モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する

4章5話

「アラタさん、それでは私の魔法をお見せしますね!」


 俺から説明を聞いたユーノゥは、思いのほか乗り気だった。


 ユーノゥが嫌ならやめるつもりだったが、楽しんでくれるのならこのバイトもデートの一環になるだろう。


「マッチングの規約で魔法は禁止されてましたけど、今回の場合は使ってもいいんですよね? 魔法は人間界ではめずらしいから、お金を稼げるんですよね? えへ……サキュバスの魔法がアラタさんのお役に立てるなんて、とっても嬉しいです!」


 俺としても、ユーノゥの魔法に興味がある。いったいどんな魔法だろう?


『エルフのユーノゥさんは風魔法を得意にしていましたが、サキュバスのユーノゥさんは闇魔法を得意にしていることでしょう』


 サキュバスだし、それって催眠系の魔法だったり? エロエロな夢を見せてくれたり……?


『そのような魔法もありますが、マスターがエロエロな夢を見るだけの動画など誰も喜びません。それどころか夢と現実をごっちゃにしたマスターがユーノゥさんを襲ってしまうかもしれません。そんな動画をアップしたらマスターが捕まるだけです』


 その通りですね。


「ユーノゥ。具体的にどんな魔法を見せてくれるんだ?」


「アラタさんに催眠をかけてエッチな気持ちにする魔法です! アラタさんが許してくれましたし、これからすぐにエッチなコトしてもらえます!」


 乗り気だったのはそのせい!? ていうか俺が捕まるやつ!


「ユ、ユーノゥ。視聴者から見て魔法ってわからなきゃ意味がないんだ。だから、もっとわかりやすくて派手な魔法をお願いできるかな……?」


「……またおあずけです。しかも上げてから落とされました……やっぱりイジワルです」


「俺たちがそういうことしてるのを動画にしたら、みんなに見られるんだぞ?」


「そ、それは恥ずかし過ぎます……。じゃあアラタさんは、私のためを思って……? えへ……アラタさん、大好きです」


 結果オーライということで。


「それで、ほかにはどんな魔法が使えるんだ?」


「私は闇魔法しか使えませんので、基本は闇を操ることになります」


「……もっと具体的に言うと?」


「この部屋を真っ暗闇にしたり……でしょうか」


 う、うーん?


 それって動画映えするのか?


「ユーノゥ、ほかには?」


「ほかには……アラタさんの心を闇に染めて、鬱にしたり?」


 ……催眠よりもタチが悪い。


「ユーノゥ、ほかには?」


「催眠魔法の上位互換である、魅了魔法というものがあります。催眠は一時的ですが、魅了は永続的な効果があるそうです。サキュバスにとって最高位の魔法ですので、私はまだ習得できていません。もし使えたら、アラタさんと死ぬまでエッチできるのに……」


 ……最期は腹上死ってこと?


『言うまでもありませんが、反社会的な行為は規約違反になります。もしユーノゥさんがそのような魔法を使ったら、即座に強制送還になります』


 ユーノゥがそんな魔法を覚えていなくてよかった。


「ユ、ユーノゥ、ほかには?」


「これ以上は……闇魔法ではなく、汎用魔法になってしまいます」


「汎用魔法?」


「どの属性にも当てはまらない、汎用的な魔法です。基礎的なものですから、どの種族でも使える魔法なんです。たとえば、異空間から荷物を取り出す魔法がそうです」


「それだ!」


「きゃっ!」


「四次元ポケットみたいなあの魔法なら映えるはずだ!」


「……そ、そうなんですか?」


「ああ。ユーノゥ、その魔法を使ってくれるか?」


「い、いいですけど……異空間からなにを取り出しましょう?」


「見栄えするものがいいな。なにもない空間から取り出すことを考えれば……剣とか? エクスカリバーみたいに、伝説の武器を引き抜く感じで」


「け、剣なんて持ってません。見栄えしそうなものだと……着替えくらいしかありません。さっきのウェイトレスの制服みたいに。ほかの服も全部、友だちが用意してくれたものなんですけど……」


 その友だちって、ユーノゥの引っ込み思案を直したくて、きわどい服を薦めてたんだよな。


 だったらほかの服も全部、見栄えしそうだ。


「ユーノゥ、それでいこう。四次元ポケットみたいなところから衣装を取り出すのは映えだし、その後に着替えたユーノゥのコスプレ姿だってきっと映えだから」


「こすぷれ……?」


「普通の服よりかわいかったりカッコよかったりする衣装を着ることだよ。ただでさえ魅力的なユーノゥが、さらに魅力的になると思う」


 ユーノゥの顔が沸騰した。頭の角からも蒸気を噴き出した。


「わ、私って……魅力的なんですか……?」


「ああ。魅了魔法にかかるくらいに」


「じゃ、じゃあアラタさん……私がこすぷれっていうのをすれば、エッチな気持ちになりますか……?」


「え、えっと……もちろん。ユーノゥが俺に恋をしてくれれば、すぐにも抱くよ」


「私……恋します。アラタさんに恋したいです。ただエッチするだけじゃなくて……恋人として抱いてもらうのが……今の私の、一番の夢になりました」


 天使のように映る、ユーノゥの微笑み。


 その笑顔が、万人を癒す天使ではなく、俺だけに向けられる恋人のそれになってくれることを信じたい。


「アラタさん。じゃあさっそく、ウェイトレスの制服に着替えますね」


 そして俺が、その姿をスマホで録画……いや、生着替えを配信なんてできない。BANされるだけだ。


 なにより、ユーノゥのそんなところを不特定多数にさらしたくない。


「……ユーノゥ。着替えは、脱衣所を使ってくれ」


「そうなんですか……? 着替えのシーン、録画しなくていいんですか? 恥ずかしいですけど……死んじゃうほど恥ずかしいですけど……でも、アラタさんのためなら……」


「必要ないから! 録画は絶対しないし、俺も見ないようにするから!」


「は、はい……優しいアラタさん、大好きです」


 それからユーノゥは、もじもじして。


「でも……脱衣所はちょっと狭くて、慣れてない服を着るのは大変なんです……。だから、ここで着替えてもいいですか……?」


「……そ、そういうことならわかった。ここで着替える間、俺は後ろを向いてるよ」


「私が着替えを見られたくないのは……アラタさん以外です。だから……アラタさんになら……見られたって、ぜんぜんいいですよ……?」


 ……そうか。


 ならばユーノゥの裸は俺だけのもんにしてやる……!


『はいはい過程過程』


 おまえのナビ、天丼になってきたな。


『マスターが天丼ばかりするからです』


 ……そういうところが塩対応なんだぞ。


「ユーノゥ。ちゃんと後ろを向いてるから。着替えをのぞくのが目的じゃないんだからさ」


「あ、は、はい。バイトのためですもんね。私、ウェイトレスの制服を着るのは初めてですけど……アラタさんのお役に立ってみせます」


 ユーノゥのウェイトレス姿を楽しみにしながら後ろを向くと、衣擦れの音が聞こえてくる。


「んっ……胸のところが、ちょっとキツい……んんっ……」


 着替えの音もさることながら、声のほうもなまめかしい……。


 とはいえ、夜通し裸で抱きつかれたまま朝を迎えた俺は、この程度では屈しない。


『そのわりに呼吸が速く心臓もバクバクで脂汗もすごいですが』


 ちゃんと我慢してるんだからいいだろ!


「アラタさん。着替え終わりました」


 解放された気持ちになりながら振り向くと、そこにはウェイトレス姿のユーノゥが……いや、正確には違う。


 メイドルックのユーノゥが、立っていた。


 このウェイトレスの制服は、メイド服のフォルムをしている。


 しかも、ただのメイド服じゃない。これはいわゆる、メイドビキニ。


 フリフリがついていてかわいらしくも、露出が激しいため、セクシーさをあわせ持つ。


 ただのビキニでは得られない、どこか背徳感のある格好だ。


「この格好……どうでしょう?」


「すごくかわいい……。ちょっとエッチなところがとてもいいよ」


「えへ……エッチって言ってくれて、嬉しいです」


 かわいいと言われるよりも嬉しいのか……。


 俺はメイドビキニ姿のユーノゥをスマホで録画していく。こんなふうに女の子を撮影するのは初めてなので、緊張しながら。


「あの……アラタさん。私……こうして立ってるだけでいいんですか?」


「あ、そうだな……じゃあ、メイドさんの定番のポーズをしてもらおうかな」


「……どういうポーズでしょう?」


 俺が説明すると、ユーノゥは恥じらいながらもその通りにしてくれた。


「おいしくなーれ……萌え萌え、キュン」


 手でハートマークを作り、はにかんだ笑顔を浮かべながら、定番のセリフを言ってくれた。


 俺は思った。


 バズってもバズらなくても、俺にとってこの動画は宝物になるだろうと。