第三種接近遭遇 ⑥
春からのテーマである「
「あきほー。いるならドア開けてくれー」
ついていた。新聞部が不法占拠している部室のドアが開いて
「なにそれ」
浅羽は部室に入り、テーブルの上に荷物をどかりと置いた。そばにあったパイプ
「うあー重かった」
図書室から借り出してきた、卒業アルバムの山だった。二十冊ほどが積み重なって50センチほどの高さになっている。紙がいいのでえらく重かった。
「まだこれで全部じゃないんだ。これと同じくらいの山があとふたつある。古い学校なんてろくなことないな」
晶穂は当惑顔で、
「だから、どうするのよこれ」
「あ、部長からまだ聞いてない?」
「何を?」
「七月号の企画。『
「え? 次の企画って、コックリさんがどうしたとかいう──」
「『コックリさんに聞け! 試験問題予想実験!』だろ。あれはボツ」
「どうして!?」
「だって浅羽、色々調べたり準備したりしてたじゃない。あれぜんぶ無駄ってこと?」
「しかたないよ。部長だって何の理由もなくボツにしたわけじゃないし。ほら、ぼくとか部長ってたまに部室に泊まり込んだりするだろ?
ちなみに、浅羽と晶穂の担任で三十五歳で独身で「科学の
「河口さ、そのこと職員朝礼でちょっと話したらしいんだ。部長も職員室に呼びつけられて担任からクギ刺されたらしいよ。なんだかめんどくさいことになっちゃいそうだったしね、試験問題
「部長が?」
「部長が」
晶穂は
「──でも、ちょっと信じられないんだけど。あの水前寺邦博ともあろう者が先生にクギ刺されたくらいであきらめるなんて」
浅羽は笑って、
「まあ、あの人はよくわかんないから。悔しがったりとかは全然してなかった。ひょっとしたら、部長にとってはコックリさんでも
むしろ、内心で悔しがっているのは自分の方だと浅羽は思う。
鳥龍茶を一気に飲み干し、「さて」と勢いをつけて浅羽は立ち上がった。卒業アルバムの山の上から何冊かを手にとってばたんとテーブルに置く。
「でも、今度のもなかなかいい企画だと思うんだ。ほら、古い写真ってそれだけでちょっと気味が悪いところあるしね、それっぽい写真にそれっぽく囲みをつけるだけでもかなり説得力のある一枚にはなるはずだよ。それがほんとに
「とか何とか言っちゃって」
「なんだよそれ」
大切にして下さる方のみにお
「なあーにが『本物かどうかはともかく』よ。わかってんだから。もうバレバレなのよ、あんたいっつも『ぼくはしかたなく部長につきあってるんです』って顔してるけどね、ほんとはあんただって嫌いじゃないのよそういうの。超能力とか幽霊とか」
生後二ヶ月オス雑種、責任をもって飼っていただける方に、
「その企画あたし手伝わないからね。ふんだ、知らないから。アルバムそんなにいっぱい借りてきちゃってさ、ぜんぶに目を通し終わるころにはきっと
そのとき、
「笑止!!」
おそらく、ドアの外で盗み聞きをしていたはずである。
「君が一体どの口で改革を語るのか!! 君の改革とは運動部の勝った負けたに一喜一憂することなのか!!
ドアを
浅羽は水前寺の勢いに
「──な、なんかいいことあったんですか?」
晶穂は冷たい
「ばっかみたい」
ふふん、と水前寺は笑い、
「紙名から『電波』の文字を
そこで晶穂が
「わたしは新聞部を改革したいんですっ!
突如として蒸し返された議論に板挟みにされながらも、
「なんだ、部長もやっぱり『太陽系電波』に未練あったんですか」
「おうよ。たっぷりとな。ときに浅羽特派員」
「何かねそれは」
浅羽は戸惑う。そもそも、卒業アルバムを図書館から借り出してこいと浅羽に命じたのは水前寺なのだ。
「──卒業アルバムですけど。図書館から借りてきた」
「浅羽特派員。なぜそんなものがここにあるのかね」
これには隣の
「え──だから、この中から使えそうな写真を洗い出すんでしょ?」
「浅羽特派員。使えそうな写真、とは一体何の話かね」
浅羽は思わず晶穂を振り返り、晶穂は「こっちに振られても」という顔をした。二人同時に、
「部長の発案じゃないですか。『卒業アルバムに見る
「浅羽から聞きましたよ? 前の企画はボツにしたんでしょ?」
水前寺は長々とため息をついた。夕日でも見上げるような目つきであさっての方角を見つめ、ささやくような声で「ボツだ」とつぶやく。



