アトリウムの恋人
2 東京スフィア ②
ケースは黒い布で
三枚のチケット。茶色い封筒。飲食店だろう店のカード。黒いフィルムに包まれたのど
「ケースの中にこれらが入ってたってわけか」
前田はのど飴を指先で
「他にも入ってたものがあったけど……」
「それはなんだった?」
「写真だけど、それは見せるほどのものじゃないから抜いといたの」
遙花は机の上に並べたものを見て明らかに困惑している。まったく身に覚えがないものなのだろう。前田はチケットを手に取った。
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Tokyo Sphere
admission ticket
もうひとつの東京へ……。
★ 一枚で三名までログインできます
★ ワールド内での事故の責任は本人にあります
★ 有効期限・なし
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チケットの表にはそう表記されていた。
「トキオスフャー、か」
「東京スフィアですよ」
「自分なりに調べてみたの。そうしたらスフィアという
「なるほどな。スフィアについてはそれほど危険なものではないよ。私も
「でも、なんでこんなものを持っていたのかわからないの。これだってそう」
「ぴったり百万円だったの」
確かにそんな大金が部屋から出てきたら、喜ぶよりも
「もしかしたら、親のへそくりかもしれませんね」
「本当にそう思う?」
遙花は否定的だ。確かに親がそうしたという
「これには
遙花は誰にも相談できずに、ずっとひとりで
「ごめんなさい、こんなことを相談してしまって。ちょっと気味悪いよね」
遙花は視線を落としていた。細い肩が
「そ、そんなことないよ。だって俺たちは同じサークルのメンバーだろ。同じ時代に生まれて同じ学校に入ってこうして同じサークルに所属する奇跡のような偶然。そしてこんなミステリアスなことが起こるなんてわくわくするじゃないか。きっとこれは運命なんだよ。俺たちは見えない意思に導かれたんだ、ああ違う、ちょっと宗教っぽくなっちゃった……」
「前田君はなに言ってるの?」
遙花が首を
「
「ああ、偶然集まったメンバーだが、遙花を助けるぐらいはできるだろう」
雪村と繭子がフォローした。
「ありがとう」と、遙花はうれしそうに
「とりあえず、所持品を確認していきましょうか」
遙花に気を
「この香水の瓶は遙花さんの私物ですね。……特に変わった香水じゃないですね」
雪村が香りを確認している。横にいる前田の鼻がツーンとするほどの強い香りだ。
「このお金はちょっとわかりませんね。この
「近くの喫茶店だな。
その喫茶店には前田は行ったことがなかった。
「このチケットでスフィアに入れるんだよね。ということは、まずはスフィアにログインしてみればいいってことかな。リアルな体感ゲームっていう
「それはどうかな」
チケットを握る
「何か問題があるの繭子さん?」
「スフィアワールドのサービスはすでに終了しているのだよ」
繭子は言った。
「もともとスフィアは東京で限定的に始まったサービスのことだ。
「でも、ネットで情報を調べたら、仮想世界で遊んだりするってあったの」
「それはスフィアのほんの一面にすぎない。いや、仮想世界で遊ぶという要素は、スフィアのコンセプトから
繭子は遙花の言葉を否定してから、部室の扉を開けた。廊下では自動クリーナーが作動している。
「スフィアを簡単に表現すると、東京に知能を与えるシステムだ。──あの自動クリーナーがどうしてこの学校で動けるか知っているか。障害物を避け、汚れた場所を探すこともできる」
「センサーで作動してるから?」
「それもある。しかし、自動クリーナーがあれほど自由に動けるのは、スフィアシステムを利用しているからだ。つまり、学校のマップをデジタル化している」
繭子は遙花たちにかみ
そのため、学校のマップをデジタル処理しコンピューターに管理させた。学校に張り
「有名な話だが、AIが活動するにあたって最大の問題はなんであるか。それは、
そこでコンピューターが床の情報をクリーナーに送っているのだ。情報はクリーナーからも送られ、汚れている場所のデータはすべてのクリーナーで共有される。つまり情報がフィードバックされている。
また、この部室の
「その情報を
スフィアという



