モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する

4章9話

『警告します。ユーノゥさんが「闇堕ちタイム」に入りました』


 なんだそれ……!?


『サキュバスは、嫉妬によって魔力をレベルアップさせます。そしてその代償は理性になります。つまり今のユーノゥさんは闇に堕ちたのような行動を取ります。闇堕ちタイムのサキュバスは異世界屈指の魔力を誇りますので、マスターは確定的に腹上死することでしょう』


 聞いてないんだけど……!?


『いま言いましたが』


 いつもいつも遅えんだよ! このパターン、何度目だよ! 実はわざとやってんのか!?


『それよりもご注意ください。全力で命をお守りください。闇堕ちタイムのユーノゥさんは、レベルアップによりサキュバスにとって最高位である魅了魔法を使えます。使われたが最後、マスターは精根尽き果てるまでユーノゥさんとエッチすることになります』


 それもひとつの選択肢か……。


『あっさりと諦めないでください! 抜きゲーの主人公ではなく純愛ゲーの主人公を目指してください! 純愛でなければマスターの望むハッピーエンドは迎えられません!』


 ……わかっている。俺が望むハッピーエンド、それはすなわち。


 ピュアな恋愛を経て、彼女を作ることだ……!


『言葉を換えれば素人ドーテーを捨てることです』


 否定はしねえよ。


「私は、アラタさんのものになりたい……。だから私も、アラタさんを自分のものにしたい……。なのにアラタさんは、ほかの女のものになっている……。だったらいっそ、私の魔法でアラタさんを私のものに……私にだけエッチしてくれるよう強制的に魅了して……」


「ユ、ユーノゥ! 全部が全部、誤解なんだよ!」


「……本当に誤解なんですか? 妹さんとマーリィさんとパティアさんのこと、アラタさんは好きじゃなくて嫌いということでいいんですか?」


「い、いや、嫌いってことはないけど……」


「アラタさんは、私のことをどう思っていますか?」


「ユーノゥのことは好きだ!」


「妹さんとマーリィさんとパティアさんよりも、好きですか?」


「っ……」


 そ、それは……。


「どんな女よりも、私が一番好きだって……アラタさんは、言えますか?」


 ……わからない。


 今わかるのは、ユーノゥは独占欲が強いということくらいだ。


 それもまた、子どもだからだろう……。


 子どもというのは、無垢であるがゆえに残酷だから……。


「アラタさん。妹さんとマーリィさんとパティアさんとは、二度と会って欲しくないと私がお願いしたら……聞いてくれますか?」


「……ユーノゥ」


 懇願する気持ちで言い募る。


「相手は妹と女友だちであって、恋人じゃない。つき合ってるわけじゃないから、浮気でもなんでもないはずだ。なのにユーノゥは……許せないのか?」


「はい」


 驚くほどの即答。


「アラタさんには、私以外の異性と触れ合って欲しくない。言葉を交わして欲しくない、その目にも入れて欲しくない。私という女だけを見ていて欲しいんです」


 ……この強すぎる独占欲は、闇堕ちタイムってやつの効果なのか?


 めんどくさい女は、むしろ好きだけどさ?


 絶対に浮気しないってことなんだからさ?


 俺だって、彼女にするなら自分だけを見てくれる女の子のほうがいい。寝取られなんて、まっぴらごめんなんだからさ?


 ……だけど。


 だとしても、だ。


「俺は──少なくとも今の俺は、ユーノゥだけを見ることはできない」


 自分でも驚くほど、スムーズに答えが出た。


 ……そういうことか。


 今の俺は、誰かひとりだけに好意を向けられない。


 要するに、誰にも恋をしていないということだ……。


『だからこそのマッチングです。相手に恋をしてもらうだけではなく、マスターもまた自分の恋を探すために、「異世界カノジョ」は存在しているのです』


 つまり、俺は。


 まだ、恋をしたことがないんだ。


 初恋すら経験していないんだ。


 ただ漫然と、彼女を作りたいと思っていただけで。


 『本物の恋愛』ってやつを、まだなにも知らないんだ……。


「……アラタさん。あなたが、私のものにならないのなら」


 ユーノゥは意を決したようにして、正面から俺に寄り添う。


 そして、優しく抱きしめて……。


「あなたが、私のものになるよう……邪魔なものすべてを、排除します」


 俺が油断している間に、スマホを奪った。


「ほかの女にアラタさんを取られないよう……二度とメッセージのやり取りをしないよう……まずはこのスマホというものを、壊してやります!」


 ユーノゥが、手にあるスマホを床にたたきつけようとした矢先。


 ピロピロピロー!!


 警告音と共に、スマホの画面がおびただしい光を迸らせた。


「きゃあっ……!?」


 ユーノゥは目をくらませる。


 同じく目がくらんでいる俺だったが、警告音を頼りに近寄り、ユーノゥからスマホを取り返すことができた。


『器物破損の意思を確認、規約違反による緊急処置でゲートを召喚します』


 ドゴーン!!


 すでに聞き慣れている雷音の後、光が晴れるのと同時に異世界に通じるゲートが現れた。


 それは、ユーノゥを強制送還するためのもの────