モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する
4章8話
ピロン!
「っ!?」
俺とユーノゥ、ふたり一緒に飛び上がった。
突然鳴ったスマホの着信音が、俺の告白の邪魔をした。
『申し訳ございません。妹さんからのメッセージが届きました』
無視したいところだが、ユーノゥは気を遣って俺から離れた。
「え、えっと。今の音、アラタさんがメッセージを受け取ったんですよね。アラタさんのお話……メッセージを確認したあとに、改めて聞かせてください」
「……ごめん」
「アラタさんが謝ることはなにもないです」
そんなユーノゥに感謝しながら、メッセージを確認した。
『お兄ちゃん、どうせ大学サボってるんでしょ? ほんとお兄ちゃんはザコなんだから』
くっ、ザコ呼ばわりするおまえのデイリーミッションに構ってる暇はねえんだよ!
『今なにしてるか知らないけど、夜は時間あるでしょ? また一緒にゲームしよ? つき合ってくれなかったら大学サボってることお父さんとお母さんに告げ口してやるんだからねー』
やめてくれよ! 仕送りを止められたらどうする! ただでさえ金欠なのに!
俺は頭を抱えながら、しょうがないからつき合ってやる旨を返信した。
『ありがと、大好きなお兄ちゃん(はぁと)』
はいはい、こういう時だけ大好きとか白々しいんだよ。
「…………」
……ハッ!
なにやら殺気のようなものを感じ、振り向いた。
いつからか、背後にユーノゥが亡霊のように立っていた。
「アラタさん……妹さんと……仲がよろしいんですね……」
……のぞき見されていた?
『今のユーノゥさんが日本語を読めるのは、翻訳魔法の効果です。音声だけではなく、文字を対象に使うこともできますので』
ユーノゥは魔法を使うほどのぞき見したかったってこと?
頬を膨らませているユーノゥの表情はかわいらしいのだが、頭の角からなぜかどす黒い煙のようなものを立ち昇らせていた。
「私も……友だちと仲良く会話することはありますけど……でも、相手はあくまで同性です……。でもアラタさんの妹さんは、家族とはいえ異性なのに……。しかも、大好きなお兄ちゃん……? 語尾にハートマークまでつけて……?」
……え、待って。なんか誤解されてる?
妹のやつが言う大好きは、ただの煽り文句だよ? ハートマークだって同じだよ?
ピロン!
『マスター。今度はマーリィさんからメッセージが届きました。破棄しますか?』
しねえよ! で、でも今は確認しないほうがいい気も……!
「アラタさん、私のことは気にせずにどうぞ。それとも、私の前では確認できないメッセージだったりするんでしょうか……?」
「い、いや、そんなわけないだろ? ハハハ……」
おっかなびっくりにマーリィのメッセージを読む。
『アラタ。そろそろあなたに会いに行こうと思うんだけど、都合はどう? か、勘違いしないでよね、べつにあなたに会いたいから言ってるんじゃないからね、あなたが私に会いたいだろうから言ってあげてるんだからね。わかったらまた私をエスコートしなさいよね!』
メッセージを閉じた。
「……アラタさん。この女、誰ですか?」
ユーノゥの声が低くて怖い。角から噴き出す黒い煙の濃度も、濃くなっていた。
……ヤキモチなんだろうが、微笑ましい雰囲気はどこにもない。
「ユ、ユーノゥ。彼女はただの知り合いだよ」
「ただの知り合いにしては、やけに馴れ馴れしくありませんか?」
「い、いや、馴れ馴れしいどころかツンツンしてるだろ? 俺、彼女に嫌われてるんだ」
「嫌っているのにメッセージを送るでしょうか? エスコートなんか望むでしょうか? この女、本当はアラタさんのことが好きなんじゃないんですか?」
「い、いや、そんなわけ……!」
ピロン!
『マスター。今度はパティアさんからメッセージが届きました』
ウソだろう!?
「アラタさん、確認しないんですか? それともまさか、やましいことがあるから確認できないんでしょうか?」
「ち、違うんだって! ユーノゥ、誤解しないでくれ!」
「誤解かどうか、メッセージの内容を見ればわかります。一緒に確認しましょう」
なぜこんなことに……!
俺は、神に祈る気持ちでパティアのメッセージを開いた。
『アラタくん。あたしね、そろそろ今の生活が落ち着きそうだよ。もうちょっとで時間が作れそうだよ。早くキミに会いに行きたいな……。あたしがいない間、まさか浮気なんてしてないよね? あたしのファーストキス奪ったんだから……ちゃんと責任、取ってよね?』
俺は、ふーっと息を吐き出した。
「やれやれ……相変わらず冗談きついな、この知り合いは!」
ゴゴゴゴゴ! と地響きのような音が鳴った。
見れば、ユーノゥの角から火山の噴火のごとく黒い煙が噴出していた。
「アラタさん……この女と、キスしたんですか? 正直に答えてください」
「い、いや、俺からじゃなくて彼女からで……!」
「キスしたのは本当なんですね……私はまだアラタさんとキスしてないのに……」
噴出する黒い煙は留まるところを知らず、もはやこの部屋ごと闇に飲み込まんとする勢いだった。
ピロピロピロー!!
今度はスマホが、メッセージの着信音とは違う、けたたましいアラームを発した。
『警告します。ユーノゥさんが「メンヘラータイム」に入りました』
なんだそれ……!?



