テスターですけど、このネトゲ学園が難しすぎるとか言うのやめれる? 「これ絶対クリアできないんですけど、責任とれそ?」

四章 ②

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「というわけで、放課後デートしましょう!」

「……ほ、ほほう?」


 突然言い出したリアに、俺は動揺を抑えながら答えた。

 絶対に俺が思うような意味じゃない。勘違いするなよ、気をつけろよ。


「クラスクエストにあわせて部活動が開放されて、みんなが動き始めるタイミングですからね。各部をまわって有望なユニットに目星をつけようと思うんです」

「……ああそういう」


 ほらやっぱりそういうことじゃん!

 わかってたし、別にそんなことだろうと思ってたし!


「俺も情報収集はしたいし、全然構わないよ」

「さすが頼れる相方ですね! 約束ですよ!」


 でも、と間をおいて。


「運動部はちょっと私の体力的に微妙なので、目当ては文化部ですね。たくさんまわりますから、覚悟しておいてくださいね!」

「ハードスケジュールになりそうだ……」


 まあ色んな部活に知り合いがいるってのは悪いことじゃないか。

 みんながどうやってオーバーカムを楽しんでいるのか、俺も知りたいところだしね!


「特に今後活躍することがわかってる部活は要チェックです!」

「活躍するっていうと、重要なアイテムが生産できる園芸部とか調理部、工作部とか?」

「飼育部もですね。それから行事予定に記載のある部も忘れちゃいけません。定期公演のある演劇部や吹奏楽部、文化祭はもちろん、色んな行事で活躍する美術部も。放送部は公式放送があるみたいなので出演すれば実績解除されそうですし、SSコンテストでは写真部が最有力です。他にも……」

「多い多い多い! 全部見学する気か!?」


 慌てて言った俺に、リアは待ってましたとばかりに言った。


「見学だなんて、ラグ君は考えが甘いですねー。ちょっと挨拶しただけで味方になってくれるわけないじゃないですか!」

「へ? じゃあどうする気?」

「可能性のある部活には全て所属するんですよ!」

「兼部しすぎぃぃぃぃっ!」


 どれだけの部活に入るつもりだよ!


「入る部活の数に制限はありませんから! 校則は守ってますよ!」

「ちゃんと活動するのが大前提だろ! 幽霊部員なんて歓迎されるわけないって!」

「そこは完璧美少女、リアちゃんの交渉術をご期待あれ、ですよ」

「見た目の可愛さはこの学校じゃ武器にならないって……」


 まあリアがやるというなら応援はするけどさ。


「というわけで、放課後は一緒に部活周りです!」

「……やっぱ俺も参加なんだ?」

「ラグ君が来なくてどうするんですか! 一緒に入部してくださいよ!」

「俺までハイパー幽霊部員になるの!?」


 やだあああああ、部員のみんなに気まずいー!


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「というわけで一箇所目、こちら放送部です!」


 やたらとファンタジックな文字で放送室と書かれた部屋。

 しっかりと分厚いドアは、なるほど音漏れを防いでるんだなって感じだけど……この学校には防音の機能なんて必要ないんだよね。


「本当に幽霊部員になりにいくのか……」


 普通に入部するよりめっちゃ緊張するんだけど。


「へーきへーき、お邪魔しまーす」


 リアが臆することなく部屋に突入する。

 ゲーム内独特の特殊な室内構造で、オープンワールドだというのに、部屋の中はかなり広い。

 中にはそれなりの人数が集まっていて、突然入ってきた俺達にちょっと驚いていた。

 騒がせてほんとすいません!


「あれ、リアちゃんとラグくんなのだ?」


 と、その内の一人がやたらと聞き覚えのある合成音声で言った。


「スズネちゃんじゃないですか。放送部だったんですね」

「そうなのだ。滑舌なら任せてほしいのだ」


 入学初日から顔を合わせている、いつも合成音声で喋るスズネさんだ。

 もちろんその声には全く淀みはなく、読み込みミスさえなければ無敵だろうね!


「それで、二人ともどうしたのだ?」

「実は私とラグ君、放送部に入りたいと思いまして」


 片手を上げて言ったリアに、スズネさんが目を丸くする。


「え、本当に? G組から入ってくれるの、私以外だと初めてかも! ちょっと説明するね!」


 スズネは小走りで奥へと駆け込むと、嬉しそうに設備を紹介し始める。


「見た通り放送部なんだけど、色々できること多くてね? 全校放送ができるのはここだけだし、定期的に公式放送もやる予定なの。あと放課後は校内、校外に向けて配信ができて、人数とかいいね数にあわせてカムが支給されたりも……」


 あああ、めっちゃ嬉しそうに解説してくれてる! すごく申し訳ない!

 あとなんか、普通に活動内容が楽しそう! 配信したらカムもらえるの!?


「公式放送は興味ありますね! あと、イベント中の指揮にも便利そうじゃないですか?」

「指揮とかは、得意な人がいないけど。っていうか二人とも、本当に放送部でいいの?」


 今更疑問になったのか、スズネが首をかしげた。


「ここ、本当にただの放送部だよ? 配信とかはできるけど、戦ったりしないよ?」

「はい。入れる部活はほとんど入るつもりなので」

「……なにそれ……?」


 ほらあ! そういうリアクションになるじゃん!

 普通に考えて困るって、そんな幽霊部員!


「全ての部活に入る? それアリなの?」

「まだ部長とか決まってないけど、ちょっと止めた方が……」


 スズネ以外の部員さんも、こいつらヤベエって顔をしてる。

 やっぱりやめたほうがいいんじゃ、とリアを止めようとした時。


「誤解しないでください。私達はみんなを助けるために入部するんですよ」

「え、別に困ってることなんてないけど……」

「今は平和に放送部としての活動を始めればいいでしょうね。でも、この先はどうですか?」


 リアは自信満々の笑顔で部員たちを見回して、


「クラスクエストで出てきたボスは知ってますよね? この学校は立派なアクションゲーム! いつ強敵が出てくるかわからないんです!」

「あ……」


 リアの言葉に、数人の部員が息をつまらせる。


「あんなボス、ここにも出るかもしれないの?」

「あー、そしたらちょっと困るよな……」

「そこで!」


 リアは胸をどんと叩いて、堂々と言った。


「私とラグ君が入部しておくことで、いざという時にすぐ救援ができるんです。他にも設備向上のクエストで高難度の素材が必要だとか、遠くの街に届け物があるとか、色んなところで手助けできると思いますよ!」

「そりゃ本当に助けてくれるならいいけど……強いの、君?」


 どこか疑わしげにこちらを見る部員たち。

 そんな彼に、スズネがびみょーな表情で言った。


「……この二人、ボスの偵察に行ってそのまま倒してきた人達なのだ」

「あ! ボスを初見一発撃破したっていう、G組の!?」

「その通り! 冗談で助けるとか言っているわけじゃないんですよ!」

「なるほどねえ……確かに頼れそうだ」

「そうでしょうそうでしょう!」


 なっ、こいつ!?

 テスターなのに最速でボスを倒しちゃったという俺の汚点を、こんなところで利用してる!


「ふっふっふ……今の時点で戦闘を放棄して文化部で活動しようなんて生徒は、みんなゲームスキルに自信がありません。ボスを最速撃破した実力者、欲しいに決まってます……!」

「まさか、このためにトドメを刺させたのか……!?」

「コンプリートに必要なのは綿密な計画です。二手三手先を考えて動かないといけませんからねぇ……!」

「マジで腹黒が過ぎる」


 とはいえ、放送部の面々が戦闘面で自信がないのは本当らしく。


「そんな強い人がいてくれるなら、いいかなあ」

「うん、戦える人は絶対いたほうがいい!」

「助かるって人は多いみたいだし。放送部として変なことしないなら、全然入ってもらっていいんじゃない?」


 そういうことになった。

【実績:道は一つじゃない】【難易度:☆】

 部活動に所属した証。

 勉学、冒険、部活動。君の選べる道は決して一つじゃない。


「楽しそうなイベントがあったら二人で遊びに来ますね!」


 実績が解除されて、にっこり笑顔で手を振るリア。

 ああ、楽しそうな──実績の解除される──イベントには必ず来るんだろうなあ……。


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