第一章 保父になりたい男 ③
昔覚えた絵描き歌なんぞを書き
そんなお
「何なさってるんですか?」
鈴雄は顔を上げた。
ロングヘアの上品そうな顔がそこにはあった。
清純そうで純情そうで、
鈴雄は胸がドキドキするのを感じた。元来
少女はしばし鈴雄の顔を見ていると何かに気がついたかのように口元に笑みを浮かべた。
「もしかして1年K組の方ですか?」
「え? ええ」
「なんだぁ。そうだったんですかぁ」
少女はため息を
「今日の授業の時、
「って、君もK組なの」
「はい」
少女は
「今日
礼儀正しくお
いまどきこんないい
鈴雄は
「昨年からワルガキ専でお世話になっている
早口にまくしたてた後、鈴雄は
それは伝説のサーファー、まさのりまんでも乗り越えることは不可能だろう。
落第したことがばればれではないか!
しかし
「じゃあ先輩なんですね。よろしくお願いします」
再びお
ねえあんた。今時こんないい
鈴雄は道ゆく人々にそう言って回りたい
「これからもいろいろお世話になると思いますけど。どうか
それから朝香は興味深そうな顔つきで鈴雄の後ろの旗に目を向けた。
そして
「子育て研究サークルってどんなサークルなんですか?」
「え、ああこれね」
鈴雄の中の
しかしすぐに自己
こんないい娘を
一生
鈴雄は心の中でニヤリと微笑んだ悪魔くんをどつき飛ばした。
「
そこで鈴雄は声を
「実際は顧問の教授が奥さんと外食する時とかの子守に使われるだけの意味のないサークルだよ」
「鈴雄さんはどうして入ってらっしゃるんですか?」
「昔、名前を貸してたんだ。そしたら先輩が卒業して知らない間に僕一人になってた。なんか知らないうちに部長ってことになっちゃっててさ。その後は川の流れのように流れて今日に至る」
「じゃあ鈴雄さんしかいないんですか」
「今のところはね。多分これからもそうだろうけど」
「私入りたいな」
「そうそう、普通の人はそう言う……」
先程耳に飛び込んできた言葉がようやく
「今……なんて言った?」
「入りたいって言ったんです」
聞き間違いではなかった。
鈴雄は口をあんぐりと開けた。
「サークルに入れてくれませんか」
鈴雄は
メッチャ痛かった。
この痛みは夢ではない
それでも信用できない鈴雄はさらに校門にごんがごんがと頭を打ちつけた。
やっぱり痛かった。
それでやっと気がついた。
これは夢という名の
「あの、本気ですか?」
鈴雄がおずおずと
その顔に
「それじゃ。ここに名前と住所を」
鈴雄はあわただしい動作で落書きの書かれたページを破りとると、白紙のページを朝香に突き出した。
「あの、ボールペンか何か持ってます?」
「ええ、ああどうぞどうぞ」
胸ポケットに突っ込んであったボールペンを
つらつらと名前を書き始める朝香を鈴雄は
もしかして、僕はこの訳の分からないサークルに入ってラッキーだったのかもしれない。
これからこのおしとやかで清純で
今までの歴史が
鈴雄の頭に駅前のフルーツパーラーで朝香と
パラダイスだった。
地上の楽園だった。
ブルルルルルルルウル。
鈴雄と
校門の前に一台のスポーツカーが止まっていた。
車関係にはうとすぎるほどうとい鈴雄にその車がどのメーカーのなんていう車種なのかは判断できなかったが、これだけは言えた。
そんじょそこいらの学生が通学用に使っているにしては高価過ぎる
鈴雄はいやな予感がした。
先程までここでサークルの
ドアからジャニーズ系の二枚目長身男が出てきた
こいつが何のために車から出てきたのかを。
「やは」
歯をキラキラさせつつ男は朝香に近寄ってくる。
鈴雄の手の中にリボルバーがあったならば
が、鈴雄の手の中にはくしゃくしゃとなったノートのみ。
男は朝香の前に立つとざ~~とらしく笑った。
「僕は
名門だった。
鈴雄ごときの学力では片足をかけるのも不可能だろう。
うっせーこの歯に豆電球
なんて心で叫ぶがとても実際に口にするようなことはできない。
自分に引け目を感じてるから。
そんな鈴雄を
「まあ
何が理事長の孫で親父は病院の院長だよ。僕のじいさんの名前は次郎長っていうんだぞ。しかも父さんはひどい
「将来は僕も医者になろうかな~~~って考えてる」
森本はハハハハハハと笑った。
確かにそこには通俗的なかっこよさがあった。



