ラプンツェルの翼
1:少女育成計画《オペレーション》 ②
「あのさ、前々から思ってたことだけど、君は女の子に対しての情報が極端に少ないよね」
美穂がむっとしたように振り返った。
「でも、次の選挙でどっちが政権を取るかとか、どの関連株価が上がるかとか、そんな話をしている女子生徒を見たことがない」
「地球規模の話もするよ。温暖化でシロクマが困っててかわいそうとか、ね」
美穂は選んだ下着を遼一に押しつけた。
「美穂がレジを通してくれ。頼むよ」
そんな遼一に、美穂がじっと疑わしげな視線を向けた。
「な、なんだよ美穂」
「……すっごい汗かいてるね」
「体調が悪いんだよ」
「そっか。だから
美穂はレジに向かった。
ショップの外で待っていると、会計を終えた美穂が出てきて紙袋を遼一に渡した。
「助かったよ」
「これくらい別にいいけどね。体調悪いなら早く帰りなよ」
美穂は自転車を少し押してからこちらに振り向いた。
「……
「いや大丈夫。
「そっか。……子供の
「そうだよ、俺たちももう高校生だからな」
遼一は美穂に手を振って足早にその場を
「
*
マンションの階段を上る足が異様に重く感じた。
四階の最上階の部屋だがエレベーターを使う気になれない。部屋に
恐る恐る扉を開けると、さらに重い気持ちになった。
「やっぱりな……」
夢ではなかった。
いつもは整然としているワンルームの部屋だったが、
部屋の中央にいるそれが遼一を悩ます悪夢だった。床にぺたんと座っている少女。
少女は、部屋に戻ってきた遼一に気づくと、こちらを向いて
これはどうすればいいのだ?
彼女との関連はまったくない。もしかして、ひとり暮らしをしている遼一への神様からの誕生日プレゼントだろうか。しかし誕生日は三ヶ月も先で、このプレゼントは決してうれしくはなかった。子供を作った
開けっ放しの冷蔵庫の中も荒れていた。濃厚ソースがぶちまけられ、中がべったりと汚れている。
「
「…………」
少女の返答はない。
それでも遼一は、コンビニの袋から缶コーヒーを取りだすと、タブを開けて少女に渡してやり、冷蔵庫を片付け始めた。
「わわっ」
ふと振り向くと少女がコーヒーを胸にこぼしていた。急いで駆け寄り、茶色く染まったシャツを脱がしてやる。下には何も着ておらず、むわっと甘い
遼一は視線を
パンツに少女の足を片方ずつ通す。視線を上げると少女がじっと
少女にパンツを
自己嫌悪に
イラッときた遼一は部屋の脇に置いたトランクを手に取った。彼女はこのボコボコに
人形のようにおとなしくしている少女を抱え上げ、トランクに強引に押し込もうとしたが、不意に少女が暴れだした。手足をじたばたとさせる少女の力は異様に強い。
「いつつ……」
遼一は
さらに少女は床に散らばる本を投げたりと暴れ続けている。通常はおとなしくしている少女だったが、トランクに入れようとした
遼一はしばらく
振り向くと、いつの間にか少女が暴れるのをやめテレビを見ていた。遼一は少女がテレビに興味を向けているうちに、部屋と自分の気持ちの整理を始めた。
少女をベッドの上にそっと置くと、部屋に散乱した本やガラスの破片を片付ける。少女は身じろぎせずにスイーツ特集の番組に視線を向けている。
ベランダに出てケージの中の鳥の世話をすることにした。
遼一は雀を眺めながら、もう一度思考を整理する。
まず、ベッドに座っている少女。彼女はなんであるのか。
現在の彼女は大きな
部屋に戻って少女の隣に座る。見た目は普通の女の子だ。小学校高学年から中学生ぐらいの
少女の両手首と両足首にはアクセサリーのようなものが装着されていた。アクセサリーに
彼女はいったい何者なのか。血の通った弾力のあるこの肌は、人間のものであることに間違いはないのだが。
遼一は缶コーヒーを飲んで息を吐く。少女を警察に連れて行こうという思考は当然あった。しかし、まず疑われるのは遼一自身なのだ。なかなか決心がつかない。
遼一にトランクを渡したあの女性の言葉がよみがえる。
『必ず取りに行きます。それまで預かっていてください』
『
『これは、とても危険な武器なのです』
『決して開けてはいけません……』
開けてはいけない……。
しかし、部屋に持ち帰ったとき、トランクはガタガタと動いていた。ロックが
そして、中に入っていたのが裸のこの少女だったのだ。
まず考えた。



