第一章 保父になりたい男 ②
斎藤は口を
「俺だって
斎藤はキョロキョロと
鈴雄は
「おっありがとよ」
斎藤は満面の笑みを浮かべると
「お前にできるか?」
ニヤッと笑うと
「まあな。落第の一回や二回なんて長い人生の中じゃほんの
「どうして僕なら平気と言い切れるのか児童心理学の先生として心理学的、学術的
「簡単に言うとだな」
「この学校の男の特徴って知ってるか?」
「さあ」
「女が多いことに興味を覚えて入学して来た
「そいつらがどうしたの」
「大きく分けると二つに分かれるんだ。母性愛に目覚めた奴と父性愛に目覚めちまった奴。母性愛に目覚めた奴はまあワルガキ専の男が周りからオカマとかホモとか言われる奴らだ。彼らは女子の中でも周りを意識しない。完全に
斎藤はシナクチを口に放りこんだ。
「お前は父性愛に目覚めたタイプだ。だから
「あのね~~~。問題は僕一人じゃないんですよ」
「家族か……。だがまあこの不景気に保父になるなんて言い出した
もっとも生まれつき
「そうそう、お前に言っておかなきゃあかん」
斎藤は
「今日からサークルの
「えっ?」
鈴雄は訳が分からないといった顔を見せた。
「何も知らない新入生がわんさかいるんだ。サークルを通して
「ちょっと待ってくださいよ」
鈴雄は斎藤の言葉を
「確か僕はどうしても人数が少ないからって仕方なしに名前を貸しただけだったはずですよ。活動だって今まで一度も参加してないし。何もわざわざそんな僕を引っ張り出さなくても」
「
「もともと昨年の二年生が二人で盛り上がってたサークルなんだ。卒業しちまった後は誰もいない。つまりだな」
斎藤は腕を
「君が部長だってことだ」
「ちょい待ち!」
鈴雄は
「斎藤先生。気は確かですか?」
「私はいつでもこれでもかってくらい確かな気を保っていると自負しているがな」
「子育て研究サークルでしたっけ」
「そうだ」
「僕にその部長をやれとおっしゃってござんすんか?」
「そうだ」
斎藤はマリアナ
「
鈴雄は力
「僕はサークル名以外は何も知らないんですよ。活動内容、活動日、会費」
「活動内容、子守。活動日、
どうだってばかりに鈴雄を見下ろす。
「とにかく無理なものは無理なんです!」
かじりかけのあんパンを袋に戻すと鈴雄は立ち上がった。
「
斎藤は冷静な口調で背中から声をかける。
「今後の児童心理学の試験のことなんだが………………事前に俺が
時代劇でよくある笑みを浮かべる斎藤。
「本当はいけないことなんだが、まあもしお前が部長という大役をやってくれると約束してくれるならばだな」
ピクピクピク。
鈴雄の
彼の頭の中では激しい
「まっ気が向いたら午後の授業終わったら俺の所へ来いや」
斎藤はまるで人生を
「人生助け合いだよ。分かるね」
3
「人生助け合いだよ。どうやら分かってくれたようだね」
やはり
「さあこれを持って校門の所でよろしく頼むよ」
斎藤から手渡された大きな旗にはへタクソな字でこう書かれていた。
『子育て研究サークル。会員募集中』
「目標五名! はりきって行こう! 希望者には住所とか電話番号このノートに書いてもらってくれや」
どだい
薄暗くなった校門の
現在五時三十分。
鈴雄が校門でこの
川の流れのように流れた二時間が無意味に終わったのは手にしたノートが白紙であることから
鈴雄の前をたくさんの人々が通り過ぎていった。
そのかわり校門を出たすぐの所でBMWのスポーツカーの
鈴雄はがんばった。
それなりにがんばった。
誰も彼を
ルックス、学力、その他モロモロ。
勝ち目のない相手を前に必死に旗を振った鈴雄の姿は
ただその素晴らしさに気がついてくれる
そして誰もいなくなった。
鈴雄は
「チクショ~~~」
「学歴がなんだ! 保父目指して何が悪い! 車持ってなくて何が悪い! 金持ってなくて何が悪い! 人間の価値なんてそんなもんじゃ測れないじゃないか!」
ひとしきり
喚いてはみたが鈴雄は理解していた。
自分の頭が悪いことも。将来性がないことも。
「まあくよくよしててもしょうがないんだけどね」
立ち直りが早い男だった。
「結局白紙のままか」
ノートに目を落とす。
白紙は目が痛くなるくらい白紙だった。
そんな白紙を見ていると
鈴雄はブロック



