テスターですけど、このネトゲ学園が難しすぎるとか言うのやめれる? 「これ絶対クリアできないんですけど、責任とれそ?」

三章 ③

「変な委員会ですけど、実績って意味では情報が多そうなのでアリです!」

「クエストと関われるならいいかもね」


 ゲームにしかない委員会だろうし、俺も結構楽しみ。


「でも環境保護委員とかに入っても経験値が稼げないですよね。差がついちゃいませんか?」

「え? 採取スキルでも経験値は入るぞ?」

「戦わなくてもいいんですかっ!?」

「もちろん。最終的には難しいフィールドへ素材を取りに行くんだから、ある程度のステータスは勝手に伸びていくよ」


 主に器用値を上げることになるし、スキルも採取系を上げていくから戦闘力は高くない。それでも最低限は戦えるようにはなるはずだった。


「コントローラーが壊れるぐらい採取して、結果強くなっちゃった人とか勧誘したいですね」

「それ初年度に希望する人材じゃないんだよ」

「初年度なのにクリ済みを確保したんだからなんとかなりません?」

「俺みたいなのが何人も居てたまるか。いや言わせないでよこんなこと」


 IQ5ぐらいの会話をしている間にクエスト進行委員会の集合場所に到着。

 そこはファンタジックな受付と掲示板に貼り付けられた依頼書、そして酒場のような飲食スペースのある不思議な空間。


「ぼ、冒険者ギルドですーっ!」

「うわー、わかりやすいな」


 見たことはないのになぜか見覚えがある、学校内の冒険者ギルドだった。

 貼り付けている依頼は低レベルのものばかりだけど、報酬次第でやってみてもいいかな。


「おう、クエスト進行委員のやつら、こっちだぞ!」


 ヒゲ面の先生に呼ばれ、俺達は受付奥の会議へ進んだ。


「さて、全員揃ったな」


 50人ほどのクエスト進行委員が会議室に勢揃いした。

 お、縦ロールの子もいるじゃん。そっか、別クラスの人も居るんだもんな。

 相手はリアに気づいているのかいないのか、手元のウインドウを眺めている。

 今は一学年だけど最終的には三学年揃う前提なんだろう、会議室はやたらと広くて余裕があった。


「まず話しておくが、この委員会は他とは立ち位置が違う。ここで説明した内容が合わないと思えば、いつでも辞退を申し出てくれていい」


 冒険者風の衣装を身につけたヒゲ面の先生が、渋い口調で語った。

 他とは違うって、一体何をさせられる委員会なんだろ。


「クエスト進行委員、その名の通りこの学校におけるクエストの進行に携わる委員会だが……オーバーカムにおけるクエストは、何種類かに分けられる」


 木のボードの上に大きな画面が映し出される。


「最も規模が大きいのは、全校が一丸となって挑むワールドクエスト。学校全体を巻き込んだ派手なイベントで、ある種のお祭りのようなものだな。一部イベントクエストもここに入る」


 ワールドクエスト、と文字が記載された。

 VR空間あってこそだけど、こういう未来的な映像を見てるとちょっとワクワクするよね。


「次にクラス単位で進行されるクラスクエスト。各クラスの生徒40人が協力して攻略を目指すクエストだ。これはクリア順がスコアとして計算され、他の成績も加味して、年度末にクラス賞が発表されるぞ」

「……実績あるかもしれません。落とせないですね」


 こそこそとマイクをオフにし、リアが呟いた。

 文化祭とか合唱コンクールとか普通の学校でもクラス単位での勝負はあるし。

 オーバーカムだとそれがクエストになってるんだな。


「そして最後が個人クエスト。すでに受けている者もいるだろう。学校のスタッフなどから受注したり、今はたどり着くのも難しいだろうが、遠方の街でも受注できる」


 ワールドクエスト、クラスクエスト、個人クエストの文字がウインドウに並ぶ。

 俺もクラスクエストの存在は知らなかった。

 マジで学校要素は教えられてないんだな……言ってくれよぉ、みんなぁ……。


「この内、特にワールドクエストとクラスクエストにおいて、進行のまとめ役や調整役を行うのがクエスト進行委員の役割になる」


 へー、本当にクエスト進行の補助をするのか。

 大人数がばらばらに動いたら非効率的だし、情報の集約も必要だもんな。


「先生、それってクラス委員がやるんじゃないんですか?」


 そんな質問が飛んだ。


「もちろん他の者が指揮官をしても構わない、自由に決めるといい。ただ一つだけ、クエスト進行委員が絶対にしなければならない役割がある」


 ヒゲの先生は厳しい表情を崩さず、短く言った。


「クラス内での自由を維持することだ」


 ……自由を、維持?

 どういう意味だろ、と首をかしげる俺達に、


「ワールドクエストやクラスクエストはとても大きな規模で行われる。しかし参加したくない生徒は参加しなくていいんだ。戦うことが主となるクエストなら、争いごとを好まないものは見学していていい。逆にクラフトやファーミングに関わるクエストでは、戦いだけが好きな者は見ていて構わない」


 ああ、そういうことね!

 クエストだ! 全員参加だ! 必ず仕事を果たせ! って空気になると、そのジャンルが苦手な生徒が苦労するもんね。


「これは各々の育てるステータスやスキルについてもそうだ。クラス内で特定の能力やスキルの取得を強制してはならない。これは絶対だ」


 タンクが足りないから盾スキル取れ! とかね。

 そんなこと指示されたら何も楽しくなくなっちゃう。


「クラス内でのスキルや装備のバランスが整っている方が進行は楽だろうが、偏っていても問題はないんだ。この世界のあらゆるイベント、クエストが、理論上は一人でクリア可能なように設計されているからな!」

「へえー、ソロでも倒せるんだー」


 撃破証明。その言葉が脳裏をよぎった。

 俺は倒し終わってる。この委員会で扱うだろう謎や、課題になる敵の全てを。

 先に、一人で。

 う、うん。ネタバレ……しないように気をつけないと……!


「クエストを進めるための調整をしつつ、決して強制をしてはならない。難しく厄介な立ち回りだが同時にやり甲斐もある。それがクエスト進行委員だ。さあ、辞退をしたいなら受け付けるぞ」


 誰も手を挙げなかった。

 オンラインゲーム内の学校だからこそ、って委員だし。面白そうだもんな。


「……ふっ、気合いの入った良いメンバーだな。ならば!」


 ヒゲの先生が立ち上がり、ばーんっと手を叩く。


「お前たちに指令を与えよう!」


 画面が切り替わり、庭園に設置された小さなホールのような建物が映った。

 その内側にカメラが移動すると、そこには何か怪しげな影が揺らめいている。


「これはクラスルーム。我々の用意した、君たち生徒のための空間だ。各クラスに一つの空間が与えられ内部を自由にデザインすることができる」


 おお、ハウジングみたいな感じかな?

 クラスのたまり場をカスタマイズできるんなら楽しそうだ。


「だが困ったことに、内部に強力なエネミーが巣食っている。このままでは使うことができない……そこでクエストだ!」


 ピコン! と右下にアイコンが表示された。

 新規クエスト受注の通知だ。


「さあ力を結集し、クラスルームに巣食うエネミーを撃破せよ! これがお前達が挑戦する最初のクラスクエストだ! さあ動き出せえ!」


 おー! と声が上がった。

 よーし、クラスのみんなに情報を共有しないと!


「これは実績チャンスですね!」


 と、隣のリアがうっきうきの笑顔で言った。


「最初のボスってことは、間違いなく実績がありますよ! しっかり倒してスタートダッシュを決めましょう!」


 ぱっと立ち上がり、俺に手を伸ばす。


「今こそラグ君が輝く時ですっ! さあ攻略ルートに案内してください!」


刊行シリーズ

テスターですけど、このネトゲ学園が難しすぎるとか言うのやめれる? 「これ絶対クリアできないんですけど、責任とれそ?」の書影