テスターですけど、このネトゲ学園が難しすぎるとか言うのやめれる? 「これ絶対クリアできないんですけど、責任とれそ?」

二章 ⑫

「そうじゃなくてさ。リアは俺のことを、戦力や知識の源として期待してるんだよ」


 ボスの知識とかはずっと有用だろうから問題ない。

 でも、俺が強いのかと言われたら話が違う。


「今だけは俺が上手いように見えるかもしれないけど、いずれ本当の強豪プレイヤーが台頭していくよ。リアのそばにいられるのは短い時間なんだ」


 ──マジで言っておられるので……?

 ──自分のこと序盤限定のお助けキャラだと思ってる?


「あ、そうそう、そんな感じ。成長率は悪いけど初期ステータスは高い、みたいな」


 ──参戦時点で単騎でラスボスを倒せるお助けキャラがいてたまるか

 ──自覚のないバグユニットさんがよぉ!

 ──嬢ちゃんに頼んでる場合じゃない、今すぐどないかせんといかん

 ──しゃあないな。いいか甥っ子君、ワイが正しい現実を説明したるわ


「開発コメントニキ……?」


 正しい現実ってどういうこと?

 ──ええか、甥っ子君は序盤のお助けキャラなんかじゃない

 ──最初の負けイベントを圧倒的な強さで助けてくれるイベントキャラや


「あー、確かにそんな感じのイベントはあったけど」


 圧倒的な強さではなかったにしても、とりあえず助けることはできたね。

 ──で、その後は全く登場せず噂だけは聞こえてきて

 ──最後の方で終盤の大きな壁として立ちはだかる感じやな


「完全に敵じゃん! しかも厄介なタイプ!」


 俺ってそういう立ち位置なの!?

 ──あー、条件を満たしたら倒した後で仲間になるやつ?

 ──序盤の仲間の完全上位互換になってそう

 ──後半だからギリギリで許されてるだけのぶっ壊れユニット

 ──せや。なのに嬢ちゃんは圧倒的な魅力値と運命力で初手から仲間に引き込んだんや

 ──勝ち確じゃん

 ──あーもうゲーム壊れちゃうぅ


「なんか雰囲気は摑めたからもう一度聞くけど! マジで俺を何だと思ってるの!?」


 ──なぜかモブとして雇えた雷神シド

 ──ネオグランゾンに乗ったシュウが何故か好意的に仲間になった

 ──ゲーム開始時点でもう全盛期のアマテラス様

 ──初日に偶然フレンドになったヒースクリフ


「真面目に話す気がないのはわかったけど……うん、励ましてくれてるのもわかった」


 どうもみんなは、俺ならやれると言ってくれてるらしい。

 うん、そうだよな。リアも、何年も付き合ったスタッフ陣も信じてくれてるんだ。

 いずれ力不足になるとしても、それまでは頑張ろうじゃないか!


「となると、やっぱここにきたのは正解だったな」


 ──黙って見とったけど、なんでこんなとこにきたん?

 ──まさか未修正のグリッチで一気にレベル100ぐらいにするんじゃ


「いやいや、そんな方法を知ってたらちゃんと報告するって」


 テストプレイヤーがグリッチ独占するとか、終わりだよそんなの。

 ──それならどうしてこんな遠方まで来てるんですかねえ?

 ──もう適正レベルのフィールドから遥か遠いぞ

 確かにレベル130適正ぐらいのマップまで来てる。夏休みぐらいに来る想定なのかな、綺麗な湖だし。


「ここに目的のアイテムがあってさ、手に入るクエストをしておきたいんだ」


 ──前提アイテムを取るためにレベル1で大遠征か

 ──やり込みだねえ


「責任持ってこのゲームのバランスを確認し、リアがちゃんとコンプリートできるようにする。その目標を達成するために、これから問題になるのはなんだと思う?」


 ──甥っ子君がゲームをぶっ壊すこと

 ──予定より先行してクリアしちゃって実績とれないとか


「そういうんじゃなくて! レベルだよ、レベル!」


 コメントのみんなはすぐ適当なこと言うんだから!


「もちろん知ってると思うけど、この世界では仲間とのレベル差が大きすぎるとほとんど経験値が入らないよね。レベル差補正ってやつ」


 ──スキルの熟練度は最低限入るけどな

 ──来年度新入生が入るまでに調整はしようと思っとる


「あ、そうなんだ? 楽しみ」


 ──とはいえ今年度はそのままやね

 ──ってことは、ラグがちゃんとレベル上げたら嬢ちゃんと遊べないやん


「そういうこと。俺が強くなったらみんなとPTが組めなくなるんだよね」


 ──PT内レベル差で経験値が入らなくなるからか

 ──敵とのレベル差でもマイナス補正がかかるし、無になる

 ──詰んでるやん。やめたら、このやり込み

 ──リアちゃんというデバフで甥っ子君を一般人にまでひきずり下ろそう


「そこで! この問題を解決するアイテムを取りに来たわけだ!」


 ──ひきずり下ろしたかったのに、解決する気だぞこいつ

 ──そんなアイテムあったか?

 ──あ、なんか思い出した、ヤバいぞこれ


「お、話をしてたら丁度ついたね」


 到着したのは湖のすぐそば、半壊した祭壇のような場所だ。

 幸い近くに敵はいなかったので、ささっと台座に歩み寄る。

 ──おい待てそこは

 ──ああああアカン忘れてた

 ──ここクエスト受注してなくても入れるやんけ!

 この謎解きはあちこち行かされるけど、その答えは決まってる。鍵は自身の内にこそあれ──鏡のようになった台座の上の水たまりに、自分の姿を映すんだ。

 台座を見下ろすようにして、水たまりの前に立つ。

 しばらくそうしていると──。


「お、開いた」


 祭壇が開いて地下への階段が出現。

 湖の下へと繫がっているのか、ぽたぽたと水滴が落ちていくのが見える。

 ──それはらめなのおおおおお!

 ──んあぁぁぁぁワイのゲームこわれちゃあああう!

 ──これだからグリッチしてでも縛りルールを守る変人どもはっ!


「失礼な! これは仕様通りじゃん、グリッチなんかじゃないぞ!」


 ──そもそもレベル1で突破できるとは思えないんだけど

 ──いくら甥っ子君とはいえ、アバターのステータスが完全初期では無理なはず

 ──へっ、遺跡の最奥にはエメラルドウィードラゴンが待ってる! 推奨レベル550の七天龍をレベル1で倒せるもんなら倒してみろや!

 ──それフラグー!!


 と言っても、ダンジョンの中で特別なことはしてない。

 クリアしたことのあるダンジョンを、敵をすり抜けながら進んでいくだけだ。

 狭い洞窟を抜け、水の滴る古代遺跡を踏破し、割とあっさりと湖の真下に位置する古代の祭壇にたどり着いた。

 ──なんでエメちゃんでも止められないの

 ──ちゃんと戦えよぉ


「別に倒す必要はないし」


 攻撃全部避けて、大ブレス中に普通に横を通り抜けて、終わり!


「また今度ちゃんと戦いに来るから待っててくれよ。雷轟火迅の最大出力とかでワンパンしてあげるからさ!」


 ──それはそれでやめて?

 ──どうする? ボス戦始まったら無視して進めないようにフィールド限定する?

 ──それじゃ偶然出くわしたら逃げられずに確定死だから微妙

 ──報酬があるタイプのダンジョンは倒さないと進めないように道を塞ごう

 ──ここだって一番奥にある扉は閉じてるんだよ! クエスト目的地の位置が前すぎるの!


「あくまで補足だけど、テストプレイをした時に報告は出してるからね?」


 ボス倒さなくても祭壇いけるけどOK? って。

 ──クエストは進むけどエメドラの報酬は取れないからってOKにしたのは俺ですぅ

 ──修正担当よろ

 まあまあ、ただアイテムを一つとるだけだから許してくださいよ。

 広い空間の中央にそびえ立つ階段を上り、祭壇の前に立つ。

 そこには水のたまった、丸い銀の器が置かれていた。

 頭上からは湖を通り抜けた日光が注ぎ、鏡となって俺の姿を映している。

 そっと手を差し出すと、鏡の中の俺もその手を差し出す。しかし、その表情がふっと笑顔になり──。


『我が映し身よ。汝の旅路に多くの友があらんことを』


 そんな声が聞こえて、器がふっと消え去った。

 そしてインベントリを確認すると、


「よーし! 映し身の腕輪入手! これでレベル上げ放題だ!」


 ──レベル1で取るなよぉ! こっちは最低でもレベル500、クラス単位の大規模遠征で来ることを想定してるの!

 ──これ何の装備だっけ?


「映し身の腕輪は自分のレベルをPTメンバーと揃えるアイテムだよ。腕輪をつけてないメンバーの平均レベルにまで能力が落とされて、自分には入らないけど、相手にはちゃんと経験値が分配されるようになる」


 ──え、それってつまり


「これで俺はレベル上げし放題! クラスメイトと遊ぶ時もリアを手伝う時も、何も心配せずにやれるってわけ!」


 ──あかーん!

 ──やりたい放題ぃぃぃ

 そこまでじゃないって。装備もスキルも、全能力が無理やり落とされるから、かなり不利にはなるんだし。


「いやー、テストそのままの仕様で拾えるかわからないから、一応レベル1のままで止めといたんだよね。これで安心してレベルを爆盛りできるよ!」


 ──はいゲームバランス終わりでーす!

 ──バランス調整するんじゃなかったんか!? さらに壊してどうすんねん!

 ──クエスト会話もちゃんと見てよぉー。鏡の中に映し身がいるのか、自分こそ鏡から見た映し身なのか、っていう考えさせる終わりになってるからさぁー


「よーし、まずは下校時刻までにレベル100を目指そうかな!」


 ──やっぱこうなるじゃんっ!

 ──グリッチはないって言いましたよねぇ!?


「仕様を適切に活用するのはグリッチではないのでは?」


 ──緊急修正の準備をしろ! 甥っ子君の稼ぎは全部修正対象だと思え!

 いやー、テストプレイヤーとして役に立っちゃうなあ!


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