A/Bエクストリーム CASE-314[エンペラー]
1 追憶 recollection ⑤
とっつぁんの頭部はまるごと、
「あわわっ、まだ三万メートルだろ、なんでヨレんだよ……!」
などと目の前のポータブルテレビの競馬中継に向かって叫んでいる。
「ゴシップ、この映像で検索できるか?」
「ん?」
サングラスの男・『ゴシップ』は、お軽い動作で振り向いた。
情報端末も兼ねる幅広のサングラスがよく似合う、年齢
社の経理・財務担当重役を務めているが、これも例によって、経理部・財務部とも構成員は彼一人だけ。つまり彼は社における事務
「ええと……人工
「ううむ、
と、とっつぁんは職人として目を
「ふうん、じゃ、その周辺からあたってみるか……検索スタ~ト、っと」
サングラス型情報端末が、ゴシップの
「こい、こい、こい……」
ほんの数秒で、スリーセブンが
「おっ、さすがだねえ、とっつぁん。ビンゴだ。G&B社の〈アーリⅡ〉……
言うだけ言うと、ゴシップはさっさと競馬中継の観賞に戻る。
「……って、ふおおっ! 来てる来てる! 行けっ、アキラチョーラッキー!」
その叫びは無視して、相変わらずミカンの皮を、筋までていねいに
「
「
とっつぁんは、ごつい
「やっぱり、
「ふうむ、ちらほらとそういう
「それにしても、親方」
と、それまでアンディの
「連中、
「たしかに。あんなにはっきりとした形でセンサー群を形成しているとはな。
「おつむの方が兵器についてってねえから、どんな形でも
軽く片付けようとするアンディに、キットは含みのある視線を向ける。
「どうかしら。センサー群や熱線兵器は取り込めたのに、脳組織……ニューロン・ドームは取り込めないって
くすりと笑ったキットに向けて、アンディは必殺技をひそかに放った。
「言ったな、この……!」
「? ……っあ、ちょ、止めきゃはははっ!」
キットが突然とびはね、
「ふはははは、見たか、我がアンドロイド流
「
とっつぁんがモニターの中で
「お、親っ方っひゃひゃっ、呆れてないで止めてっ!」
「
「そうそ、馬に蹴られて……ってちくしょうっ!」
冷淡に返すとっつぁんに同調するように、ゴシップが跳ねた。馬券がばらまかれる。
「モーレツハヤミだと!? やっぱ1ワク
アンディは勝ち誇ってさらに攻勢をかける。
「はっはっは、
「ひ、ひ、し、死ぬ!!」
と、その時、
一瞬の
「みんないる?」
奥から、とっくりセーターに長めのキュロットという、くつろいだ
このふすまの奥はエレベーターである。ディビジョン
〈ゾーン〉は
彼らがたむろしている地上社屋は、一階が〈ゾーン〉発生機関と〈チャリオット〉発進用ガレージ、二階が待機室という構造になっている。
そのエレベーターから出てきたエリーが、丸
「なに? 楽しそうね」
「どこが? 最悪だぜ」
ゴシップがうめいた。次の給料日まで、苦難の道が彼の目の前に延びている。
ようやく
「~そ、そう、最悪~」
「エリー、さっき社長が言っていた依頼の件か?」
とっつぁんは構わずきいた。
「ええ、たった今、その公式
「うえ~!」
アンディが悲鳴をあげた。
「なに? 依頼先、公団だったのか? 久しぶりのでかいヤマか!?」
ゴシップは勢いよく身を起こした。踏ん張れば、特別ボーナスが出るかもしれない。
エリーは
「大仕事よ。不確定要素だらけで競争者も多いけど、その分
エリーは全員に、依頼の要旨をまとめた紙を一枚ずつ配った。紙の端には黒い記憶素子が焼き付けられているので、アンディやとっつぁんは一瞬で情報を読み取ることができる。
エリーは、紙が一枚余るのに気が付いた。
「ボギーは? 全員待機だったでしょう」
キットが答える。
「ベランダでお休み中。今コールを……」
アンディが
「かけたから、すぐ下りてくるわ」
言う彼女の前で、記憶素子に親指を押しつけて情報を読み取っていたアンディが、ごろんと
キットはその
「どうしたの?」
「ん、いや」
その時、アンディと同じように一瞬で要旨を読み取ったとっつぁんが、
「ほう! やっと再起動までこぎつけたか」
と珍しく声を
ゴシップも
「ヒュ~ッ♪ 改修、終わったんだな。たしかに、これに
キットも
『依頼──グレムリン
等、いつもの項目を流し読みしてゆく。
『状態──内部作業員および研究者との連絡
これも珍しいことではない。
グレムリンは発電施設であるリアクターでエネルギーを吸収し、



