モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する

3章9話

 シャワーから上がったユーノゥは、生まれたままの姿で戻ってきた。


 大事なトコロはそれぞれ手や腕で隠していたが、露わになっている肌色の面積は、これまでの比ではなかった。


 はみ出る……今にもはみ出て飛び出ちゃう……!


「ちょっ、ユーノゥ! 服を着てくれ!」


 すぐさま視線を逸らし、そう言い募るしかなかった。


「服……? もう就寝の時間だと思ったんですが……」


「そ、それはそうだが……」


「もしかして、人間界では服を着て寝るんですか? 私の国では、全裸で寝るのが普通だったもので……ご、ごめんなさい」


 ……そういうことか。文化の違いってやつか。


 だったら謝ることはなにもありませんよ?


 俺の国だって裸族というのは存在しますからね?


「……ユーノゥ、俺のほうこそごめん。キミは裸のほうが寝やすいんだよな?」


「は、はい。いつもはひとりで寝てるから、こうして見られるのは恥ずかしいですけど……だから隠しちゃってますけど……アラタさんが隠すなって言うなら、なにも隠しません……」


「い、いや、むしろもっと隠して欲しいくらいだから」


「そうなんですか……? 私が隠してばかりいたら……アラタさんにエッチなコトしてもらうの、難しいかなって思ってたんですけど……」


 このまま夜のレッスンをして欲しいってことか……!


「まままま待て。まままままだ慌てる時間じゃない」


『慌てているのは毎度のことながらマスターひとりだけです。年上の威厳もレッスンをする先生の威厳もありませんが、マスターはいつになったらその地位に至るのでしょうか?』


 ……ちゃんと我慢しろってことだろ、煽られなくてもわかってんだよ。


「なあ、ユーノゥ。俺だって……キミと、エッチしたいと思ってる」


「あ、じゃあ……!」


「だけど、その前にクリアすべきミッションがあるんだ」


「ミッション……? それも、エッチなレッスンの一環ですか?」


「ああ。俺は、キミにはまず、恋愛というものを意識して欲しい」


「恋愛……?」


「今日デートしたのは、そのためのものだったんだ。ユーノゥは、誰かに恋をしたことはあるか? 恋心を意識したことはあるか?」


「……そんなの、考えたこともなかったです」


 ユーノゥは、ちょっとイジケながら言葉を続ける。


「私はまだエッチもしたことがないんです……恋愛なんて、まだ先の話なんですから」


 ……サキュバスの価値観では、たしかにそうらしいが。


「ユーノゥ。人間の価値観では……少なくとも俺の国の価値観では、恋愛を経てエッチをするものなんだよ」


「……そうなんですか?」


「ああ。サキュバスにとっては順番が逆になるんだろうけど……でも人間の俺がキミと身体で結ばれるためには、まず心で結ばれるのが必要だと思ってる」


「心で……結ばれる……?」


「恋仲になるって意味だよ」


「恋仲……」


 ユーノゥはきょとんとしている。


 今の言葉はもう、俺から告白をしたようなものなのだが、ユーノゥはまだピンと来ていない。


 ……本当、難敵じゃないか。


「えっと……ユーノゥ。俺はさ、キミとエッチする前に聞きたいんだ。キミは……俺に恋をしているか? 恋仲になりたいと思えるか?」


「そ、そんなこと、急に言われても……わかりません」


 ユーノゥは、絞り出すように答えた。


「私は、恋愛を意識したことがないから……エッチをしたあとに考えるものだとばかり思っていたから……いきなり聞かれたって、ぜんぜんわかりません……」


「じゃあ、ユーノゥ。俺と一緒に……キミの恋を、探してみないか? 明日もまた、デートをしながらさ」


「アラタさんと、デートしながら……」


「ああ。俺、キミのことが好きだから。キミと恋仲になりたいんだ。キミに……恋をしてるってことだよ」


「っ……え……?」


「だから俺は、ユーノゥにエッチなレッスンをする前に、キミを恋人にしたいんだ」


「ア、アラタさんが……私を恋人に……?」


「そうだよ」


 なかなか伝わらないのなら、伝わるまで告白を続けよう。


 結果、断られたらすべてが元の木阿弥だろうが、もう後戻りはできない。


「俺は、キミと恋仲になったあと……晴れて、肌を重ねたいと思ってる。それ以上の幸せはないと思ってる」


「アラタ……さん……」


 ストレートな言葉に変えたおかげだろう、さすがに伝わったようだった。


 ユーノゥの顔が朱に染まっていく。露わになっている肌も、みるみる上気していった。


 それどころか、頭に生えている小さな角からも蒸気のようなものを噴き出していた。


『サキュバスは鼻呼吸と口呼吸だけではなく、角呼吸もできます。異世界ではシュノーケリングに最適だと言われています』


 その情報、いい雰囲気のこのシーンでは必要ないよね?


「……アラタさん」


 ユーノゥは意を決したように俺の名を呼んだ。


 恥ずかしがって視線を外していないのは、それだけ本気になっているからだろう。


「私はやっぱり、恋というのはよくわかりません。だけど……私は、アラタさんのことが好きです。私がエッチしたい相手は、アラタさんしかいないと思っています」


 だとしたら。


 彼女のその気持ちは、もう……。


「私のこの気持ちは……恋ですか? 私が気づいていないだけで、本当は恋をしているんですか? 私はもうとっくに……あなたに恋をしていたんですか……?」


 ……わからない。


 確信なんて持てない。俺には想像することしかできない。高性能のAIであるナビゲーターだって、予測することしかできないんだ。


 正解を示せるのは、ユーノゥ本人だけなのだから。


「アラタさん……エッチを教えてもらう前に、私があなたに恋をしているかどうかを、教えてもらっていいですか……?」


「……ユーノゥ。俺が教えられるとしたら、ひとつだけだよ。その答えは、自分自身で見つけるべきだって」


「私が……自分で……?」


「ああ。その結果、キミが俺に恋をしていると答えを出してくれたなら……俺はきっとその瞬間に、キミを抱く」


「っ……!」


「だけど……俺に恋をしていないなら、キミを抱くことはしない」


「あ……」


 ユーノゥは青ざめた。上気させていた肌ごと冷ますようにして。


「私は……アラタさんに抱いてもらいたいです……。でも……恋なんて、わからないから……どうすればいいのかぜんぜんわからないから……これじゃあ、エッチできないです……」


 その瞳に、みるみる涙がたまっていった。


「アラタさんは……イジワルです……。エッチなレッスン、おあずけしてばかりいて……これじゃあもう、嫌いになっちゃいそうです……」


 涙目で、俺をにらんで。頬もかわいらしく膨らませて。


「私に、エッチなコトしてくれないアラタさん……大っ嫌いです……」


 そして、ユーノゥは。


「アラタさんから……してくれないなら……いっそのこと、もう……」


 そうして、大事なトコロを隠していた手と腕を、ゆっくりと外していって……。


「私から……エッチなコトするの、がんばってみせます────」