殿様気分でHAPPY!

一章「鬼が来りて」 ⑦

 かずの目には見えない腕が伸び、しかし知覚的にと感じる確かないちげきが壬琴へとおそいかかる。

 宙に浮いていたビデオカメラが真っ二つに裂けた。内部の機械をあたりへまき散らし、しかし〝定義〟を変えられた以上、こわれることなく、あちこちへ欠片かけらとなって散っていたモニターにいまなおけんぞうたいを映し出しつづけている。

 宙を泳ぐ壬琴へ、ふたたびなぐりかかる一撃。


「いま!」


 するどく〝歪み〟をった壬琴が、一馬の視界を斜めに突っ切りながら叫んだ。

 壬琴はおとりだったのだ。鬼の注意を一身に集めたそのとき、いままで〝定義〟を変えられまいと歯を食いしばりつづけていたみづきが部屋の隅で立ち上がった。

 手にしていた刀がいちじんの青白い光と化して、頭上高くへ伸び上がる。

 みづきの長い髪が青白い粒子を散らしながらなびいた。そして次のしゆんかん、光の刀身がいちもんに振り下ろされる。

 ぐげええええ

 ──その悲鳴は一馬の。文字ひとつひとつがね回り、やがて空気に溶けるようにしてさんしていく。

 がしゃん! 一馬のすぐ近くにビデオデッキが落ちてきた。折れ曲がっていたてんじようが元へと戻り、黒板も笑うのをやめ、時計も自分の役割を思い出してまっとうに時間を進めていく。

 三人の戦士が荒々しい呼吸をくり返す中、まるできりが晴れるかのように辺りの暗がりがうっすらと消えていくのを一馬は感じていた。彼のかたわらに落ちたビデオデッキは真っ二つに裂けていて、ばちばちと火花を散らしている。


黄泉よみが……」


 と、みづきは言った。


「結界が……」


 と、壬琴が言った。

 以降、ちんもくが占めた。窓の外に、赤黒い雲がれこめている。かきーん、と金属バットの音が遠く聞こえた。

 二人の言わんとしていることは一馬にもわかった。

 結界が破られ、黄泉が現われた。

 それはすなわち、結界のたみとしてせられた絶対のおきてにより、彼らが戦わねばならないときが来たということを意味していたのだ。