なんのかんので脱落者が出てきた。
この辺りで情報を整理せねばなるまい。
(右ウィング)
上条当麻
×クウェンサー=バーボタージュ(顔面焼き)
×ヘイヴィア=ウィンチェル(ますいじゅう!)
陣内忍
東川守
少年(ジャック=エルヴァン)
ぶーぶー
×城山恭介(女王と高次に)
(左ウィング)
インデックス
フローレイティア=カピストラーノ
座敷童
バニーガール・可憐
ヴァルトラウテ
ベアトリーチェ
×白き女王(あにうえと高次に)
男女比は五対六。
クウェンサー、ヘイヴィアの両名がダウンした事でフローレイティアが完全に宙ぶらりんになっているのが要注意である。
これを完全フリーとなったフローレイティアがどう動くか分からないとおののくか、今なら誰にも怒られないから行っちゃえー! と前のめりになるかが分かれ道だった。
(……あれ?)
そしてふとギャンブラー東川は何かに気づく。
(合コンとは言っても結局のところ、六歳の忍や北欧系の少年は数に入らない。多分灰色の豚も以下略だ。となると、もしや、これはひょっとするともしやですよ……?)
ちっ、ちらっ……と大学生は横目で恐る恐る観察する。
「ほらー、あちこちくっつきまくってるぞインデックス。ポップコーンの弾けてないヤツがだ」
「んー」
標的はツンツン頭の高校生、上条当麻。
(つまりあいつさえ丸め込んで共同戦線を張っちまえば後は選り取り見取りなんじゃねえーっ!?)
そうなのであった。
大前提として、東川とセットで召喚されたのは血塗られたバニーガール可憐。
目下最悪のトリックスターだった『白き女王』もまた目的を果たして退場した。
『こういうの』にギラギラしてそうな馬鹿二人も勝手にダウンした。
となれば。
これはもうあれなのであった。この一世一代の独壇場、縦横無尽に暴れない道理がない。最悪、みんながみんな正統派ペアを組んで『やっぱりキホンが一番安心するよね☆』などと笑い合っている中、一人だけ正座で俯いて小刻みに震えるだけだったかもしれない東川守。それがここに来てジャックポットを総ざらいするチャンスが転がってきた。この辺りはやはり腐ってもデスゲーム生還者たる東川のカルマなのか。
(やる)
急に背筋がシャッキリした東川は漢の顔になって決意を固めた。
(やってやりますよだってよくよく見たらナイスバディばかりじゃない! 黒髪のヤマトナデシコからプラチナブロンドのコクサイハまで全部揃っているじゃない!! 何だか赤い鎧の娘は装甲で盛ってる気もするけどそれはそれだ。欲を言えばおっかないバニーガールをパージしてから事に及びたいところだが条件をこだわりすぎて全てのタイミングを失っても仕方がない。ならば即刻行動に移るのみ!!)
ずざざーっ! と東川は正座のまま手だけを動かし、両足が履帯になってる重装甲巨大ロボみたいな動きでさりげなく(?)上条へと近づいていく。
ハンカチで口元を拭いてもらっている真正面のインデックスには聞こえない程度の声で密談を開始する。
「(……もし、そこの若いの。これ以上のトラブルを避けるために手を組まないかね)」
「あん? アンタ一体何を……?」
「(そこの白いシスター、アンタだって見も知らんヤロウにツバつけられたかないだろ。協力してやるって言ってるんだよ)」
「っ!?」
チョロい! と東川は心の中だけでガッツポーズを決めていた。やはり純真ボーイは既存の正当ペアの可能性しか頭にない。これでは一体何のためのコラボなのだとお叱りを受けてしまいそうな単純思考だが、それならそれで操りやすい。
これで上条少年にはインデックスのガードに専念してもらおう。その間に東川は全部美味しくいただいてしまえば良いっ! ぐわはははーこの世の春が来たーっっっ!! と油断すると大魔王的大笑いが口から飛び出してしまいそうになる東川。
そして上条は目をキラキラさせて感謝の言葉を並べていた。
「(そ、そんな事が……? よし分かった! それなら俺もお前を応援する。あのバニーガールとくっつくようにすれば良いんだよな!?)」
「えっ、あの、それはちょっと……!」
「(なあに心配するなって。お互い大切なものを守るためなんだ。こんなので遠慮はなしだぜ!)」
ちょっとおおおー……!! と涙目の東川が必死に軌道修正を図ろうとするも、もはや濁流からは逃れられないようだった。
一方その頃、六歳の忍は首を傾げてこんな風に言っていた。
「なあ姉ちゃん」
「なに忍?」
「そもそもごーこんって何やったら勝ちなの? 最先端のアソビは難しくて分からん!」
うっ……とグラマラスな年長者の言葉がわずかに詰まる。いくら年の功があっても江戸時代には合コンなる作法は存在しない。夜這いというある意味さらにアグレッシブな出会いが横行していたので別に昔なら奥ゆかしい訳でもないのだが、少なくとも今この場ではあんまり役に立たない。
なので、座敷童は座敷童でちょいちょいと隣にいる人の服を密かに引っ張っていた。
「んー?」
何となく現代っぽい服装の人、という事で頼られてしまったバニーガールは細い顎に人差し指を当てながら、
「まあ定義にもよりますが、ひとまず連絡先を交換できたら勝ち組って事じゃないですかね? 合コン会場でいきなりカップル成立宣言なんてやったりしませんし、大事なのってアフターでしょ。ああでも、かるーい感じで勝手にリンクを結んだり拒否ったりできるPINE(パイン)とかでなく、もっと設定変更の難しいプロバイダ直のメアドとか電話番号とかが望ましいですけど」
「れんらくさき?」
と忍がますますひねった首の角度を深くしていた。
そりゃまあ、まだ小学校にも入っていない六歳児にいきなりケータイやスマホを渡して放ったらかしだとしたらその時点で両親相手に家族会議が始まってしまうだろうが。
しかし、だ。
ちょっと待った、と座敷童も改めて周りの顔ぶれを見渡し、そして疑問を口にした。
「そ、そもそもケータイやスマホを持っている人って、この中に何人くらいいるのかしら」
何をバカなと思うかもしれない。
だがこのメンツをもう一度きちんと思い浮かべてみてほしい。
「ハトなら来るよ! 脚にお手紙を巻いておくの!!」(←少年)
「ぷきー。お手紙なら妖精達が受け取ってくれるみたい」(←ぶーぶー)
「端末関係は全て軍にモニタリングされているし高級軍人へ不要に接近すればスパイ容疑で諜報部門にマークされると思うがそれで良ければ」(←フローレイティア)
「まあ一応私も。……これ忍のアカウントだからデータの表面だけなぞると六歳児にコナかけているように見えちゃうけど」(←座敷童)
「海外の使い捨て(プリペイド)が基本ですなあ。なおこのスマホは任務開始と同時にバッテリーが発火するのがほとんどで」(←バニーガール)
「神託や予言などの形でも構わぬのか」(←ヴァルトラウテ)
「ひとまず【兵輝】に送ってくれれば」(←ベアトリーチェ)
「未払いで止められてんだよ今……」(←東川)」
「フツーのケータイ」(←上条)
「〇円なんだよ!」(←インデックス)
言わんこっちゃねえ、半数以上がファンタジーや怪奇現象に片足突っ込んでて話にならないのであった。というかツンツン頭と食いしん坊が一番文明人に見えている辺りですでに末期である。
というか、だ。
そもそもの話をしよう。
「……俺達、異世界からかき集められてきたんだよな」
「それがどうかしたのかなんだよ」
「なら連絡先を交換してその後何が生まれるというのかっ!? いちいち顔合わせるたびに世界の壁を突き破らなくちゃならないとかバカじゃねえの鬼難易度! 年に一度の七夕のお二人さんだってもうちょい緩めでしょお!!」
多分時空間を突き破ってでも的確にエモノを追い回せるのなんてティンダロスの猟犬か白い繭で誰かと混ざり合った例のツインテールくらいのもんだ。なんて意味のねえ合コンなんだこんちくしょーであったが、そこで悪魔が囁いた。
そう。
菱神舞や『白き女王』でなければこいつで決まり、バニーガール可憐その人である。
「(……あれ? でもだとすると今この場に限りどんな無礼講をやらかそうが元の世界に引っ込んじゃえばゼッタイ追われる事なくノーカウントじゃね???)」
急に背筋を伸ばしてシャッキリした人がいた。東川守は正座のまま垂直に飛び、座卓を超え、水泳の飛び込みスタイルで女性陣へと突撃していった。
後腐れなし。
何でもできる。そして怒られにゃい!
この言葉で理性が焼き切れるダイガクセイも少なくないのだ!!
「あははうふふ真っ昼間からYOBAIスタイル!! 日本って本当に良い文化ですね!!」
そしてフローレイティアは座ったまま静かに傍らへ手を伸ばした。もう飛んだ後だってのにヤツらは魂で語らう。
「ほほうこれが本場の日本刀というヤツか。やはりステンレスブレードとは存在感が違う」
「何だそりゃあ鹿の角に乗っけてナニ飾ってんの陣内邸……!?」
「そして何をやっても咎められる事はない、だったよなあァ!!」
良心の人上条当麻がとっさに男子サイドにいた忍と北欧少年を押し倒して視界を塞ぎ、そしてダイブ途中の例のヤツが頭からアジの開きで一丁上がり(注・ただ今イメージ映像を挟んでお送りしております)。さらに飛び散った先がいけなかった。あろう事かヤツは禁域たる白い繭に触れてしまってほいさっさでござった(注・強烈な事象負荷により一部言語が乱れておりますが不良品ではありません。白く見えますのは沈殿物ですのでそのまま美味しくいただけます)。
でもって。
『ギシャゴシャアアグルゴルゴルゲルバァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
もう人語ですらなかった。
魅惑のあにうえを取り込んだ『白き女王』は永遠を手に入れて自力で新しい世界の一個二個でも作り始めているのかもしれない。
「お、おい。座卓の上に散らばったはずの血の珠さえキレイに消えていくのであるぞ!?」
「せめて私達の記憶からもいなくならない事だけ祈りましょう。てか刀で縦に両断された上に存在消されているみたいだけど大丈夫か東川さーん?」
だがこれでギラギラしたダイガクセイ東川守もダウン。
男子勢が半分くらいいなくなった計算だ。そして残りは上条、忍、少年、ぶーぶーのみ。
ベアトリーチェは頬杖をつき、座卓の天板を空いた手の指先でとんとん叩き、そしてぼんやり考え事をしていた。
「……うーん。後はあのツンツン頭がくたばれば安心してぶーぶーとごろごろできそうなんだけどなあ」
「聞こえてる! 全部聞こえちゃってんだよもォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
総毛立って叫ぶ男子高校生であったがベアトリーチェの目線はふわふわしていて心ここにあらずだ。あれは下手するとピンボールみたいに上条を何回かバウンドさせて白い繭にぶつけるコース取りでも思い浮かべているのかもしれない。
「いっ、インデックス! そうだ女子サイドからのお前もこの排他主義に何とか言ってやって……」
「ほうら魚肉ソーセージはこちらであろうぞー?」
「もがむぐむしゃむしゃ」
「いやぁああああ!! 裏で根回しされてるっ、てかいつの間にか俺の排除を願ってるヤツが一人じゃなくなってるー!?」
そんな事を言われても世の中にはバランスというのが存在するのだ。男五〇人女五〇人の鉄道車両なら誰も気にしないが、男一人女九九人なら抱く印象も変わってくる。女性専用車両でなくとも専用感は出てくるものである。
後手、上条当麻九段に打てる手は限られている。
(何としてもインデックスを奪還して味方につける! 王手金銀飛車角落ちだがまだ金を取り戻せる!! だが何につけてもおやつが足りねえ!!)
ぱんぱん!! とツンツン頭は両手を勢い良く叩いて盛大に呼びつけた。
「どっ、どなたかー!? 追加のおやつはございませぬかー! であえであえー!!」
「はいよ」
そして低い声を絞り出して雑にチーズとクラッカーを並べただけの大皿を置く等身大の金髪美少女パーフェクトオティヌスがここに。
ガタン!! とむしろ盛大な音を立てて腰を浮かそうとしたのは上条よりもヴァルトラウテの方だった。慣れない正座のせいですっかり両足が痺れていたのか、やや前へつんのめるような格好になりつつも、水着より恥ずかしい黒い革衣装にマントと魔女帽子、片目に眼帯の金髪美少女を凝視しながら、
「な、なな、何をしているのであろうぞヒゲぇ!!」
「……それはこちらの台詞だ。この主神を差し置いて眷属尖兵如きが数限られし席に着くとは何事か」
ヒゲ? と首を傾げている小さな少年などもいるが無理らしからぬ事であった。何故ならば、
「元々汝にイイトコなんぞ欠片も期待しておらぬが、それにしたって少々大人気がなさすぎるのではないか。いくら何でも年端もいかない金髪少女それも半裸っていうか八分の七裸とか勝利を掴めりゃ何でもよいとでも言う気なのか……!?」
どうやら認識を改める必要がある。この合コン、呼ばれてもおらず席にも着いていない誰かの徘徊が許されているらしい。
「ぶー? どうしたベアトリーチェ」
「いっいや。……何か背筋に悪寒が」
確かめるのは怖い。だが放置しておいても安心できない。そんな心境で赤い鎧がチラッと周囲に目をやってみれば、
『(……もー。合コンって言ったら華の女子大生の独壇場って相場が決まっているじゃないですかもー)』(フィリニオン)
『(……ただでさえ出会いの場が滅法少ないお巡りさんを差し置いてこれかよ。やっぱりメインヒロインは違いますなメインさんはなぁ!!)』(アルメリナ)
……いる。
なんか先祖返りでも起こしたのかしきりにもーもー鳴いてるメガネ牛と年齢的に焦りの滲み始めたうっすーい(笑)が柱の影からこっち見てるう!! とベアトリーチェは正座のまま軽く垂直に跳ぶ。
と、ベアトリーチェ、ヴァルトラウテの上条抹殺組急先鋒が対処に追われた隙に、上条は上条でインデックスの奪還に乗り出す。
鍵はぶんむくれオティヌスが渋々持ってきた薄切りチーズとクラッカーの大皿だ。
「ほうらインデックスこっちにも新しいお菓子があるぞー?」
「なーんだミッツさんか。サプライズがないなー」
「お前ちょっと表出ろ」
奪われた金将を取り返すどころか危うく庭先で学園都市とイギリス清教の本気バトルが始まってしまいそうになるが、今ここで彼女を失えば本格的に孤立無援だ。何も悪い事してないのに女性専用車両に一人迷い込んだおっさんと同じプレッシャーを全方向から浴びてハートが潰れてしまう。
「あれ? てかオティヌスそのものを味方に引き入れればそれで済む話じゃあ。たったすけてオティえもーん! 理解者のお前ならミッツさんの素晴らしさを共有できると信じてる!!」
「(……知るか馬鹿者。私というものがありながらのこのことこのように不埒な会合に参加しおって。この人間は少し痛い目を見て教訓を得れば良い)」
「あっ、あああー!! なんか可愛らしくそっぽを向かれて本格的に見捨てられたー!?」
何しろ腐っても一神話の主神なので神々の先に行っちゃった『白き女王』を除けば当代最強間違いなしのはずだったのだが、その女神に見放された事で急速にツンツン頭の運命が転落していく。
あまりにも大き過ぎる力を持った神様に接近するのも良し悪しだ。神の好意が憎悪に変わったり別の神から嫉妬を受けたりした結果、とんでもない目に遭う人間も少なくない。この辺りは北欧というよりギリシア辺りの神話を紐解けばいくらでも出てくるもんではあるが。
そしてヴァルトラウテが座ったまま背筋をしゃっきりさせて、
「さてそれでは天罰を与えよとの主神の許可もいただいたところで」
「げにおぞましき解釈の違いがここに!!」
「許せ人間。だが久しぶりにフリッグ様だのフレイアだのに邪魔されずあの少年と思う存分羽を伸ばせる機会はここしかないのだ死ね」
「多神教のカミサマってのはこんなのばっかりか!? ちょっとは私情を隠しなさいよ力押しパワーバカーっっっ!!!???」
それはまるで、落雷そのものを凝縮して形を整えたような。バッチンバッチン鳴ってる『滅雷の槍』を見ていよいよ上条が総毛立つ。
(もう一人のミニスカ鎧、ベアトリーチェとかいうのは陰々滅々としたメガネや貧乳の対処に追われている。ならばひとまずヴァルトラウテとかいう力押しをどうにかするのが先決かーっ!!)
だが思い上がるな。ここで安易に右拳を握るのは自殺行為だ。何しろ相手はガチの一〇〇%神様系、多分普通に立ち向かってもオティヌスの槍みたいに腕ごと持ってかれる。
しかし一方でこのヴァルトラウテ、何だか要所がメカっぽい。神話のオカルトに世俗の技術が混ざっているとすると、やはりライトな文庫御用達『とりあえず現代技術全部無効』とかでなく俗な科学技術がそのまま有効な可能性が残されている。
上条さんは観察眼が命です。隠していたって分かってんですから。
クウェンサーが座卓の下でもじもじしながら軍用麻酔銃をいじくっていた件をだ!
「くたばれイロモノカミサマ!! おっちょこちょいがたたって結婚迫られる天女みたいな顔しやがってーっ!!」
座卓の下から取り出したオモチャみたいなアイテムを両手で構えて至近、一メートル以内から発射する上条。
パシュッ!! とスプレーを短く噴くのに似た小さな音と共に非金属透明素材の針付き薬剤ケースが飛び出すも、
「ふん」
「さ、避けもせずに胸を張るだけ、だと!?」
言い忘れていたがヴァルトラウテの軽装ミニスカ鎧はオーロラを凝固して作った悪鬼羅刹の攻撃にも耐える謎仕様である。ひょっとすると莫大な電気的エネルギーで斥力場でも生み出したりするのかもしれないが、そんな本領発揮の必要さえなかった。
フツーに胸部装甲に当たってフツーに弾き飛ばされてしまう。
万事休すであった。
本編で散々銃に頼るなと主神級から言われていたのに無茶をするからこうなる。汗ダラダラの上条当麻へいよいよ神様特性『滅雷の槍』が差し向けられていく。
が、
「あふん☆」
変な声が横槍を入れた。
みんなで振り返るとどこをどう跳ね返ったのか、白い繭のてっぺんに麻酔銃の薬剤ケースが突き刺さっていた。
サブクエスト発生。
上条さんは『白き女王』と城山恭介の超神話的逢瀬を邪魔したよ。さあ全力で生き延びろ☆
「いや無理だって不幸だぁあああ!!」
がくがくがくがくがくーっ! と全身で恐れおののくツンツン頭だったが、一切構わず彼の目の前で白い繭が解けていく。さあ光臨のお時間です。中からは多分有史以来誰も見た事のない例の白いヤツの超進化バージョンがラメっぽい輝きでキラッキラに満たされていた。USMDSOR、アルティメットスペシャルミラクルデンジャラスサディスティックおはようレアである。すっかり我の眠りを妨げるのは何者ぞモードになった『白き女王』はにこやかに真っ黒な笑みを浮かべて、
「わたくしとあにうえ、二人だけの世界に無粋な異物を混入するとは万死にくーすー」
「効いてるっ? だがそうするとアンタ今優雅に真上へ掲げた両手の中で凝縮させたその莫大なえなじー軟着陸させるつもりなさそうだし一体これからどうなるんだあーっっっ!!」
仮に不意を打たれても前のめりに倒れ込むだけで世界ぶっ壊す系の、やられ演出までぱーふぇくとなラスボスちゃんであった。
でもってついうっかりで解き放たれた白い光が一〇のマイナス四四乗秒で今ある宇宙を吹き飛ばし、わずか五秒で物質と反物質から成る空間世界が冷やされて原子の核たる無数の塵芥が生成され