあなたを歓迎するのです」
「ありがとうございます。執行特待生リト・オリヤ、〈時計塔〉に就任します」
上級生たちの言葉に低頭で返し。
それからリトは首を捻った。
「俺が設定しておいてなんだけどさ。……生徒会で執行って、何を執行するんだと思う?」
当たり前だが、問われたユートは肩を落とす。リト本人がノリノリで、リト自身とユートとミチヒに学園の裏の権力者・生徒会役員のロールプレイを割り振ったというのに。
「自分で言っておいて聞かないでくれ、リト。というか突然現実に戻らないでくれ、恥ずかしくなるから」
一方、ミチヒは澄まして肩をすくめる。
ちなみに三人が今いる通路は、別段秘密のルートとかではなく単なるメンテナンス通路である。校舎から入れないのも、もちろんこうやって用もないのに入りこんでふざける者がいるからだ。
「それはもちろん、なにかを執行するんじゃないのですか。宿題とか」
ああ、とユートもうなずいた。なるほど。
「それに補習か。常連のリトには相応しい役目だな」
「ええー……。てか、いきなり現実に戻るのやめてよ……」
さらっとかまされた反撃に、言われたとおり授業中居眠りしては補習を喰らう常連のリトは思いきり顔をしかめる。



