序章 ③
俺たち一同を見て小首をかしげる。
「みんな、こんなところで立ち尽くしてどうしたの?」
「べつに何もないわよ。部室に行く途中でばったり会ったから話してただけ」
いけしゃあしゃあと言いやがって。
だが先輩にとって
先輩は、じぃーっと交互に俺と
「まぁ喧嘩するほど仲が良いって言うからね。でもほどほどにね」
やんわりと諭されて俺たちはぐうの音も出ない。聡い先輩に隠すのは無理があったか。
『善処します(する)』と返事がハモり、
「ほらほら、言ったそばから睨み合わない。もう喧嘩はおしまいっ。それよりも
「あ、そういやまだだった。
リョウたちは若干驚いた表情をする。
「え、そうなんですか。でも僕は……」
「大丈夫よ。二人に参加してもらうのはただの人数増やしが理由だから」
「……そういうことなら分かりました」
「
了承する二人。言葉と逆でリョウは不満に感じてそうだなぁ。あとでなんて言われるか。
俺たちの関係や事情を知らない先輩は「二人ともありがとう」と笑顔でお礼を言う。
「
「わぁ覚えててくれたんですか、嬉しいです! あのときはわたしの相談に乗っていただけてすごく助かりました!」
「僕もその節はお世話になりました」
「どういたしまして。力になれたようで何よりだよ。今回はよろしくね」
先輩はこちらを振り向いて「ほらほら
「俺は二人と同じクラスなので知ってますよ」
「あ、そうなんだ。同じクラス……」
何を思ったのか、リョウたちを勢いよく振り返り。
「
「は、はい」
「わ、分かりました」
「先輩っ、気持ちはありがたいけどやめてください!」
クラスに馴染めない子供を心配する母親のように思えて
それから、みんなで固まって部室に向かう。二階を通り過ぎて三階の視聴覚室へ。
スチール製の両開き扉を開けて、
室内は静謐としていた。広さはおおよそ教室二つ分ほどで、南側の大窓に付けられた遮光カーテンは開けられていて照明なしでも明るい。黒板がある前面には天井から垂れ下がったスクリーンや投影機材が置かれており、教壇の前にはずらりと長机が等間隔に並んでいる。
初めて中に入った。この特別棟は建てられてまだ三年ほどしか経っていないそうだから中学とは比べものにならないほど設備の質が立派だ。周囲の壁もしっかりと防音素材でできているようで、演劇の練習には持ってこいの環境だな。
室内には、すでに二人の女子生徒がいてすぐ目の前の席に座って雑談をしている。胸のリボンの色(この
二人は入ってきた俺たちに気づくと、椅子から立ち上がって気さくな様子で手を上げる。
一人は、ショートにしたダークブルーの髪の女子生徒。目鼻立ちのくっきりした顔つきは美人というよりもイケメンで、女子制服が似合わなく見えるほどだ。
もう一人は、おさげにして胸のまえで垂らした薄茶色の髪の女子生徒。優しげな垂れ目には赤縁メガネが掛けられており、聡明さや真面目さを醸し出している。
「
「そうだね。
そこで言葉を区切り、イケメン
「もしかして
「うん。
「はい! 私もですっ」
嬉々とした様子ではしゃぐ。そこに先程までの凜々しい雰囲気はなく、今はまるで飼い主に愛想を振りまく子犬のよう。どうやら先輩のことを尊敬している感じだ。
しかし俺の存在に気づいた瞬間、
「なんでこの
先輩の腕に抱きつきながら獅子のように攻撃的な目になる。遠くのほうでは
「私が誘ったんだよ」
「え……どうしてこんな野蛮な人を!?」
「
「か、彼氏……そ、そうでした、すみませ…………いや、そもそもどうしてこの人と付き合ったんですか!? はっきり言って
最早この非難も定型句だ。先輩も散々言われ慣れているのだろう、全く動じていない。
「ほんとにそう思うよ。私には不釣り合いなほど素敵な彼氏だもんね」
「違います! 逆です逆っ」
「
「……
「ほ、
先輩の言うことに逆らえない
「
こんな息苦しい挨拶は初めてだ。仲良くなれる気がしねぇ。
案の定、居た堪れない状況に陥ったとき、不意に勢いよく部屋の扉が開け放たれた。
同時に小柄な女子生徒が躍り出てくる。
「みんなぁ、わたしが来たぞぉぉ!」
ピンチに駆けつけたヒーローの如く、両手を目いっぱい広げた謎ポーズで声高に叫ぶ。
リボンの色は二年生。さっき
肩で切り揃えられた銀髪に、くりくりとした目とふっくらな丸い輪郭が幼さを強調している。言動も然ることながらとても俺より一
「いつにも増してハイテンションね、
「
タッタッタと忙しない足取りで先輩に近づこうとするが、
「わっ、噂の不良っ!」



