アトリウムの恋人
2 東京スフィア ①
放課後の活動という
しかし、それでも放課後を待ち望んでいるような感情も少しだけあることに気づいた。授業が終わると淡々と帰宅していった
「日直の作業があるから、先に行っててもらえるかな」
五時間目の授業が終わると
同じものを共有するという形式は人間関係において多くのウエイトを占めているのだろう。心を通わせるには、同じ言語や人種などの
前田は
渡り廊下を歩いていると、前田を見つけた
「今日から活動開始って感じなんですかね」
「ていっても、何をしたいんだろうな、遙花は」
前田と雪村は並んで歩き部室へと向かった。北校舎は前田たちのクラスのある新校舎ができると、サークルの部室や倉庫などに成り下がった。前田も本来ならば北校舎に用はなかったはずだ。静かな北校舎に足を踏み入れると不安が
「大丈夫ですよ。僕も
「あの人はあんまり信用できないだろ」
前田はため息を
「本当に来たのか」
「……ええ、部員だから」
彼女は小さな声で答えた。彼女は
「昨日勝手に決めちゃいましたけど、悠羽美さんは会計になりましたから。まだ部費などは集めてませんけど、よろしくお願いします」
「会計? ……デリケートな仕事ね」
雪村は平然と悠羽美に話しかけている。
「名義だけ貸して、サークルに来ないかと思ったよ」
たとえるなら効率的な女子だった。身にまとう色はモノトーン系が多く、表情の起伏も声量もとても小さい。
「この前のカンニングペーパー助かったよ。おかげで追試を
赤点を取った
「で、なんでこんなへんぴなサークルに入る気になったんだ?」
悠羽美はパタンとノートパソコンをたたんだ。
「本当に遙花から
悠羽美は
「なんでお前を誘ったんだろうな。基本的にコミュニケーションに難があって、決して
前田が考え込んでいる横で、悠羽美は少しだけむっとした表情を浮かべた。
「まあまあ、せっかくだから協力しましょうよ。みんなで対策を立てる必要が……」
「悠羽美ちゃん来てくれたんだ。ごめんね強引に誘っちゃって」
遙花はうれしそうに笑っている。
「あ、前田君は初対面だった?」
「大丈夫、仲良く会話もしていい
「そっか。でも紹介しておくね。二年一組の
「ふーん、高橋はオンラインゲームとかに興味があるんだ。趣味は? 好きなプロ野球チームとかあるのか? あれ、どうして黙ってんの?」
前田が聞くと、悠羽美は聞こえないほどに小さく舌打ちをした。
「前田君、悠羽美ちゃんは
「……お、みんな早いな」
会話をしていると最後に
「じゃあ、せっかく五人で集まったから、お菓子でも食べながら話そうか」
遙花が言ったので前田はどきりとした。
「な、なんか作ってきてくれたとか?」
「あ、ごめんね、昨日は時間がなくて、買ってきただけなんだ」
「今度は何か作ってくるから」
遙花が
五人は机を囲む形で座った。前田はアルフォートというチョコレートを食べてみたが、塩っ気のあるビスケットがチョコレートに合ってうまかった。見ると
気づくと遙花だけが
「……よし、ではそろそろ始めようか」
沈黙を
「何か相談したいことがあるのだろう」
繭子の視線に遙花は小さくうなずき立ちあがり、
「親にもクラスメイトにも相談できなくて。いろいろ考えた結果、限られた人たちに秘密を共有してもらいたかったんです」
遙花は小さなスチールケースを机の上に置いた。シンプルな銀色のケースだった。
「このケース、私の部屋にあった百科事典の中に入っていたの。百科事典のページがくりぬかれていて、そこに入ってた」
「その百科事典は誰のなんだ?」
「私が中学生のときに、古本屋で買ったもの。そのときは当然普通の百科事典だったんだ」
「へえ、いつの間にかこれが入っていたってことか。それは
前田はちらりと遙花の
「
遙花が見せたのは銀色の小さな鍵だった。それをケースに入れて回すと、カチリとロックの
「……このことは
「わかってる。部外者には口外しないよ」
前田はうなずいた。他の三人も同意する。
「じゃあ、開けるね」
遙花はケースに手をかけた。ぎこちない音を立ててケースが開く。
「入っていたのはこれなの」



