モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する
3章8話
その後も俺たちは、VRゲームを楽しんだ。
ホラーゲームやサバイバルゲームをプレイしたが、そのどちらでもユーノゥは俺に抱きついてばかりいた。
ユーノゥはホラーもスリルも苦手らしく、幽霊に怖がったり銃撃に怖がったりと、悲鳴を上げては俺に胸を押しつけた。
ここに至って、俺は悟った。
ユーノゥのおっぱいは、俺の人生だと。
おっぱい星人の俺にとってのすべてだと……!
『さっさとその溶けた脳をどうにかしてください、グダグダと無駄なモノローグを入れないでください、とっとと純愛ゲームの主人公に戻ってください、このソーローが(はぁと)』
……ナビゲーターへのヘイトをためながらも頭を冷やせたので、引き続きユーノゥとのデートを楽しむとしよう。
次は、ユーノゥが好きそうなアニメのグッズショップを巡ることにした。
「なんて奇麗な絵……なんて精巧な作りの偶像……」
タペストリーやフィギュアのウィンドウショッピングをしている最中、ユーノゥは何度も感嘆の息をついてた。
「アラタさんと一緒にプレイしたゲームもそうですけど……私の国と比べて、人間界のオタク文化はずっとクオリティが高いです!」
ユーノゥは感動の眼差しを俺に向ける。
目を合わせるのが苦手だった彼女なのに、いつしかこうして視線を交わすことのほうが多くなっていた。
「アラタさんが、まずはデートだって言った意味……わかった気がします。それって、今のこの気持ちのことだったんですね」
ああ、そうだ。まずは恋心が必要なんだ。
ユーノゥ、キミは俺に恋をしてくれたってことでいいのかな?
「私、デートでますますアラタさんとエッチしたいと思うようになりました……。早く、エッチなコトしたいです……。私のこの気持ちは、デートをする前よりもずっと強くなりました……。だからきっと、デートの分だけ私は気持ちいいエッチができるんだと思います……」
ユーノゥははにかみながらそう言った。
……なんだろう。恋で合ってるような、ちょっと違うような?
これって恋心じゃなくて、ただの性欲?
そもそも恋愛と性欲の差って、どこにあるんだ?
生物学的な愛は、遺伝子による本能だと聞いたことがある。恋愛というのは、子を残すための欲でしかないという、身もフタもない説だ。
その説が本当かどうかは、俺程度の知識では判断できない。
じゃあ、ナビゲーター。おまえはどう思うよ?
ユーノゥの今の気持ちは、恋と呼んでいいものなのか……?
『…………』
はい無視ー。都合が悪い時の対応ー。
ナビゲーターの持つ統計データでも、今のユーノゥの気持ちは測れないってことなのかもしれないが。
「アラタさん、次はどこをデートしますか? 私、アラタさんと気持ちいいエッチをするために、どんなデートもがんばっちゃいます!」
……恋愛よりも性欲を優先しないよう、我慢し続けることが一番の難易度なのは変わらないようだな。
※
帰宅した頃には陽がかたむいていた。
夕飯は外食ではなく、自炊で済ませることにした。
ユーノゥとの今後のデート資金のため、なるべく節約しないといけないからだ。
「俺、料理が得意ってわけじゃないから。おいしくなかったら、ごめんな」
「いえ、とっても良い香りがします。人間界の料理は初めてだから、ちょっと怖いっていうのはありますけど……アラタさんの手料理なら、きっとおいしいです」
マーリィと同じでユーノゥもフォークやスプーンのほうが使いやすいようなので、テーブルに並べたのは洋食だ。まあ、パスタとスープを用意しただけなんだけど。
異世界にもこれらに似た料理はあるようで、マーリィに食べ方を教えるまでもなかった。
「わあ……やっぱり、おいしいです。ううん、思っていたよりおいしいです!」
「……そうなのか? 凝った料理じゃないのに」
「お料理というのは、味だけじゃなくて雰囲気も関係してるって聞いたことがあります。そのおかげかもしれません」
『ユーノゥさんの言葉は的を射ています。胃は感情の臓器と言われます。誰と一緒に食べるかで幸福度は変わります。愛情の調味料という言葉もそこから来ているのです』
だったらマーリィのために作ったかいがあったってもんだな。
『作るというほどの工程などない、簡単で簡素なメニューですけどね』
その一言多い癖を直してくれれば、俺ももうちょっとおまえに愛情を持てるからな?
※
夕食後。
ユーノゥは俺の部屋にあるゲーム機も楽しんだ。
「レースゲームは、私の国にもありますけど……操作がずっと難しいですっ……ああっ、うまくカーブを曲がれません……!」
操作している車に合わせて、ユーノゥの身体も一緒に動いていた。
そのたび、胸が上下左右にぷるんぷるんと揺れていた。
隣同士でプレイしていたので、その胸が何度も俺に当たることになっていた。
「ああっ……!? なにか攻撃されました! 敵にアイテムを使われたみたいです……!」
事あるごとに押し当てられるその凶悪なお胸が、俺にとってはリアルな攻撃アイテムだった。
「ふう……どうにか3位に入れました。あれ……アラタさん、途中まで私と一緒に走ってたのに、まだゴールしてません……」
「……攻撃を食らってしまってな。俺の腕もまだまだのようだ」
「アラタさん、私を守るのにほかの敵をずっと攻撃してましたよね。ありがとうございます……私、アラタさんのこと、ますます好きになっちゃいます……」
……その好きは、どの段階で、恋と呼んでいい感情になるのだろう。
ユーノゥが自覚しなければ、いつまで経っても恋にはならないのか?
だが、純真無垢なユーノゥに、そんな判断ができるのか?
『…………』
ナビゲーター。おまえでも判断が難しいんだな……。
※
その後もゲームを楽しんで、遅い時間になると、ユーノゥは俺の部屋のシャワーを浴びることになった。
彼女はマーリィと違い、「いいね」を押してくれている。パティアと同じく、今夜のお泊りが確定したわけだ。
『おめでとうございます。ですがお泊りにかこつけて押し倒さないようお願いします。恋仲になるまでは我慢してください。おあずけの先にこそ純愛エンドが待っているのですから』
「……ナビーゲーターよ。理性ではわかっている、だけど本能がわかってくれないかもしれない。その時は、頼むぞ」
『頼まれました。マスターの理性が本能に負けた場合、緊急事態発生の処置として、やむなくユーノゥさんを強制送還させます』
「そうじゃなくて! 俺をいさめるだけでいいんだよ!」
『いさめるだけで、果たしてマスターの暴走が止まるでしょうか? いいえ止まりません。マスターの本能はそれだけ強大です。マスターの煩悩はおそらく核兵器級です』
おまえ、俺をどんな目で見てるんだよ。少なくともマスターとして見てないよな。
「……ていうかおまえは、そんな俺をなんでマスターに選んだんだよ?」
『マスターを選んだのは私ではありません。これ以上追及されてもナビゲーターでしかない私は答えられないようにできていますので、この話はここで終わりです』
「俺も追求したいわけじゃないけどさ……。大事なのはユーノゥと恋仲になることなんだし」
『さすがはマスターです。マスターがエッチな方面にすぐ暴走するのは、それだけの情熱を秘めている証でもあります。その熱をエロ方向だけではなく、ちゃんとした恋愛にも向けられるなら、マスターはユーノゥさんと共に立派な恋を育むことができるでしょう』
「……まあ、最初からそういう方針だったもんな」
『ただ……ユーノゥさんは、難敵です。身体は大人ですが、精神が幼子のように純粋だからです。ある意味、マーリィさんやパティアさんよりも強敵でしょう』
おまえも俺への助言に何度か迷ってたもんな。というか、無視してたもんな。
しばらくすると、シャワーから上がったユーノゥが部屋に戻ってきた。
「アラタさん、ありがとうございました……。シャワー、とっても気持ちよかったです」
嬉しそうに言うユーノゥ、そしてその格好は。
全裸だった。
言葉を換えれば、すっぽんぽんだった。
もっと言葉を換えれば、生まれたままの姿だった。
……なんで!?



