モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する

4章6話

「アラタさん。ウェイトレスの制服だけで終わりじゃないんですよね。ほかの衣装にも着替えたほうがいいんですよね?」


「あ、ああ。お願いできるか?」


「もちろんです。魔法で次の衣装を取り出しますね。Faigh an rud amach!」


 ユーノゥの呪文めいた言葉に呼応し、空間にぽっかりと穴が開く。


 その不思議な穴に、ユーノゥが手を突っ込む。


 俺はこの一連の光景もスマホで録画する。


「次は、この衣装です」


 ユーノゥが取り出したのは、セーターだった。


「このセーターはワンピースタイプなんだそうです。さっきのウェイトレスの制服よりも着るのは簡単だと思います」


 ワンピースタイプのわりには、裾が短く見えるような?


 いや、そうか。これを着れば、パンツが見えそうで見えないぎりぎりのラインを攻めることになるわけだ。


 衣装を勧めてくれたユーノゥの友だちよ、グッジョブ。もし出会えたら最大限のお礼をさせてください。


『今はユーノゥさんの友だちの厚意を利用してお金を稼ぎ、最後にはその友だちからユーノゥさんを奪ってやりましょう』


 おまえはもっと言い方に気をつけてくれ。


 先ほどと同じ流れで、後ろを向きながらユーノゥの着替えを待ち、振り向いた。


「このセーター、ゆったりしてるので胸が窮屈じゃなくて、着心地がいいです。友だちはそう考えてこの服を渡してくれたんですね」


 違うと思う。


 なぜならこのセーターは、肩から腰にかけて大きく開いている。


 胸の谷間はもちろん、ふくらみの形までよくわかるほどの露出度だ。


 しかも、サイズが大きくゆったりとしているので、真横から見てしまったらふくらみの中心部分すら拝むことになるかもしれない。


 これはいわゆる、童貞を殺すセーター……! 異世界にもあるんだな!


『ドーテーのマスター、鼻血による失血死にご注意を』


 ナビゲーターの嫌味に反応する暇も惜しんで、俺は魅力的なアングルを考えながら動画を撮り続ける。


「アラタさん、どうでしょう……?」


「いいよ、すごくいい」


「エッチですか……?」


「すごくエッチだ」


「えへ……ありがとうございます。ポーズは必要ですか……?」


「じゃあ、少しを横を向いてみようか? 念のため腕で胸を隠しながら」


「胸を隠す……? よくわかりませんけど……こうですか?」


「いいよ、すごくいい。見えそうで見えないところがとてもいい。次は、そのまま腕で胸を隠しながら、ちょっとかがんでみようか?」


「こう……ですか?」


「いいよ、すごくいい。谷間を強調しつつも見えそうで見えないところがとてもいい」


『今のマスター、清純派アイドルをAVに堕とそうと画策するカメラマンのようですね』


 いつもいつも例えが悪すぎるぞ。


 ……ただ、罪悪感があるのは事実だ。ユーノゥはまだ幼い歳のせいもあって、この行為は犯罪臭がする。


 いや……あくまでこれは、ふたりでデート代を稼ぐための行為だ。やましいことなんてなにもないはずだ。


 そう無理やりにでも思い込み、一通り撮影した後、ユーノゥはみたび衣装を取り出した。


「友だちから借りた服は、これが最後になります」


 それは、見るからに水着だった。


 ユーノゥの着替えを待ち、水着姿をこの目にする。


 紺色で、胸のところに白い枠と文字が書いてあって、異世界の言葉だから俺には読めないが、おそらくそれはユーノゥの名前で。


 これはいわゆる、スクール水着……! 異世界にもあるんだな!


『ユーノゥさんに似合っているのは、間違いありませんが……』


 これまでの衣装に比べたら肌色の面積は小さいが、それ以上の魅力がある。


 そう……背徳的な魅力が。


『ユーノゥさんは子どもですが、身体は大人ですので、犯罪臭がしますね』


 背徳感を罪悪感に変えるようなことを言うな。


「この水着……これまでで一番、きつきつです……」


 だからこそ、大人の身体のラインが露わになっている。


 くびれた腰、すらりと伸びた手足。


 かわいらしいおへその位置もわかる。


 乳房の形も、裸と変わらないくらいにわかる。


 そして、ふくらみの中心にある、その形状までもうっすらとわかる……。


「アラタさん……どうですか?」


「……いいよ、すごくいい」


「私……エッチですか……?」


「すごくエッチだ」


「えへ……私、エッチな子に近づきました」


『今のマスター、無垢な子どもを性に溺れさせようと画策する外道の大人ですね』


 そんなつもりじゃないんだよ! 己の欲のためにやってるわけじゃない! 本当なんです信じてください!


 見れば、嬉しそうに微笑みながらも、ユーノゥの顔は赤い。


 羞恥がないわけじゃない。こんな撮影会、恥ずかしいに決まっている。


 俺も、変にこの時間を長引かせたいわけじゃない。


 ……無理させてごめんな、ユーノゥ。


「ユーノゥ、ありがとうな。おかげで魅力的な動画が撮れたよ」


「……もう終わりでいいんですか?」


「ああ。普段着に着替えていいよ」


『いつ襲い掛かるか冷や冷やしていました。マスターが犯罪者にならなくてよかったです。もし犯罪者になっていたらユーノゥさんではなくマスターを強制送還するところでした』


 どこに強制送還するんだよ。異世界ならむしろ行ってみたいよ。


「あの……アラタさん。実はもうひとつ、衣装があります」


「……そうなのか?」


「はい……朝ご飯の時のエプロン姿は、どうですか?」


 ……それって裸エプロンじゃないか。


 なぜユーノゥは、この撮影会を引き延ばすようなことを言うんだろう。


「ユーノゥ……どうして、そんなこと?」


「なぜでしょう……すごく恥ずかしいのに……アラタさんに見られると、嬉しくなる……。これって、なんなんでしょう……?」


 ……露出狂?


 いや、そんないかがわしい代物じゃない。


 ユーノゥはあくまで純粋なんだ。


 俺に喜んでもらいたいから──俺が喜ぶとユーノゥも嬉しいから、言ってくれてるんだ。


「じゃあ……最後に、お願いしていいかな?」


「はい……!」


 そうしてユーノゥは、裸エプロンまで披露してくれた。


 撮影したこの動画のすべてを、俺は一生の宝物にすると心に誓った。