プロローグ ②
完全に崩れ去った廃工場。周囲に土煙が立ち込め、地響きがいまだ周囲の建物のガラスを震わせている。地面に突き刺さった鉄骨や、遠くまで飛散したガラス片がその倒壊の
しかし、土煙が晴れた先には、倒壊のど真ん中だったはずの場所に一人
彼の左右では太い鉄骨が交差するように地面に突き刺さっており、傘のようになって彼を他の
とはいえ……
「たまたま最初に落ちてきた鉄骨が傘代わりになり、たまたまそれ以外の
いつの間にか
青年は
「そう言うお前も、なんで服だけがボロボロなんだよ。アーカイブ」
アーカイブと呼ばれた金髪の少女もまた服が傷だらけになっていたものの、体には傷一つついていない。
「私は今日死ぬ運命ではありませんので」
少女は乱れた前髪を整えながら淡々とそう答えた。血の汚れすらない
青年はため息をついて空を見上げた。
「ハァ……運命ね……」
彼は自分の右腕を見る。袖口からわずかに
「運命、運命……俺たちはそればっかだな」
「……少なくとも私の運命は呪われてはいませんがね」
「でも、自分の方がマシだなんて思ってないだろ」
「…………」
何も答えなかった少女に青年は自身の上着を掛ける。
「ま、少なくともお前だけは解放して見せるよ。絶対にな」
青年は袖を引っ張って炎のような暗い
金髪の少女は長いまつげを伏せて「ご自由に」とだけ答えた。そのまま彼女は手に持った赤い
「大丈夫ですかっ?」
退避していた隊員が青年の下へ駆け寄ってくる。青年は片手をあげてそれに答えた。
「大丈夫っす。施設の制圧は?」
「済んでいます。組織員らしき人物は数名拘束済みです。どこの組織の
「『
「どちらにしても、切り捨て前提の末端組織の可能性が高そうなので、大した情報は得られなさそうです。ノアリーの名すら知らなかったので」
「ああ、そうなんですか。有名企業なのになぁ」
「ハハ、
「はは、そっすね。……っと失礼」
青年が眉を上げると、ズボンの左ポケットから携帯端末を取り出した。羽根のストラップがついたその端末は「着信中」の文字を表示して何度も振動していた。画面に映った着信者名を横目に見ながら青年は通話ボタンを押す。
「……なんですか。
『こーらこらこら、上司はそんなに邪険にするものじゃないぞー?』
青年の面倒くさそうな声音を跳ね返すようなハイテンションな口調だった。中年程度の男性の声だが妙に声が高くハリもある。
『ちょうど任務が終わったところでしょー? さすが私。Nice timing!』
最後だけやたら発音のいい英語だった。
青年はうんざりした表情を浮かべる。
「……頼んでた件、進展があったんですよね?」
『おー
その言葉で一気に彼の顔が引き締まった。彼の視線が隣で待機する金髪の少女に移る。
『根回し頑張ったんだよー? ……まあ、ただし破壊任務だ』
青年の表情が曇った。
「でも、
『だーめだよ。大きな実害が出ているんだ。ノアリーとしては、あれを保管するという選択肢はない。私も頑張ったが……
「…………」
『あの子を助ける手がかりを見つけたいというのは分かる。望みを
「……わかりました」
その後簡単なやり取りをしたあと、青年は通話を切った。彼は目を細めながら自らの右手に持つ
青年はフルフェイスの隊員に
「すみません。それじゃあ俺達次の任務に行くんで、後片付けお願いします」
隊員は鋭い敬礼でそれに答えた。
「了解。……ノアリー最上級調査員『
「いやあ、そんな。こちとらただの高校生ですよ。そんな
ヘルメットの奥から笑い声が漏れた。
「一級の軍人ですら普通はなれない役職にいる高校生を『ただの』とは言わないでしょう」
「ハハハ……まあ、そうっすね……」
なんとも言えない苦笑いを返し、青年は金髪の少女へ口を開く。
「アーカイブ。行こう。新しい任務が入った。場所も近い。連続だけど大丈夫か?」
「問題なく。そこに理の
「いや、やっぱ待った。その前にお前は着替えろ。服持ってきてやるから」
吹いた風は土煙を
倒壊してもなお壊れた機械に
これは運命に縛られた青年と少女の物語。
決められた結末に向かい、それでもなお



