テスターですけど、このネトゲ学園が難しすぎるとか言うのやめれる? 「これ絶対クリアできないんですけど、責任とれそ?」

三章 ⑤

 どんなゲームか全然知らないけど、どう考えてもめっちゃ強いじゃん。


「違うんですよー。チャレンジャー到達っていう実績があることに気づいた時には大半の実績を取り終わってて。いまさらコンプせずに終われなかったんです」

「実績が欲しいからって理由で最上位に食い込まれたら、選手生命を賭けている人はどんな顔すればいいんですの!? あなたの名前、今でもそこそこ伝説になっていますのに!」

「名前変えて本当に良かったですね、面倒事が回避できます!」

「これはひどい」

「まあ美少女なのでこのぐらいは余裕でセーフの範囲かなと」

「美少女バリア分厚すぎない?」


 ハクスラ系のゲームで後半のボスが張るヤケクソバリアぐらい分厚い。


「はあ……まあ、やりたくないことを無理にさせるのは優雅ではありませんわね」


 コロンの方も配信中に粘るつもりはないのか、肩をすくめて話を切り上げた。


「そちらの方は以前購買でお会いしましたが……おふたりでクラスクエストの攻略に?」

「うん、とりあえず偵察に」


 のほほんと答えたリアに、コロンはふむと口元に手を当てる。


「ではお気をつけなさいませ。相手はスーペリアナイト、かなりの強敵でしたわ」


 ──え?

 なんか知ってる名前が聞こえたぞ?

 さらっと出てきたエネミーの名前に硬直した俺の前で、二人は真剣な表情で話を続ける。


「スーペリアナイト……強かったんですか?」

「ええ、わたくしは一時撤退いたしました。動きはそこまで面倒ではありませんけれど、火力が高くこちらの攻撃は通りが悪い、という純粋な強敵でしたわね。レベルを上げて挑むか、何かしらの準備を前提にしているタイプだと思いますの」

「なるほど〜」

「特に乱舞系というのでしょうか? 連続で攻撃してくる技と、突進した後でディレイをかける攻撃が厄介ですわ。どちらも位置取りだけでは避けられませんのに、受ければほぼ即死の威力でしたの」

「へえー、参考になります!」

「様子見をする時間はかなりありましたので、回復アイテムが有用かもしれませんわ。食堂に回復アイテムが売っていますので使ってみるのもよろしいのではないかしら」

「ちょっと買ってあるから使ってみますね、ありがとうございました!」

「ええ、健闘を祈っておりますわ」


 お嬢様はひらひらと手を振って去って行った。

 おい、おいおいおい、噓、だろ……?


「情報がもらえて助かりましたね! これ、ラグ君ならもう敵が特定できるんじゃ……」

「許せん」

「……え?」


 俺は戦闘モードに切り替えて片手に武器を実体化した。


「は、え、どうしたんですか!? どうしていきなり怒ってるんです!?」

「あのピーお嬢様! 無警戒の俺達にネタバレとか、絶対にしてはいけないピー行為だろ!」

「発言が検閲されてますよ! 隣に居るから全部聞こえてますけど! どうしたんですかラグ君、こんなに怒ってるの初めて見ますよ!?」


 どうしたもこうしたもないよ!

 コロンは俺の地雷を踏み抜いた!


「あの人、思いっきりネタバレしていったじゃないか……!」

「……ああー」

「そんなことかぁっていうリアクションやめて!」


 怒っていいところでしょ、これ!


「だってコロンちゃんも戦ってきたところなんですよ? 全然勝てなかったみたいですし、ネタバレってほどじゃないですよ」

「いーやネタバレだね! クリア済みがするネタバレよりはマシだけど、挑戦済みが初見にネタバレするのも、十分に罪な行為だ!」


 クリアしてない仲間だからアドバイスしてもOKだと思ったか! それも立派なネタバレなんだよ!


「だいたいさあ! 俺がネタバレしそうになるのを必死にこらえてるのに、あっちは普通に話しちゃったんだぞ!? 許せないだろ!」

「それラグ君の私情なんじゃ……」

「私情で悪いか! 私情で人をピーしたらいかんというのか!」

「いかんと思うから落ち着きましょう?」


 くそう、どうしてこのゲームにはPKがないんだ。

 学校内でPKが可能だったら怖すぎるけど、今この瞬間だけは実装して欲しい。


「あのですね、ここ学校なんですよ? さっき小テストがあったよーって他のクラスの友達が教えてくれたら、ネタバレだって怒りますか?」

「めっちゃ感謝する」

「ほーらー」


 そうだけど! 学校って意味ではネタバレは許すべきだけど!


「だって俺、楽しみにしてたんだよ。知らないイベントだから何があるかわからないって……」


 なのに、もうダメなんだ。

 コロンの話を聞いたら全部わかっちゃったんだ。


「名前を聞いたらもうダメじゃん……知ってるもん、そいつ……倒したことあるもん……普通に勝てちゃうもん……」

「ああ……そう、なんですね……」

「英語だとSuperior knightだろうから、スペリオールナイトって名前の方がいいんじゃない? って話もしたんだ。でもスーペリアの方が適切だからって……ランクの高い部屋っていうダブルミーニングだったんだ……そんなことまでわかっちゃうじゃん……」

「本当に豆知識が出てきましたね、この攻略本」

「ちなみに、最初のボスとしては適切な強さだと思う」

「それが一番信用できない情報なんですよ」


 今回ばかりは間違いないと思うんだけどなあ。


「ああすまないねえ学生さん、ここは今使えないんだ」


 クエストの目的地に設定されていた場所、校舎西側の公園内にあるクラスルームの前。

 警備員のNPCが困り顔で入口を塞いでいた。


「ここでなにかあったんですか?」


 リアの言葉をAIが判定し、NPCの口がなめらかに動く。


「それが私たちにもわからないんだ。ただ入った者は誰も出てくる様子がない」

「えええっ!? 大変ですね!」


 これは間違いなくイベントが進行してるやつだね。


「どうする、とりあえず入ってみるか?」

「普通なら何がいるのか、どんな危険があるのか、情報を集めるべきなんでしょうけど」


 でも、と苦笑して、


「噂のスーペリアナイトさんがいるって、ネタバレしてもらいましたからね」

「全部わかってるからなあ」


 中に居る敵も、その攻撃手段も、リアは知ってるんだよね!


「でも名前を聞いて帰るってわけにはいきませんね。強行偵察って聞いてますし、戦って情報収集と……いっそ倒してしまってもよかろうです!」


 リアが戦闘モードに切り替え。両手に短剣が出現し、その刃が鈍く輝いた。


「よからないと思うなあ」

「まあまあ、まずは私が戦いますから。その後でラグ君が、ね?」

「適当に条件つけて引っ張り出そうとしてる!」


 だから倒せるんだってば!

 とはいえ、戦わなきゃいけないのは同感だ。

 最初のボスとして適切な強さなのかは、一応ちゃんと確認しておかないと。

 テストとは変わってるところもあるかもしれないし、サリスにも情報を届けなきゃいけない。


「じゃあ俺達、入ってもいいですかね?」


 NPCに尋ねると、警備員の彼女は渋々と頷いた。


「止めることはできないが……何があっても責任は取らないぞ」


 彼女の手でホールの扉が開かれる。

 その先は別マップになっているのだろう、見通せぬ闇が広がっていた。


 闇の中に足を踏み入れると、マップ移動はすぐに終わった。

 楕円形のダンスホールのような、だだっ広い空間。

 その中央に鎧姿の人影が膝をついている。


「わ、いますねー。ナイトっぽい人!」

「いるなあ……見覚え、あるなあ……」


 西洋風の鎧をまとった騎士。紛れもなくスーペリアナイトだった。


「はああ……」

「が、がっかりしてますねー?」

「やっぱ知ってるエネミーなんだよね……」



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