テスターですけど、このネトゲ学園が難しすぎるとか言うのやめれる? 「これ絶対クリアできないんですけど、責任とれそ?」
三章 ④
「いやこのクエストのことは俺も知らない」
これ、俺の知らないクエストなんだよ。
学校っぽいクエストだからだろう、なんと俺はテストプレイをしてない!
内容はもちろん、どんなエネミーがいるのかもわからない! ワクワクしてきたぞ!
「……なんでこう、大事な時に役に立たないんですかねえ」
「そう言わないで欲しいなあ!」
未体験クエストの存在に、こっちは大興奮なんだよ!
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「クエスト進行委員とはそういう役割だったのね。突然受注のアナウンスが出たから何事かと思ったわ」
大半の委員は先に終わっていたのか教室には多くのクラスメイトが戻ってきていた。
クラスクエストは全員が勝手に受注していたらしく、その話題になっていたみたいだ。
「それでサリスちゃん、まとめ役なんですけど……」
「もちろん私がやるわ」
「……ですよねー」
ちょっと残念そうなリア。
俺以外からの信頼度が足りない。リア軍団にはまだまだ早いね。
「本来は委員会の顔合わせが終わったら各自下校の予定だったけど……そうはいかないわね」
リアは教壇に立つと、目を引く動作でクラスメイトの視線を集めた。
「みんな聞いて頂戴。クエスト進行委員がクラスクエストを受注してきたわ。クラス全員でクリアする、大規模な共同クエストよ」
「知らぬ間に受注していたのはクラスクエストだったのでござるワンか」
「内容は、クラスルームという場所にいる敵を倒すこと。報酬はこのクラスが自由にカスタマイズ、利用できる専用スペースよ」
「欲しい! ソファとか置こ!」
「俺ら何すりゃいーのー?」
「ええ、これから指示を出すわ。初めてのクラスクエストという性質から考えて、今からみんなで殴り込めば勝てる──とは思えない。校内の各所で情報を集め、学校施設全てを活用しての戦いになるというのが私の推測よ」
うわー、ありそう!
チュートリアルの延長で学校の施設を使って準備をしよう、みたいなやつ!
「今まで構内の施設、図書室や工作室は利用できなかったわ。でもクエストの開始にあわせて変化があるはず。場所を指定するから情報収集にむかって頂戴。無理な人は遠慮なく言うのよ、詳細はちゃんと共有するわ」
すごい勢いで話が進んでいく。
G組は本当にあの人に任せておけばいいんじゃなかろうか。
「やっぱり自分がリーダーになるよりサリスちゃんを味方にした方が早そうですね……」
「可能なのかなあ……」
優秀なユニットって仲間にする条件きついよね。
「体育委員会から戻ったところで悪いけれど、ショウは体育準備室。スズネさんは放送室よ。もの太は購買に、ダテは飼育場で係のNPCに話を聞いてきて」
指示を受けた生徒がぱらぱらと移動していく。
「サリスちゃん、私たちはどうします?」
「申し訳ないのだけれど、あなた達には一番危険な場所へ行ってもらいたいの」
口では申し訳ないと言いながら、サリスはむしろ楽しげに言った。
「強行偵察よ。クラスルームにいるというエネミーを直接確認して来て頂戴」
「さあクエストだ! 冒険だ! 行くぞリアー!」
「楽しそうですねえ、ラグ君」
そりゃもう! なんせ知らないクエストなんだ!
どんな謎があってどんなイベントが待ってるのか楽しみだよ!
「私も気楽ですけどねー。いくら強力なエネミーって言っても、ラグ君なら絶対に倒せるんでしょうし」
「俺は倒さないけど」
「はえっ!? どうしてですか!? 倒しちゃえばいいじゃないですか!」
「いやいや、どうせ撃破したら実績開放だろ? 別に急ぐことないし」
「こういうのは早い方がいいんです! さっさと済ませれば次にいけますから!」
「そんな処理みたいな言い方しないで!?」
最初のクラスクエストだよ!?
みんなで攻略する大事なイベントなんだから!
「そもそもラグ君、かなりレベル上げてますよね? いくらボスでも簡単に倒しちゃうんじゃないですか?」
「え、リアと同じレベルだよ?」
「そんなわけな……あれぇっ!? なんでPT欄のレベルが同じなんですか!?」
「ラグ、うそつかない。リアと、つよさおなじ」
「じゃ、じゃあ装備ですか? すごく強い貴重な武器を持ってるとか!」
「いいえ、初期武器に制服だけです」
「……何かやってますね? つこうてるんですよね? 話してください、ほらほら!」
「言えぬ、言えぬ……いや、言ってもいいけどちょっと内容がややこしい……」
リアとPTを組んでるので、映し身の腕輪の効果でレベルが彼女と同じになってるんだよね。
ステータスも調整されてるので本当に同じレベルの強さだ。
「というわけで簡単に倒すってわけにはいかない。しっかり情報を集めよう。難易度がどうなのかも、999のゲームをコンプしてきた美少女の判断に期待してるよ」
「むー、絶対ラグ君にすりつけて戦わせますからね!」
「そういうところのカリスマがないから軍団員が増えないのでは……?」
そもそも情報収集が目的なので勝つ必要はないし、ね。
「目的地はクラスルーム……西側の庭園みたいですね。どどーんって一つだけ建ってますけど、これってどのクラスも同じ建物なんですか?」
「多分ね。26クラスに3学年で、大量にクラスルームが必要なんだ。同じ入口からそれぞれの部屋に繫いでるんじゃないかな」
「なーるなる」
校舎を出て庭園を進んでいく。
と、前方からなんだか豪奢な人影が歩いてきた。
「あら、あなた方は……」
金色の髪をまきまきに巻いて、気の強そうな瞳でこちらを見るドレス姿のアバター。
購買で会ったコロンだ。
ストリーマーをしているみたいで、リア被害者の会の一員だ。
──あれ、ってことは。
「そう、ここにいらしていたのね。強敵の気配を感じて現れるなど、あなたらしいですわ!」
一瞬迷う間に、向こうがすっと姿勢を正した。
コロンはびしりと優雅な所作でこちらに手を差し向けて言った。
「綺羅空リア! 最速記録の更新、このオーバーカムでは譲りませんわよ!」
「ちょっ、コロンちゃん!? 久しぶりに会ったのに、その名前はやめてくださいっ!?」
リアはわたわたと両手を振って、俺の視線を遮る。
「きらそら? あれ、そんな名字だっけ?」
「違います違います! ハンドルネームというか、本当に特定のゲームでちょっとつけた名前というか、なんかそのキラキラ感が嫌でコンプしたらすぐ辞めたぐらいですし!」
「そうですわよ、あなた! どうしてCTに──クロス・ターゲットに戻っていらっしゃいませんの! 皆様が待っていますのよ!?」
「えええ? だってCTはもうコンプしましたよ? 最後にカスタム大会参加の実績も解除されたので、やることないんですよぉ」
「これだからあなたは……」
げんなりとしながら、コロンはちらりとコメントの方へ視線を向けた。
「ああわかっていますわよ! ストーカーストーカーと書き込むんじゃありませんわ! 文章の皆様とて、戻って来るなら歓迎するでしょうに!」
ええと、聞くつもりはなかったんだけど、これはさすがにちょっと事情が知りたい。
「あの、リア? コロンと何かあったの?」
「ええー? 仲は悪くなかったはずですよ? 一時期同じゲームをしてて何回かマッチしたことがあって、最後はデュオで大会に出てそこそこいい感じでしたし……」
「自分のやらかしを小さく言うんじゃありませんわ! あなた女性プレイヤーで最速のチャレンジャーランクに到達して、わたくしと参加した大型大会で準優勝したじゃありませんの!?」
「リアつっよ!」
なにそれこわい。ほんとうにこわい。



