モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する

4章1話

 朝を迎えた。


 徹夜を覚悟していた俺だったが、途中で眠りにつけたようだ。


 ナビゲーターの子守唄のおかげなんかじゃなく、疲労のためだろう。ユーノゥから繰り出される無自覚な攻撃は、それだけダメージが大きかったようだ。


 いや……それともまさか、朝チュンだったり?


 実はユーノゥを襲ってしまったあとだったり……?


『おはようございます。そしておめでとうございます。マスター、よくぞ我慢しましたね』


 心の底から安堵した。


『健全に眠ることができたのは疲労もそうですが、ユーノゥさんのぬくもりが心地よかったからでしょう。抱き枕の効果があったのはマスターも同じだったようです』


 たしかにユーノゥの身体は、睡眠欲すら増させるほどの気持ちよさがあったな……。


 ユーノゥを探すが、ベッドにはいなかった。


 代わりに食欲を誘う香りが漂ってきた。


 誘われるようにその方向に目を向けると、ユーノゥがキッチンに立っていた。


 裸エプロンで。


 後ろ向きなので、かわいらしくも肉付きの良いお尻が丸見えだった。


「なにその格好!?」


「きゃっ……びっくりしました」


 ユーノゥは飛び上がったあと、俺に振り向いた。


 エプロンのおかげで前はいちおう隠れているが、豊満なふくらみの谷間までは隠し切れず、横乳だって露わのままだった。


「アラタさん、起きたんですね。おはようございます」


「あ、ああ……おはよう。それで、その格好は……?」


「朝ご飯を作るのに、エプロンを借りたんです」


 ユーノゥは天使のように微笑んだ。


「昨日の夜、アラタさんが夕飯を作っているのを見て、調理器具の使い方を学びました。だから、今度は私が作ってあげたくなったんです。勝手なことでしたら……ごめんなさい」


「い、いや、ぜんぜん。むしろありがとう」


 女の子が朝ご飯を作ってくれるだなんて……しかも裸エプロンだなんて。


 もはや男の夢としか言いようがない。


 ……まさか、本当に夢なのか? もしそうなら覚めないでくれ!


「ハッ……!」


「ア、アラタさん? どうかしましたか?」


 この時間が夢ならば、なにをしてもいいんじゃないか?


 いっそのことユーノゥとエッチしちゃっていいんじゃないか……?


『ここはれっきとした現実です。よってそれは妄想です。早く妄想から覚めてください』


 現実だった……! それはそれでバンザイだ!


「あ、あの……私がお料理するの、迷惑でしたか……?」


「そんなことない。ユーノゥの手料理、すごく楽しみだ」


「え、えへ……嬉しいです。アラタさん、やっぱり大好きです……」


 またも天使の微笑みを浮かべる。サキュバスだから種族としては悪魔なんだろうけど、俺にはもう神の使いにしか見えない。


「アラタさん、顔を洗ったり服を着替えたりしてきていいですよ。その間に朝ご飯をご用意しますね」


 ……ユーノゥは服を着替えないんだろうか。着替えて欲しいわけじゃなくてね?


 身支度を調えてから部屋に戻ると、テーブルにユーノゥの手料理が並んでいた。


「野菜がどこにも見当たらなくて……ほんとはサラダも作りたかったんですけど」


 ……野菜なんて常備したことないなあ。まあ男のひとり暮らしなんてこんなものだろう。


 ユーノゥお手製の朝食は、卵焼きとウインナー、そしてメインの一品はというと。


「これ……つけ麺?」


 麺とスープがセットになっていた。


「えっと、昨夜アラタさんが作ってくれたパスタとスープをアレンジしたものです」


 とすると……つけパスタって名前になるのか?


『つけパスタは人間界にも異世界にも存在するメニューです。パスタソースよりもさらりとした味わいのスープに浸して食べるというスタイルのパスタとなります。朝食にはちょうどいい軽さのメニューでしょう』


 ひさしぶりにおまえの知識が役に立ったな。


『私はいつも恋愛のお役に立っているはずなのですが……』


 ともあれ、ユーノゥと一緒にいただきますをした。


「スープは、調味料だけで一から作ることになったので……ちょっと自信がないです。アラタさん、おいしくなかったらごめんなさい」


 俺はさっそく一口食べてみる。


「ユーノゥ……すごくおいしい!」


「ほ、ほんとですか? よかったあ……!」


『ユーノゥさんはマスターが寝ている間に何度も味見をしてこのスープを作っていました。よかったですね、男の夢が叶いましたね』


 ナビゲーターの嫌味な発言も気にならないほど、俺はつけパスタに夢中になった。


「ア、アラタさん。もっとゆっくり食べないと、身体に悪いですよ?」


「手が止まらないほどおいしいんだ。ユーノゥ、ほんとありがとうな」


「え、えへ……私のほうこそ、ありがとうございます。アラタさんが幸せだと……私も幸せになっちゃいます」


 俺も自炊で、パスタはよく作って食べていた。理由は安く作れるからだが、さすがに飽きてきたところだった。


 だけど、つけパスタというレパートリーが増えた。ユーノゥのおかげだ。


『私を頼ってくれれば、あらゆるレシピをお教えできますが?』


 ユーノゥから教わったということが重要なんだよ。


 胃は感情の臓器だからな。まあこれは、ナビゲーターから教わった言葉だったな。


『私の知識は恋愛だけではなく料理も網羅します。よってマスターはもっと私に頼るべきです。例えるなら、そう。母親のように』


 もし母親に例えたら、おまえは毒親だからな?