モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する

4章2話

「アラタさんに、おいしいって言ってもらえた……。私……早起きして、アラタさんのために朝ご飯作るのがんばって……よかったあ」


 俺と一緒に、幸せそうにつけパスタを食べるユーノゥ。


 そのとき、注意散漫で手元が狂ったのか、飛んだスープがユーノゥを汚した。


 エプロンのちょうど上……胸の谷間を。


「……ユーノゥ。そこ、汚れてる」


「え……? どこでしょう?」


 指で指し示すだけでは、ユーノゥはわからないようだった。


「……ちょっとじっとしてて」


 俺がティッシュで拭くことにした。


 素早く手を伸ばし、綺麗にして、そして。


 すぐに手を引っ込めようとしたところで、ユーノゥが俺の腕をつかんだ。


「アラタ……さん」


 いつからだろう、ユーノゥの瞳が熱を帯びている。


 部屋の明かりを受けて、きらきらと星のように輝いている。


「このまま……エッチなコト、しませんか……?」


「…………」


「裸エプロンの格好してるのは……アラタさんがエッチな気持ちになってくれるかもって、そう思ったからです……。私、そういう知識だけは持ってますから……」


 ……知らないのは体験だけだって言ってたな。


「私がきわどい格好であなたに会いに来たのと同じです……。私は早くあなたとエッチしたいから、今も恥ずかしい格好になっているんです……」


 俺の腕をつかんでいるユーノゥの手に、さらに力が込められる。


 俺の手のひらを、自分の胸に導こうとする……。


『読経読経』


 はいはい過程過程。


 ナビゲーター、あまり見くびるな。俺はこれでも、修羅の道の中でも最高峰だった昨日の夜を耐え忍んでるんだからな。


「アラタさん……。私とエッチ、してくれませんか……?」


「……言ったじゃないか。ユーノゥ、キミが俺に恋をしていない限りは抱かないって」


「覚えてます……。でも……だって、我慢できないんです」


 ユーノゥはやっと俺の腕を放してくれたが、諦めた様子はない。


「アラタさんは、私が恋をしているかどうか答えを出すまで、エッチしないって言いましたけど……。アラタさんが私のご飯をおいしいって言ってくれて……私、すごく嬉しくて……もう、たまらなくなったんです……」


 エプロンの裾をぎゅっとつかんで、絞り出すように言った。


「このまま、エプロンを上にまくって……私が一番恥ずかしいって思うトコロを見せれば……アラタさんは、私とエッチしたくなりますか……?」


「…………」


 な、なにを言って……。


「私……アラタさんのことが好きです……。恋なんてよくわからないけど、アラタさんのことが大好きです……。それじゃあ、ダメですか……?」


 ……わからない。


 俺自身、よくわからなくなってきた。


 ユーノゥはゆっくりと、エプロンの裾をまくっていく。


 太ももが露わになり……さらに、その上まで……。


 すると、そこには、つうっと伝う雫が見えて……。


 あ、汗だよな……? 汗じゃなかったら、俺はもう……!


 ピロン!


 そのとき、俺のスマホが着信音を鳴らした。


「きゃっ」


 その音に驚いたユーノゥは、エプロンから手を離すことになった。おかげで大事なトコロを目にすることはなかった。


『マスター、妹さんからのメッセージです。毎度のことですが、ちゃんと大学に行けという内容です』


 ……妹よ、この時ばかりは感謝する。


『今は彼女作りでいそがしいから後にしろ、と返信しておきましょう』


 もっとオブラートに包めよ。内容自体はそれでいいけど。


 2日に1回は大学の講義に出る予定だったが、今はユーノゥがいるのだから、もちろんデートのほうを優先だ。欠席した分はそのうち取り返そう。


「あ、あの……アラタさん?」


「……ごめん。ちょっとスマホのメッセージが来てて」


「メッセージ……? 誰からでしょう?」


「妹だよ」


「アラタさん、妹さんがいるんですね。異性でも……家族なら、メッセージのやり取りくらいは普通のことですよね」


 ……あれ。なにかヤキモチっぽく聞こえるような?


「じゃあアラタさん、改めてさっきの続きを……」


「待った待った! エプロンをまくろうとするな! ユーノゥ、デートが先だって何度も言ってるだろ?」


「……でも今は、デートよりもエッチしたくてたまらないんです」


『性欲というのは朝が最も盛んになりますが、食欲を満たすことで軽減されます。ユーノゥさんの今の状態は一時的なものでしょうから、朝食を取ればこの場は切り抜けられます』


「おあずけばかりするアラタさん……イジワルです……」


「ユ、ユーノゥ。ひとまず朝ご飯を食べないか? 俺もまだ食べ終えてないしさ」


「あ……言われてみるとそうです。アラタさんのために作ったんですし、最後まで食べてくれると嬉しいです」


「ユーノゥも一緒に食べよう。じゃあ改めて、いただきます」


「いただきます」


 最後までおいしくいただき、ごちそうさまをしたあと、ユーノゥはすまなそうに言った。


「ごめんなさい……私、どうかしてたみたいです。アラタさんが困るってわかってたはずなのに、エッチなおねだりしちゃって……」


 エッチなおねだり! この単語だけでご飯三杯は余裕でいける!


『お腹が膨れたことでユーノゥさんは理性を取り戻しました。ならばマスターもちゃんと理性を保ってください。でなければマスターの精神はユーノゥさんよりも子どもです』


 ……大人として、コンプライアンスは守りたいところだな。


「アラタさん。これからデートするんですよね? じゃあ私、着替えますね」


「あ、ああ。洗面所が脱衣所代わりになってるから、そこを使ってくれるか?」


「わかりました。アラタさんの前で着替えれば、エッチなことしてくれるかなって思う気持ちもありますけど……これ以上困らせたくありませんので、脱衣所で着替えてきます」


 ユーノゥは、以前にパティアがやったように魔法で異次元の空間から着替えを取り出すと、脱衣所に向かっていった。


 ……朝からこんな調子だと、この先が思いやられる。


 デート中でも、ユーノゥの無垢な誘惑が襲いかかってくるんだろうなあ。


『マスター、まんざらでもない顔をしないでください』


「……これでもちゃんと本能と戦ってるんだよ」


『では、マスターの理性を信じてデートにおける現実的な見解を述べます』


「なんだよ」


『お金がありません』


 ……はい?


『すでにデートの資金が尽きていると告げたのです』


 目の前が真っ暗になった。