モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する

3章10話

「アラタさんから……してくれないなら……いっそのこと、もう……」


 ユーノゥは、大事なトコロを隠していた手と腕を、ゆっくりと外していって……。


「私から……エッチなコトするの、がんばってみせます……!」


「……ユーノゥ!」


 俺はとっさに抱きついた。


 ユーノゥの手と腕の代わりに、俺が身を挺して大事なトコロを隠した。


 ……だから見てない、まだなにも見てないからな?


 もし見ていたら、俺は確実に抜きゲーの主人公になっていただろう。


「アラタさん、私を押し倒す勢いで抱きついて……。やっと、その気になってくれましたか……? えへ……嬉しいです……」


「……ごめん、そうじゃないんだ」


「え……?」


「遅い時間になったからさ……。今夜のところは、もう寝よう」


 早くこの態勢をどうにかしたい。服越しだった感触を超えた、柔肌の感触が押し寄せている。くらくらするほどのぬくもりだ。


「……お願いだ、ユーノゥ。俺は目をつむってるから、その間にベッドに入ってくれないか」


「嫌です……」


 ユーノゥは離れるどころか、俺の背中に腕を回してしがみついた。


「アラタさんが、私とエッチするって言ってくれるまで……離れません……」


 ……やわらかい感触という地形効果も合わさって、その言葉の威力がとんでもない。


 このままじゃ……本気で襲ってしまいそうだ……!


『ここで我慢できなかったらすべてが終わりです、なにもかもが無駄になります。その場の快楽に負けてセフレルートに入りやがったら一生ソーローと呼んでやります。さあマスター、私のありがたい助言で頭を冷やせたことでしょう、遠慮せず存分に恩に着てください』


 おまえ、俺が素直に礼を言えないよう、わざとやってないか?


「……ユーノゥ。キミは、俺に恋をしてるのか?」


「わ、わかりません……」


「じゃあ、やっぱり抱くことはしない。離れてくれ」


「ア、アラタさん、嫌いです……」


「それは、俺に恋をしていないってことなのか?」


「わ、わかりません……イジワル、です……」


 ユーノゥから震えが伝わる。


 泣いているようだった。俺の胸に顔をうずめながら。声を出さず、静かに。


 だからよけい、その涙の熱を一粒一粒、重く感じることになった。


 ……慰めるためにエッチするのはアリですか?


『ナシだコノヤロウ、さっさとベッドに連れていけ、もちろんエッチのためじゃなく寝かしつけるためだ、続きは明日に取っておけこのドーテーソーローマスターが(はぁと)』


 愛のムチってことでいいんだよな? 羅針盤として進むべき道を指し示してるんだよな? 絶対見返してやるからなコノヤロウ。


「……ユーノゥ。明日も俺とデートしよう。答えを出すのは、それからでも遅くないよ」


「明日……アラタさんとまたデートしたら、エッチしてくれますか……?」


「言ったじゃないか、ユーノゥの恋次第だって」


「私の、恋……。デートをすれば、見つけられますか……?」


「ああ。きっと」


「……わかりました」


 ユーノゥは涙をこらえるように鼻をすすったあと、俺の胸に重ねていた顔を離し、上目遣いをした。


 目元に残った涙の跡が痛々しく見えて、俺はそこにキスをしたくなる。


 慰めてあげたくなる……。


『ナシだって言ってんだろうがクソザコナメクジドーテーソーローマスターが(はぁと)』


 愛のムチが来るって思ってたよ! 明日絶対ユーノゥと結ばれてやるからな!


「ごめんなさい……アラタさん。私……ワガママばかり言っちゃって。アラタさんを困らせてばかりいて……」


「……いや。俺のほうこそ、イジワルなことしてごめん」


 俺はユーノゥの頭を撫でながら、優しく言う。


「じゃあユーノゥ、ベッドに入ろう。その間、俺は目をつむってるから」


「アラタさんはどこで寝るんですか……?」


「俺は床で寝るよ。予備の毛布があるから」


「私……アラタさんと一緒に寝たいです……」


 ……どこまでも誘ってくる。手を緩めずにダメージを与えてくる。


 無垢で純真で、穢れがないからよけい断りづらくてたまらない。


 ナビゲーター、心の声に反応して嫌味を言わなくていいからな?


『予防線を張るとは、成長しましたね。寂しい限りです……例えるなら、息子を嫁に取られる母親の気分です』


 誰が母親だ。おまえって女の声だけど、性別の概念はないだろ。


「アラタさん……私と一緒に寝てくれますか……?」


「……ユーノゥ。抱かないって言ったじゃないか。また同じ話をしたいのか?」


「い、いえ……エッチは、ひとまず諦めます。でも私……抱き枕がないと眠れなくて。そういう意味で、アラタさんと一緒に寝たいんです……」


 ……それはまあ、健全な理由かもしれないが。


 でも、ベッドの中で裸のユーノゥに朝まで抱きつかれるってことだよな?


「エッチなコトはしませんから……いくらエッチしたくても、我慢しますから……私と一緒に寝てくれませんか……?」


 ……キミが我慢できても、俺が我慢できるかわからないよ?


 いや、ここでグダったらまたナビゲーターの萎える発言が飛び出すだけだ。覚悟を決めるしかない。


『発言できない私はとても寂しいです』


 そいつはよかった。見返してやれた。


「ユーノゥ。じゃあ、一緒に寝ようか?」


「はいっ……! えへっ……アラタさん、大好きです!」


 ……その好きが恋なのかどうか、ユーノゥが早めに判断してくれるのを祈ろう。じゃないと俺のほうが先に誘惑に負けてしまう。


 ユーノゥに先にベッドに入ってもらい、部屋の明かりを落としたあと、俺も同じベッドにもぐった。


 隣で横になる俺に、ユーノゥはさっそく抱きついてきた。


「アラタさんのぬくもり……あったかくて、気持ちいい……」


 ユーノゥの腕が、俺の腕にからんでいる。


 あったかいのはユーノゥのほうだ……この、やわらかいふくらみ……服越しではないその感触は、天にも昇る心地にさせる。


 いや……感じるのは、やわらかさだけじゃなかった。


 固い部分もある……。


 まさか、これは……ふくらみの、中心部分……?


 服越しでは絶対に触れることのできない、天使のハートスポット……!


『過程過程。羊を数えるようにこの単語を繰り返して乗り切ってください』


 読経かよ。


「はあっ……どんな抱き枕より、好きです……アラタさん、大好きです……はあっ……」


 気持ちよさそうな呼吸──ユーノゥの熱い吐息が、隣の俺にふわふわかかる。


 なにか良い香りもして……まるで媚薬効果のあるお香のようで……。


『過程過程』


 はいはい読経読経。


「アラタさん……もう寝ましたか……?」


「……いや、起きてるよ。どうかした?」


「えっと……アラタさんとこうしてるの、すっごく気持ちいいから……私、もう……我慢できなくなって……それで……」


『エッチはおあずけですので悪しからず』


 せめて情緒くらい楽しませろ。


「だから、その……腕だけじゃなくて……足でも抱きついて、いいですか……?」


 ……腕のように、足もからめるってこと?


 エッチするんじゃないなら、もうなんでも一緒だろう。俺は首肯した。


「えへ……ありがとうございます」


 そしてユーノゥは、上半身だけではなく、下半身も俺に密着させてきた。


 太もものやわらかさ……胸の感触に勝るとも劣らない。


 だけど、それだけじゃなかった。


 下半身をくっつけてきたことで、俺の腿のあたりに……ユーノゥが最も大事にしている部分が……絶対に見てはいけない秘めるべきトコロが、直に触れている……。


 そこは、とても熱くて……それに、ちょっと湿ってる……?


 これ……ただの汗だよな……?


 それともまさか……この潤いは、準備万端の証……?


 か、確認してもいいかな……? ちょっとだけ……先っぽだけでいいから……!


『ダメに決まってんだろうが、さっさと読経を唱えろや、いいかげんにしないと先っぽどころか根元からちょん切るぞ(はぁと)』


 AIのおまえがどうやってちょん切るんだよ、やれるもんならやってみろ。


 ……いや、なんか異常なオーバーテクノロジーで可能かもしれないから今のはナシで。


「私……アラタさんのおかげで……ぐっすり眠れそうです……」


 ……そうか。それはよかった。


 俺は逆に、徹夜を覚悟したけどな。


「すー……」


 しばらくして、無垢な寝顔を見せるユーノゥ。


 抱きたい気持ちと、穢したくない気持ちが、混在する……。


『明日のデートのため、マスターも休むべきです。お望みなら私が子守唄を唄いますが?』


 読経よりはマシかもな……。