モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する

4章4話

「……ユーノゥ。相談があるんだけど……聞いてくれるか?」


「は、はい。なんでしょう?」


 俺は正直に、デート資金が足りないことを告げた。


 お金がかからないデートもできるが、それだけでは代わり映えがしないこと。ユーノゥが長く一緒にいればいるほど、そうなってしまうこと。


 だから、一緒にお金を稼いで欲しいこと……。


「私は……エッチを教えてもらうのにデートが必要なら、そのためのお金を稼ぐことだってやりたいです」


 ユーノゥは、ここでも天使の微笑みを浮かべた。


「それに、アラタさんが頼ってくれて……嬉しいです。私にできることがあれば、なんでも言ってください」


 まさしく天使……唯一無二の、理想の彼女。


『私が言った通りでしょう? 好感度もアップしましたし、存分に恩に着てください』


 ……そういう言葉さえなければ素直に礼を言えるんだよ。


「アラタさん。私、具体的にはなにをすればいいでしょう?」


「えっと……一緒にバイトをして欲しいんだけど、いいかな?」


「アルバイトのことですよね? わかりました。私はしたことがありませんが、友だちがよくしています」


「へえ。異世界ってどんなバイトがあるんだ?」


「私は詳しくありませんが……友だちはウェイトレスをしてますよ」


 サキュバスのウェイトレス……制服の露出が激しそうなイメージだが、友だちは異性が好きじゃないらしいので、いかがわしい店ではないんだろう。


「私もウェイトレスをすればいいんでしょうか?」


「えっと……せっかくだから一緒にできるバイトがいいと思ってるんだけど、候補のひとつに入れておくよ」


 飲食店のバイトの場合、女性が接客、男性が裏方の力仕事に分かれがちだからな……。


「あと、できればデートみたいに楽しんでやれればいいなって」


 バイトは基本、単純作業の繰り返しだ。楽しむどころか苦行でしかないのが普通だが……。


「私はアラタさんと一緒なら、どんなことでも楽しんでやれますよ」


 にっこり。


「ユーノゥ……重ね重ねありがとう。俺も、そんなユーノゥのためになんでもやるよ」


「ほ、ほんとですか? じゃあアルバイトがうまくいったら、ご褒美にエッチなコトして欲しいです!」


 それはむしろ俺にとってエッチなご褒美……!


『はいはい過程過程』


 おまえ、そればかりだな。ナビゲーターならもっと丁寧に助言しろ。


「あ……ごめんなさい。デートが先だってもう何度も言われてるのに、またアラタさんを困らせちゃいました……」


「……いや。ユーノゥの気持ちは、やっぱり嬉しいから」


「そう言ってもらえると……私も嬉しいです。私、アラタさんのためにがんばってお金を稼ぎます! そのためになんだってやっちゃいます!」


『今のマスターは端から見ると、落とした女性客に貢がせるため、風俗に出稼ぎにいかせる悪質なホストのようですね』


 心外に過ぎるぞ。


「アラタさん。私、実は友だちからウェイトレスの制服を借りてるんです。マッチング相手に喜んでもらえるかもって言われて押し付けられたようなものだったんですけど、アルバイトに使えるかもしれません!」


 ユーノゥは嬉々として魔法を使い、異空間からその制服を取り出した。


 バイトする店の既定の制服じゃないと意味がないだろうけど、ユーノゥはバイトの経験がないから知らないのかも。


 まあコンカフェみたいなところなら、コンセプトに合ってるコスプレ衣装であればなんでもOKかもしれないが……。


「アラタさん、どうでしょう? これを着れば私もウェイトレスとして働けますか?」


 フリフリでかわいらしく、それでいて露出が激しめの制服を身体の前に合わせるユーノゥ。


 写真を撮るたくなるほど魅力的じゃないか……これはもう、着替えてもらうしか……!


『マスター。このままではバイトではなくコスプレ大会が始まりそうですので、私がそろそろ最適解であるバイトの内容をお教えしてよろしいでしょうか?』


 いや……そうか。ナビゲーターから教わるまでもなく、ユーノゥが魔法で服を取り出したことで、ひらめいた。


「ユーノゥ。インターネットってわかるか?」


「いんたーねっと……?」


「世界中の情報機器をつなぐネットワークのことなんだけど、異世界にはないのかな」


「よ、よくわかりませんが……少なくとも、私の国にはないと思います」


「この人間界には、インターネットを使ったバイトが存在するんだ。これなら一緒に楽しんでお金を稼げるはずだ」


「それって……どういうアルバイトでしょう?」


「動画配信だ」


 きょとんとするユーノゥに、わかりやすいよう説明を続ける。


「動画をアップして、それを観てもらって収益を得るんだ。その動画が面白ければ面白いほど、再生数が伸びてお金を稼げるんだよ」


 そして俺は、拳を振り上げて言った。


「ユーノゥの魔法があれば、動画配信で楽しく稼げるに違いない……!」


『……異世界の魔法は人間界ではあり得ない現象ですし、視聴者の興味を引くのに充分でしょう。ちなみに私がお教えする予定だった最適解です。マスター、横取りしないでください』


 知らんがな。


『社会に混乱を招けば強制送還になりますが、動画であればフィクションとして扱われ、CGの技術だと思われるだけでしょう。ユーノゥさんの顔もうまく編集すれば身バレが防げます。動画がバズれば億万長者も夢ではありませんね』


 ちょっとスネたように言うナビゲーターの言葉もあって、俺は確信した。


 動画配信でデート代を稼ぐのは、現実的な方法なのだと。