第2話 絶対に炎上します ④

『でね、その中で彼が急に、「配信に興味ある?」なんて聞いてきて……。ほんといきなりでした。どういうこと!? まさか気付かれた!? って心臓飛び出しそうになって。でも、なんとか冷静をよそおって、興味ありますよ、結構見ます、みたいに話を合わせたんです。そしたら今度は「自分でやってみたことはないの?」って……。もう、頭の中真っ白でした……。心臓バクバクだし、ぶわーってあせ出るし……』


 ……それは、今現在のこっちも同じだった。

 頭真っ白。心臓バクバク。あせもやべえ……。


『でね、これ以上まれたらごまかしきれない。どうしよう、ってあせってたら……せんぱいが……「実は配信やってみたくて」「くわしい人探してるんだ」って。……そう。それだけだったんです。彼が配信やってみたかっただけ。うん。このラジオに気付かれたわけじゃありませんでした。わたしのかんちがいでした……。ということで、びっくりさせてすいません! そんなことがあったって報告でした。あー……もう本当に、ほっとしました。よかったー、完全にバレたと思いました……』


 深く息をすサキ。

 そして、彼女はふと思い出した様子で、笑いながらこう付け足す。


『あ、ちなみに彼の方の配信は、止めた方がいいって言っておきました。配信者同士になっちゃったら、見つかる可能性上がりそうですし……』



 ──一度、大きく深呼吸する。

 サキの言ったことを、頭の中でかえしてみる。

 ……うん、気持ちは落ち着いた。

 それと同時に、俺の中でも結論が出た。

 ──だから、俺はそれを。判明した事実を思わずさけぶ。


「……本人じゃねえか! やっぱり、本人じゃねえか!」


 ──もう、疑いようがなかった。

 ここまでサキの話と今日の出来事がいつしてるんだ。

 これはもう、確定だ!

 サキは……なんだ……!

 スマホからは、彼女の声が流れ続けている。けれど──今はそれも耳に入らない。

 それどころじゃない重大事実が判明したところなんだ。今はもう、そっちのことだけで頭がいっぱいだ……。

 ……ていうかあいつ、そんなにあせってたのかよ!

 さぐり入れてる最中、全然そんな風に見えなかったぞ!

 マジで、完全にいつも通りにしか見えなかった……。いつも通りの、冷静でそっけないにしか……。

 ……こわ

 これだけあわててて、あんなに冷静なりできるのかよ。こわ……。

 ていうか、それをちょっといてたっぽいこわ……。

 女子ってすげえな。そこまで人の気持ちがわかるものなのか……。

 ……そして、そんなこと以上に。

 そういうおどろき以上に、俺には考えなきゃいけないことがあって、


「うわあ……どうしよう……」


 こしけたまま、俺は思わず頭をかかえてしまった。


「これから俺、どうやってあいつに接すればいいんだ……」


 ──そう、それがわからないのだ。

 うっかり知り合いの配信をいてしまった。それだけでまあまあ気まずい。

 そのことを本人に言えばいいのか、それとも知らんぷりすればいいのか。かなりなやましいところだ。

 しかも……今回、は俺のことを配信で話しているわけで。

 そのうえ、「好きな人」として俺をあつかっているわけで……。

 ……う、うおお……。

 そのことを考えると、マジでどうすればいいのかわからなくなるな。

 ドキドキするし、頭も顔もすげえ熱いし……。

 ……ていうか、全然気付かなかった。

 そんなり、一回も見せられたことないし、むしろ冷たくあしらわれることばかりだった。


「……いつ俺を好きになんて、なったんだろう? そんなタイミングあったか?」


 自然と、そんな疑問が俺の中に生まれる。

 俺とは、あくまで図書委員同士、というつながりしかない。

 それ以外の理由で会ったことは一度もないし、会話をするのも図書室かその帰りのろうくらいだ。

 なのに、好きになられる機会なんてあったっけ……?

 ……それに、


「出会ったころって、あんな感じだったし……」


 そうこぼし、うでを組んで俺は思い出す。

 半年ほど前、春。

 俺とが出会った当時のこと──。

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恋は夜空をわたって2の書影
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