テスターですけど、このネトゲ学園が難しすぎるとか言うのやめれる? 「これ絶対クリアできないんですけど、責任とれそ?」
三章 ②
「つまり! リア軍団には、生産ジョブや採取ジョブ、趣味ジョブといった各方面のプロが必要なんです!」
軍団と呼ぶにはメンバーが俺しかいないけど、とりあえず考えは間違ってないと思う。
生産系の実績はこの人に、戦闘系ならこの人に、イベント系ならこの人が詳しい、みたいに頼れる人が欲しいよね。
「一番重要な決戦戦力にラグ君がいるのでかなり余裕はあります。これから専門家ユニットになりそうなクラスメイトを探しましょう。今の候補としてダテ君やもの太君をチェックしつつ現場指揮官にサリスさんを確保する予定です」
「マジで使えそうなユニット集めてるじゃん」
「クラスにいい人ばっかりで助かりますねー」
のほほんと怖いことを言うリア。
勝手に軍団員の候補にされてるクラスメイトが可哀想。
「ラグ君が壊しちゃったゲームバランスを調査するって意味でも、仲間はなるべく多い方がいいですからね。もしかしたらラグ君みたいなぶっ壊れユニットが育ってくる可能性もちょっとだけなら存在するかもしれませんし」
「みんな俺なんてすぐに超えていくって」
ただ、慣れるまでの段階で心が折れちゃうのは避けたい。
その辺りは経験者として、なんとかカバーしないと!
「結論として、ですが。最終的にはG組そのものをリア軍団として、どんなイベントもコンプリートする最強チームにしていく予定です」
むふーと満足気に夢を語るリア。
「割と現実味があると思いません? これで完全クリア間違いなし! オーバーカムを最初にコンプした存在として名を残しますよ!」
「約束したし、もちろん手伝うつもりだけど」
「あ、最初じゃなくて二人目でしたね。失礼しました」
「正式サービスではコンプしてないから大丈夫だって!」
レイドレースや最速クリアの称号に、テストプレイヤーは含まれないから!
「話はわかったけど、本当にリア軍団なんて作れるのかねえ」
「む、これでも周りに人の集まる人生を送ってきたつもりですけど!」
その理由になっていた外見無双が、オーバーカムだとできないって話なんだけど!
「でも見てる感じ、G組はサリス軍団として統一されつつあると思うんだけど」
「ゔっ」
リアの笑顔が歪む。
そう、G組はもはやサリスの指揮下に入ってる感じなんだ。
私のクラス、っていうあの子の意見に、誰も異論を持ってないんだよね。
「ま、まだ挽回は可能なはずです。この後のホームルームで委員会決めがあるので、そこで私がクラス委員になれれば……」
「サリスが立候補したら勝てる?」
「無理ですね!!!」
現実が見えてるようで何より!
「サリスは色んな人に声かけてるし、あれこれと手助けもしてる。立候補しなくても推薦が入りそうな勢いだよ」
「対して私は、自分とラグ君の票しか確定してませんからね……」
「え、俺もサリスに入れるけど」
「裏切るの早くないですか!?」
「ほら、忘れてた提出物を教えてくれた恩があるし」
「うちの切り札が陥落済み……! ああいう天然のオーバーパワーがいるから私みたいなタイプは苦労するんですよ……!」
ギルドマスターとか部隊長とかそういう人間って、実は一番貴重だったりするからねえ。
ま、そこは仕方ないところだからおいておいて。
「まだそこまで決め打ちしてる人は少ないだろうけど、生産に特化した人とか欲しいよな」
「あ、そうなんですよねえ、できればちょっと早めに確保したくて。オーバーカムって、お店で売ってるアイテムは数に制限があるんですよね?」
「仕入れがちゃんと再現されてるからね」
街から納品されるアイテムの数までしか売れないから、それで足りない分は学生側で生産する必要があるっぽい。
「そもそも購買にあるアイテムは初心者用だから、それ以上は街に行くかクラフトしないと」
きっと工作部や調理部が動き出せばそういう活動も始まると思う。
部活動や委員会がスタートするまでの我慢かな。
「掲示板に、とにかく早く園芸部だけでも動き出すべき、って書き込みがありましたね……」
「あ、掲示板とかあるんだ?」
「コミュニティタブで見られますし、公式からも入れますよ」
「どれどれ……お、本当だ」
確かにスレッドがたくさん動いてる。
──オーバーカム総合
──トラッキングデバイス相談スレ
──【動物】アバターについて語る【無機物】
──クラフターズギルド
そうして並んだスレッドの中に、ふと目に付くものがあった。
「オーバーカム最強議論スレ……? もうこんなのがあるんだ」
「ありますよー。めぼしいプレイヤーはしっかりマークされてます。VRFPSで結果出してるコロンちゃんとか、格ゲーで世界大会に出てるギンランさん、アクションゲームの配信で有名なめんめんちゃんも名前が出てますし……」
有名なプレイヤーが色々と来てるんだなあ。
「テンプレにも色々名前が……あれ? G組、リア……?」
「いやー、可愛さのパワーで載っちゃいましたね! まあ可愛すぎて注目されるのは慣れてますけども」
「なんか書いてるぞ? X組コロンとデュオでCTSS準優勝……?」
「はいというわけでね! まずは委員長を目指して動いていきたいと思います!」
「強引に誤魔化しにきたなあ」
言いたくないなら良いけども!
その日、授業の最後に行われたホームルームにて。
「ではクラス委員はサリスさんで決定。全員拍手」
「みんな、信認ありがとう。G組の代表としてこれからも努力を続けるわ」
ぱちぱちぱち、とクラス全体から拍手が上がった。
まあそうなりますよねえ!
「うううっ、私のクラス委員がぁ……!」
「悔しがるならせめて立候補しろよ」
「あんな負け確に誰が手を挙げるんですか! 絶対に無理だったじゃないですかー!」
もう全員がサリスだと思ってたもんだから、誰も立候補しないし他薦もなかったんだよね。
リアが手を挙げたら間違いなく微妙な空気になってただろう。
良かったね、やらかす前に気づいて!
「ではサリスさん、ここからの進行は任せるので」
「はい、先生」
サリスは教壇に立つと、美咲先生以上の存在感で俺達を見回した。
「──では委員会決めに入るわね。全員が何かしらの委員会に入ってもらうことになるわ。1つずつ進めていくけれど、今の時点で希望があれば伝えてくれてもいいわよ」
サリアの声に、ぽんぽんとクラスから手が挙がる。
「回復スキルを取るつもりなので保健委員に!」
「俺は体育委員! 操作の練習になる!」
「動物保護委員を考えてるでござるワン」
「被ったところは話し合いかじゃんけんね。記入していくわよ」
わーっとでた意見をサリスがどんどん処理していく。
ヤバい、このままだとすぐに決まりそうだ。
「み、みんな意外となりたい委員があるんですね?」
「出遅れちゃったな、どうするかな」
学園防衛委員会とかちょっと興味あったんだけど、すでに5人手を挙げてるから微妙かなあ。
「では残った人達に希望を聞いていくけど……もし良ければ、こちらで提案をしたいの」
どうしよう、と考えていた俺達の方に目を向けて、サリスが言う。
「リアとラグ、セットで残っているみたいね。問題なければこの委員、考えてくれないかしら?」
「これ、って……」
彼女が指したのは、絶対にオーバーカムにしかなさそうな委員会。
「クエスト進行委員会……?」
「なんかゲームっぽい委員会に入ったなあ」
委員会決めの後、全校で最初の委員会議が行われる。
リアと二人、校舎一階の集合場所へと移動中だ。



