モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する

3章2話

「あ、あの……あんまり、胸ばかり見ないでください……」


 ユーノゥと名乗った彼女は俺の視線に気づいたらしく、顔を赤らめながら両腕で胸を隠した。


 ……サキュバスだし、もっとオープンだと思ってたのに、ちゃんと恥ずかしいんだな。


 ちなみに彼女が誇る大きな胸は、腕だけでは隠し切れず、むしろ腕があてがわれたことでやわらかそうにふくらみの形を変えることになった。


 ……ヤバ、鼻血出そう。


「み、見ないでって言ったのに……。恥ずかし……です……」


「ご、ごめん」


 慌てて視線を逸らす。彼女を不快にしてまでこの欲を満たしたいわけじゃない。


 ……でも恥ずかしいなら、なんで彼女はそんなきわどい服装をしてるんだ? 男の俺に見てくれって言ってるようなもんだぞ?


 ハッとした。まさかこれは、嫌よ嫌よも好きのうち?


 遠回しに誘っているのか? そうか、ストレートではなく変化球のサキュバスだったのか!


『マスター、過程過程』


 志村ー、後ろ後ろ、みたいに言うな。


 結果よりもまず過程なのはわかっている。俺はただエッチしたいわけじゃない、ピュアな恋愛を経てエッチしたい。


 俺はこれでも抜きゲーより純愛ゲーを好んでいる美少女ゲーマーだからな。


「……というわけで、ちょっと聞きたいんだけどさ。恥ずかしいんだったら、そのきわどい格好をやめればいいんじゃ?」


 やめて欲しいわけじゃないですけどね?


「やめたくても、サキュバスとしてやめるわけにはいかないんです……。私って落ちこぼれですから、よけいに……」


 落ちこぼれ……?


「えっと……ユーノゥさん」


「よ、呼び捨てでいいです……。私、19歳のアラタさんよりも、ずっと年下ですから」


 ユーノゥは自分の歳を告げた。


 年齢を聞いた俺は、のけぞった。うちの妹と同い年だったからだ。


 ……うちの妹なんかぺったんこだぞ? まな板だぞ? なのにこのサイズ差はなんだ?


 発育具合がハンパねえ……さすがサキュバス、ビバ異世界!


『マスター、いいかげんマッチングの前に写真以外のプロフィールも確認してください。そこに年齢を始めとした最低限の情報が載っていますので』


「じゃあユーノゥ、またちょっと聞いていいかな」


『ナチュラルに無視しないでください……』


 ナビゲーターの横やりはさておき、ユーノゥに尋ねてみる。


「さっき、落ちこぼれって言ったけど。どういう意味なんだ?」


「あ……その……」


「言いにくいなら、言わなくていいよ。突っ込んだこと聞こうとしてごめん」


 ユーノゥはきょとんとしたあと、表情をゆるませた。


「いえ……謝らないでください。人間と会うのは初めてだから、怖かったけど……アラタさん、優しいです。マッチング相手があなたで……よかったです」


 微笑を浮かべた。彼女の胸みたいにやわらかそうで温かい笑みだった。


『卑猥な比喩を使わないでください、おっぱい星人のマスター』


 無粋なツッコミは無視。


「アラタさんになら……私の悩み、聞いて欲しいって思います」


「あ、じゃあ、マッチングしたのって?」


「はい……。この悩みを、誰かと一緒に解決したいって望んだからです」


『これもプロフィールに載っていた情報です、おっぱいしか目がいかないおっぱいマスター』


 とことん無視。


(ユーノゥはパティアと違って、恋愛目的じゃない……お悩み相談が目的だったんだな)


 だとしても、旅行目的だったマーリィを相手にしたのと同じように、これから仲良くなってそういう雰囲気に持ち込めばいい。


 そのためにも、彼女に関する詳細な情報を知らないといけない。


「ユーノゥ。俺でよければ、悩みを聞くよ」


「は、はいっ……ありがとうございます!」


 ユーノゥは、ぱあっと花のような笑顔を咲かせた。


 よほど嬉しかったのか、ウキウキと身体を跳ねさせる。


 その反動で、目の前の巨乳が上下にぷるんぷるんと何度も揺れた。


 申し訳程度に大事なトコロを隠している服は、もはやはち切れんばかりだった。


 これ以上ぷるんぷるんしたら……本当にはみ出てしまいそうだ……!


『マスター、過程過程』


 あくまで無視。


「じゃ、じゃあユーノゥ。悩みを話してくれるか?」


『マスター。彼女の胸に向かって言わないでください』


 無視……いや、さすがに胸じゃなくて相手の目を見ないと。


 マジメに悩みを聞くつもりだ。ここでふざけるほど俺は下等なおっぱい星人じゃない。


『おっぱい星人であることは認めるのですね』


 今度はちゃんと無視。


 俺と目が合ったユーノゥは、顔を赤らめながらうつむいて、視線を外してしまった。


「……えっと。やっぱり、言いづらい?」


「ち、違うんです……悩みを話したいのは本当なんです。でも私……誰かと目を合わせるのが苦手で……」


 サキュバスらしくない、引っ込み思案な言葉。


 べつに驚くことはしない。変に思うことだってしない。


 実際の異世界は俺の知識と異なるところが多々あるのは、マーリィやパティアと出会ったことで、すでに経験しているのだから。


 むしろ俺は、彼女のサキュバスらしくないところを好ましく思う。


 だって気が弱いのなら、押しにも弱い。


 オープンとは違った意味で、簡単に落とせそうじゃないか……!


『マスター、過程過程』


 はい無視無視。


「あ、あの……せっかく悩みを聞いてくれるのに、目を合わせることもなかなかできなくて……ごめんなさい……」


「いや、ぜんぜん。キミが話しやすいことのほうが、ずっと大切なんだから」


 するとユーノゥは、おっかなびっくりに顔を上げ、上目遣いで俺を見た。


「アラタさん……やっぱり、優しい……」


 ちらちらといった程度だけど、ユーノゥはちゃんと目を合わせてくれた。


「私……アラタさんと出会うことができて、ほんとによかったです……えへ……」


 胸とは違って控えめだけど、胸のぬくもりのように温かいその笑顔に、俺は釘付けになってしまった。


『おっぱいを例えに使うのが好きですね、このおっぱい星人は』


 ついにマスターって呼び名が抜けやがった。


「この悩み……サキュバスの仲間に相談しても、ぜんぜん解決できなかったけど……だけど、あなたなら、もしかしたら……」


 そうしてユーノゥは、恥ずかしそうにしながらも悩みを語り始めた。