第一章 保父になりたい男 ⑥
もしここを開けた
早いところ病院へ行かなくては。
鈴雄はドアノブに手をかけた。
それでも決心がつかないのか手に力が入らない。
『男ならシャキッとしろよ!』
鈴雄はとりあえずその場でシャキッとしてみた。
それでも決心はつかなかった。
「あぁぁぁ」
鈴雄が頭を
そして飛び出してきた活発そうな小学生くらいの少女は
「お帰り。お兄ちゃん」
絶望だった。
これで確定してしまったのだ。
自分が記憶
鈴雄は
「ちょっとちょっと」
少女が鈴雄の手を
「どこへ行くんですか?」
「止めないでくれ。お兄ちゃんは記憶喪失なんだ。お前のことが何も思い出せないんだ。これから病院へ行ってくるんだ」
「ちょっと待ってくださいよ」
「前々から僕の
鈴雄にズルズルと
「待ってください。待って! わけを話しますから」
「早くしないと今度は別の家族のことまで忘れてしまうかもしれない」
「だから待ってください!」
「実の妹のことすら忘れるなんて僕はなんて男なんだ」
「私はあなたの妹じゃありません!」
鈴雄は足を止めた。
ゆっくりと少女に顔を向ける。
そして
「それじゃあ僕の妹はどこにいるんだ?」
少女はカクンと頭を落とした。
「最初からあなたに妹なんていませんよ!」
少女はそう叫んだ後、ハッと口を押さえて
辺りに自分たち以外
少女は顔を上げると歯切れのいい声で言った。
「ご説明します。
少女は
鈴雄は



